溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

文字の大きさ
上 下
98 / 108

スパダリとネガティブ

しおりを挟む
ネガティブになるのは、家族からの連絡があったからだろう。
いや、むしろ元々心配だったことが露呈した。

『出かけよ、ロン』
『ロンとデートしたいな』

そう言うハルに、他意はない。

わかってる
 
ハルは興味ない人には、最初は適当にあしらうが、しつこくすると酷く冷たく突き放す。

だから、違う。

わかってる

だけど、不安になる気持ちが抑えられない。
足元が、最近おぼつかない。

「いなく…なってほしかったりする?ぼくに」

あきらかに、泣いている声だった。
自分が、いかにハルに依存していたか、わかった。
……

入った喫茶店に座り、言われた言葉。
聞き間違いとしか思えなかった。

「…え?」

フリーズしたのか、半分笑いながら言うハル。
そのあと固まり瞳に怒りが見えた。

「…は?なに言ってんの?」

そう言うハルの声には、微塵もぬくもりはない。
ぼくは不安から、ハルの方も見ずに、まくしたてるようにしゃべる。
まるで、ハルの答えを一切聞きたくないかのように。

「出掛けている間に逃げて欲しい、とか?そんなんじゃないの?」

なぜか必死に言うロン。
ロンの瞳は激しく泳いだ。
顔を上げ、ハルの顔を見ようとしたとき、ぼくは自分が、酷く情けなく思えた。
……

ハルは、さっきの止まっていた表情から、ゆっくりと、穏やかそうな表情に変わる。
ほほえみ返された。

「…ほんとにそう思う?」

落ち着き払った表情から、突き放すように冷たく響く。
…ぼくにはそう聞こえた。

やわらかいトーンで優しく言ってみる。
それでもロンの不安定な表情は変わらない。
いや、もっと激しくなった。
泣きそうに目が滲んでいる。
それに内心驚き、ロンの言葉を待つ。
ロンは若干悔しそうな表情で口を開いた。

「そう思いたくないけど、でも…」
「…でも?」

冷たい視線でも、ほほえむハル。

え?なんで?

次はぼくが固まる番だった。
思考が完全に停止した。

「ロンを…」

口を開く。
ニコニコと喜んでいるハルは、嬉しそうに言った。

「ほんとうは、すぐにでも閉じ込めたいよ。ロンを」

手を伸ばされ、涙を拭われる。
ヒックヒックとすすりながら、ぼくの心臓は雪解けのように落ち着いていた。

「外によく連れ出そうとするから勘違いさせちゃったんだね。」

安心させるように言うハル。
このとき、ぼくの心は完全に落ち着いていた。


「…で?」

顎を上から触られる。
ぼくは顔を上げた…

「理由、あれだけじゃないでしょ?
なんでそう思ったの?」

優しい瞳で見つめてくる。
ぼくもジッと見つめ返した。

「むしろ、なんでそう思ったのか疑問なんたけど。
こんなに大切にしてるのに」

最後の文面を強調している。
言いながらニコリと笑うハル。
若干怒ってるようにも見えなくもなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

待てって言われたから…

ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

処理中です...