65 / 107
焦った
しおりを挟む
ハルは玄関を開けるなり、飛びついてきた。
「ロン…!ロン…!よかった…!!」
僕を見つけて安堵の声。
ハルは肩から息をしている。
耳に声がかする。
くすぐったい。
だが僕の心は虚無だった。
本当にこれでよかったん…だよな…?
「今すぐ帰れ」と元カノには怒鳴り、帰らせた。
泣き声で嗚咽気味の僕に、驚きはしたものの、危険を感じ取ったのか、その子はすぐに踵を返した。
それから…ハルが帰ってきたのが、3分も掛からなかった。
…
「よかった!!よかった!!間に合わなかったかと思った!!!…あの女と出ていったかと…思った…」
最後の方の、言葉が震える。
ハルは泣きそうに、目をにじませる。
僕は無で、ハルの背中をポン…ポンと軽くたたく。
「ゔゔ…」という声。
しばらくたった後「ふふっ」と、とても嬉しそうな声と共に、抱き締める腕が強くなった。
…
とても嬉しそうに、飛びついてきたハルを横目に、周りの大人たちを見た。
雇っていたのか、屈強そうな人たちが辺りをうろついていた。
どうせ、あの後逃げても探偵を雇って、場所を特定され、連れ戻される。
そんなことは、冷静になった今、ハッキリとわかる。
「ロン?」
甘くて低いハルの声。
微かに震えて、かすれている。
ロンは遠くを見つめていた。
「ロン。どうしたの」
目尻を下げ、心配そうなハルの表情。
…少しオロオロしていた。
僕は表情を変えずにハルを見た。
ロンの気の強そうな瞳が、ハルを捉えた。
…
「車で無理して走って帰ってきたんだ」
「うん」
肩に、顔を埋め言われる。
「ロンが大切で、急いで帰って来たんだ。」
「…うん。知ってる」
ハルの必死な声とは対象的に、ロンの冷めた声。
僕が冷たいんじゃなくて、コイツがしつこいんだ。
「もういいだろ」と言いたげに、「はああ」と溜め息を付き、ポンポンと背中を早くさする。
僕は、ハルを慰めることより、大事なことがあった。
一つの事実が、頭をグルグルと回る。
僕は…せっかくのチャンスを無駄にした。
「ロン…その表情、こわい」
そっと頬を押される。
ハルの方を向かせられた。
ハルの表情は酷く不安に浸っていた。
「ほんとに…よかった…!」
何度目かの言葉。
美しい顔が、嬉しそうに何度何度も笑う。
大袈裟だな…
すぐに連れ戻されることが、わかっている自分はそう思った。
だが、ハルの様子が可笑しくて、僕もつられて「フフフッ」と笑った。
「ロン…!」
ハルの顔は、ぱああと明るくなる。
高校の時の、クシャッとした無邪気な笑みを浮かべた。
あの時のような幼い印象を受けた。
…
あの後、ハルに熱烈なキスをされた。
貪るような、こわい口付け。
キスをされながら、ハルの手が僕の首に回る。
ハルは夢中で、無意識のようだ。
僕はその手を、制するのを止めた。
◇
えがおを見た時、あの時の…昔の笑顔のままだ。と思った。
高校生の時の、必死でかわいいハル。
まさか、監禁して犯罪を犯すやつになるとは、誰も…担任の先生も、夢にも思うまい。
ニコニコと笑うハルの気配。
近くに来て、ハルが笑った。
「いなくならないでくれた♪」
機嫌がいい…
嬉しそうな子どものような、幼く見えるハル。
ギュウウウと、苦しいほど抱き締められる。
「ゔ…」
「すきだよ。大好きだよ。ロン。愛してる。」
ハルの顔を見て息を呑む。
ウットリするほど美しい表情だった。
それと純粋な言葉に、心がほだされた。
「ロン…!ロン…!よかった…!!」
僕を見つけて安堵の声。
ハルは肩から息をしている。
耳に声がかする。
くすぐったい。
だが僕の心は虚無だった。
本当にこれでよかったん…だよな…?
「今すぐ帰れ」と元カノには怒鳴り、帰らせた。
泣き声で嗚咽気味の僕に、驚きはしたものの、危険を感じ取ったのか、その子はすぐに踵を返した。
それから…ハルが帰ってきたのが、3分も掛からなかった。
…
「よかった!!よかった!!間に合わなかったかと思った!!!…あの女と出ていったかと…思った…」
最後の方の、言葉が震える。
ハルは泣きそうに、目をにじませる。
僕は無で、ハルの背中をポン…ポンと軽くたたく。
「ゔゔ…」という声。
しばらくたった後「ふふっ」と、とても嬉しそうな声と共に、抱き締める腕が強くなった。
…
とても嬉しそうに、飛びついてきたハルを横目に、周りの大人たちを見た。
雇っていたのか、屈強そうな人たちが辺りをうろついていた。
どうせ、あの後逃げても探偵を雇って、場所を特定され、連れ戻される。
そんなことは、冷静になった今、ハッキリとわかる。
「ロン?」
甘くて低いハルの声。
微かに震えて、かすれている。
ロンは遠くを見つめていた。
「ロン。どうしたの」
目尻を下げ、心配そうなハルの表情。
…少しオロオロしていた。
僕は表情を変えずにハルを見た。
ロンの気の強そうな瞳が、ハルを捉えた。
…
「車で無理して走って帰ってきたんだ」
「うん」
肩に、顔を埋め言われる。
「ロンが大切で、急いで帰って来たんだ。」
「…うん。知ってる」
ハルの必死な声とは対象的に、ロンの冷めた声。
僕が冷たいんじゃなくて、コイツがしつこいんだ。
「もういいだろ」と言いたげに、「はああ」と溜め息を付き、ポンポンと背中を早くさする。
僕は、ハルを慰めることより、大事なことがあった。
一つの事実が、頭をグルグルと回る。
僕は…せっかくのチャンスを無駄にした。
「ロン…その表情、こわい」
そっと頬を押される。
ハルの方を向かせられた。
ハルの表情は酷く不安に浸っていた。
「ほんとに…よかった…!」
何度目かの言葉。
美しい顔が、嬉しそうに何度何度も笑う。
大袈裟だな…
すぐに連れ戻されることが、わかっている自分はそう思った。
だが、ハルの様子が可笑しくて、僕もつられて「フフフッ」と笑った。
「ロン…!」
ハルの顔は、ぱああと明るくなる。
高校の時の、クシャッとした無邪気な笑みを浮かべた。
あの時のような幼い印象を受けた。
…
あの後、ハルに熱烈なキスをされた。
貪るような、こわい口付け。
キスをされながら、ハルの手が僕の首に回る。
ハルは夢中で、無意識のようだ。
僕はその手を、制するのを止めた。
◇
えがおを見た時、あの時の…昔の笑顔のままだ。と思った。
高校生の時の、必死でかわいいハル。
まさか、監禁して犯罪を犯すやつになるとは、誰も…担任の先生も、夢にも思うまい。
ニコニコと笑うハルの気配。
近くに来て、ハルが笑った。
「いなくならないでくれた♪」
機嫌がいい…
嬉しそうな子どものような、幼く見えるハル。
ギュウウウと、苦しいほど抱き締められる。
「ゔ…」
「すきだよ。大好きだよ。ロン。愛してる。」
ハルの顔を見て息を呑む。
ウットリするほど美しい表情だった。
それと純粋な言葉に、心がほだされた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,084
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる