溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

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スパダリとネガティブ

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ネガティブになるのは、家族からの連絡があったからだろう。
いや、むしろ元々心配だったことが露呈した。

『出かけよ、ロン』
『ロンとデートしたいな』

そう言うハルに、他意はない。

わかってる
 
ハルは興味ない人には、最初は適当にあしらうが、しつこくすると酷く冷たく突き放す。

だから、違う。

わかってる

だけど、不安になる気持ちが抑えられない。
足元が、最近おぼつかない。

「いなく…なってほしかったりする?ぼくに」

あきらかに、泣いている声だった。
自分が、いかにハルに依存していたか、わかった。
……

入った喫茶店に座り、言われた言葉。
聞き間違いとしか思えなかった。

「…え?」

フリーズしたのか、半分笑いながら言うハル。
そのあと固まり瞳に怒りが見えた。

「…は?なに言ってんの?」

そう言うハルの声には、微塵もぬくもりはない。
ぼくは不安から、ハルの方も見ずに、まくしたてるようにしゃべる。
まるで、ハルの答えを一切聞きたくないかのように。

「出掛けている間に逃げて欲しい、とか?そんなんじゃないの?」

なぜか必死に言うロン。
ロンの瞳は激しく泳いだ。
顔を上げ、ハルの顔を見ようとしたとき、ぼくは自分が、酷く情けなく思えた。
……

ハルは、さっきの止まっていた表情から、ゆっくりと、穏やかそうな表情に変わる。
ほほえみ返された。

「…ほんとにそう思う?」

落ち着き払った表情から、突き放すように冷たく響く。
…ぼくにはそう聞こえた。

やわらかいトーンで優しく言ってみる。
それでもロンの不安定な表情は変わらない。
いや、もっと激しくなった。
泣きそうに目が滲んでいる。
それに内心驚き、ロンの言葉を待つ。
ロンは若干悔しそうな表情で口を開いた。

「そう思いたくないけど、でも…」
「…でも?」

冷たい視線でも、ほほえむハル。

え?なんで?

次はぼくが固まる番だった。
思考が完全に停止した。

「ロンを…」

口を開く。
ニコニコと喜んでいるハルは、嬉しそうに言った。

「ほんとうは、すぐにでも閉じ込めたいよ。ロンを」

手を伸ばされ、涙を拭われる。
ヒックヒックとすすりながら、ぼくの心臓は雪解けのように落ち着いていた。

「外によく連れ出そうとするから勘違いさせちゃったんだね。」

安心させるように言うハル。
このとき、ぼくの心は完全に落ち着いていた。


「…で?」

顎を上から触られる。
ぼくは顔を上げた…

「理由、あれだけじゃないでしょ?
なんでそう思ったの?」

優しい瞳で見つめてくる。
ぼくもジッと見つめ返した。

「むしろ、なんでそう思ったのか疑問なんたけど。
こんなに大切にしてるのに」

最後の文面を強調している。
言いながらニコリと笑うハル。
若干怒ってるようにも見えなくもなかった。
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