溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

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振る瞬間

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「かわいい」なんて言われるのは不本意で、まったく嬉しくない。
だがぼくに媚びてるハルは嫌いじゃない。
むしろ、とてつもなく好きだった。

最初は、ここに惹かれたな…

大きな優越感

その言葉が頭に浮かび、ぼんやりと消える。
ハルの綺麗すぎる顔を眺めた。
全体的に色素が薄く、天使みたいで欠点が見当たらない顔。長い手足…

たくさんの人がいても、いつもハルだけはかっこよさが頭一つ抜けていた。

そして自分の醜い感情も露わになった。

だから嫌いだったんだ。
ハルを見てると、自分の関わりたくない感情にれるから。
………

「ハルって鍵っ子?」

体育館で、ジャージ姿の男子が話しかけてくる。
その遠くの横にロンもいた。
足をぶらぶらと揺らし、興味なさそうに遠くを見ている。
ハルは話しかけてくる相手を、内心誰だっけ?と思いながらに笑顔で対応していた。

「うん。親忙しいからね」

適当に答える。どうでもよかった。

「なんで?」

身を乗り出して聞かれた。
どうでもいいだろ…と内心思いながらも、俺は答える。
パカッと聞こえた。
ロンは水筒で水分補給をしている。

「ロンはどうなの?」

めんどくさくなって笑顔でロンを巻き込む。
ロンは固まり、え?という顔をした。

「ずっと母さんは家にいるよ。」

………

「あーあ、」

体育館の舞台に座っている。
両手を後ろに置いた。
そして、見下みおろすように遠くのロンに集まっている人たちを見る。
広く浅い関係を構築するのが得意なのか、ロンの周りには誰かしら人がいた。

「ハルくん。」

見ていたのに邪魔をされた感じがした。
1人でいるから話しかけやすかったのだろう。
女子の2人組で、緊張してそうな子。
気の強そうな子、と分かれていた。

「なに」

言い方だけぶっきらぼうに言う。
表情はいつもと変わらない。
だが皮肉なことに、「ちょっと!何その態度!!」と言う女子の声で、ロンはこっちを見た。
目がバチッと合うと、ロンは一瞬とても気まずそうに顔を顰めた。
それにグサリと傷付き、頭が真っ白になった。

「ハルくん。…ハルくん。」  

高い声。
腕を揺さぶられる。
いつもなら余裕を持って聞ける声も、今やただの不快音だ。
今は優しくできる自信は無い…

「ちょっと、ちゃんと聞いてる?ハルくん」

なぜか馴れ馴れしく呼ばれた。

「うん。聞いてるよ。」

体育館の高い舞台上から、ハルは軽々と降りる。
そしてスタスタ歩いた。
人がいない外廊下に向かう。
嬉しそうにハルの背中についていく緊張していたはずの1人の女子。

ウキウキした様子の女子の後ろ姿と、ハルの冷たい背中に落差を覚えた。
その歩いているハルと、途中すれ違う。

無表情でただ冷たく…

胸が、苦しくなった。
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