溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

文字の大きさ
上 下
77 / 107

続々々 シーツに包まり

しおりを挟む
パチッ

ハルよりも、色素の濃いロンの瞳が開く。

「いッ…!?」

鋭い痛みが、頭を襲った。
片手で頭を抑える。
僕は頭高を低くした。

二日酔い…それと、記憶がない…

なにがあった…?

ポカンとし、ボーとする。

「…ロン。まだ寝てよう?」

やわらかくて優しい声がした。
声がする方を見ると、ベッドの上で僕に抱きつき、横になっているハルがいた。
ハルは半分寝ぼけて言ったようだった。

「…うん。そうだね」

ハルの頭をポンポンと、なでる。
ロンは心ここにあらずで返事をした。



冷たい床を歩く。
僕はシーツにくるまり、それをズルズルと引きずった。
ゆっくりと家の外に飛び出した。



ヒンヤリとした空気が、顔に当たる。

逃げたい
逃げたいはずた

寝惚けていたハルは、またゆっくりと寝始めた。
何故か寝ても、掴まれたままな腕を、強引に振り払って出てきた。

鼻がツンとわずかに痛くなる。

行っても、結果は変わらないだろう。

…前に一人で抜け出した時、遠くの捜索願いのポスターをくまなく見て回った。
僕の写真は無かった。


「…ヒッ…ゔっ」

ロンは顔を抑え、ボロボロと泣き出した。



「ろ、ん」

あまく低い声が響く。
ハルの手はベットの上を探っていた。

「……ロン?」

心がザワつく。パチッと目を開いた。

「いるよ。ハル」

ベッドの脇に座っていた。
ロンの声にホッとし、再びベッドに横になる。
ロンの顔をジッと見ていた。

「どうしたの?」

ロンは笑いながら、俺に触れる。
いつもと違う違和感を覚えた。

ハルは僕の手のひらを、恋人繋ぎで絡ませ、ギュッと掴む。
寝起きとは思えない強さで「え?」と、少し動揺した。

ハルのビー玉のような瞳が、ジッと僕を見据えている。
ハルは少し警戒したような顔だった。

「ハル…?おはよう」

僕は自然に笑う。
ハルも微かに笑った。

「…?」

気づかれてる気がした。
ハルの目はジッと僕を捕らえていた。
そして、ハルがいつもと様子が違うことがわかり、ロンは訝しげな表情になる。

ハルはニコッと笑う。
前によくしていた、作り笑顔を浮かべた。



「ハル、目玉焼き作ったッ…」

ジュージューとうるさくなっていく。
台所に向かおうとしたが、手が離れない。
目にかかる程度のハルの前髪から、ハルの優しい目が覗く。
見透かされているようで、動作がぎこちなくなった。

「手ぇ、離して?ハル」
「…まだ寝てよう?」

ハルはふわっと笑う。
とても優しげな笑みだった。

うっ…わ…!

毎日見ているはずなのに、見慣れない。
ハルの綺麗な笑みに、息を呑んだ。

「いや、でも焦げるから…」

僕は目線を下にして言う。
たがハルに下から覗き込まれた。

「ダメだって。ロンは俺と寝るんだよ。」

ニコニコと笑うハル。
強い力で、強引にベッドの中に引きずりこまれた。

「待って…ちょっと…!ハル!」と言っているロンのことはお構いなしだ。
羽毛に潜り込まされる。
いたずらっ子っぽい顔で、嬉しそうに笑うハル。
ロンは「むぅ」と考えるような顔をした。

「焦げる。」
「焦げたのは…俺が食べるから」

寝起きの声が、ゆっくりと耳元で響いた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

小さな要塞

恋愛 / 完結 24h.ポイント:710pt お気に入り:6

クリトリス小話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:702pt お気に入り:47

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:164

【全話まとめ】意味が分かると怖い話【解説付き】

ホラー / 連載中 24h.ポイント:99,132pt お気に入り:658

SODOM7日間─異世界性奴隷快楽調教─

BL / 完結 24h.ポイント:802pt お気に入り:927

 The ミリオネア 〜億万長者を創る方法〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:10

調教

BL / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:145

帝王の刻印 - 籠の鳥は空を見ない -

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:39

処理中です...