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引っ越し
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「あの子は別に悪い子じゃなかったよ。」
ロンは、みかんを頬張りながら言った。
何年かたった後だった。
「へぇ」
辺りはシンシンと雪が積もっている。
相変わらずこの街は、人が少ない。
クリスマスにも関わらず、外からは何の音もしない。
「ロンは、いい子だよねぇ」
怒ってるのか…
真綿で首を絞められる気持ちになる。
「ソイツと逃げないで、俺なんかと一緒にいて。その子はもういないよ?」
ハルの少し、おちゃらけたような声。
言葉を続ける。
「ロンと今一緒にいるのは俺だ。」
「うん。」
首に手をかけられ、僕は頷いた。
知ってるのだろう。
昔の元カノが、また来たこと。
「…」
僕がハルから逃げないのは、庇護欲?
「ハッ」
そんなわけない。
自分で思って、笑いが出てくる。
「…?」
ハルは不思議だと言いたげな顔で、僕を見ている。
気にする風もなく、僕はみかんを頬張る。
真っ暗な窓から、チラチラと雪が降っている。
パチパチと暖炉の火の音。
眠くなり、ボーとする。
走馬灯のように過去のことが、思い出された。
◇
寝ているロンの拘束具を、一つ一つ外す。
ロンが掴んでいるシーツごと抱き上げ、3階に向かう。
誰も使ったことがない、来客用ベッドに寝かせた。
スースーと幸せそうに、寝息をたてるロンの髪を、かき上げるようになでた。
「ん…」
俺の手に頬ずりをしてくる。
「よしよし」とロンの花びらのような、ピンクの口唇をなでた。
くすぐったかったのか、ロンの身体はピクッと反応した。
ハルはまた、「よしよし」と遊ぶように、ロンの頬をさわった。
◇
「おはよう」
ハルの機嫌がいいのが声でわかる。
僕は低血糖で、険しい顔をしていた。
いつも付いている拘束具はなかった。
見たこともない部屋。
下の階を見ると、ダンボールを持ち上げ、運んでいる人が多数いた。
「…?」
寝ぼけた顔で、ハルをボッーと見た。
寝癖が酷く、前髪も上に立っていた。
おでこが見える。
ハルは「かわい…」と言い「こっちおいで」と言った。
ロンは、のっそりと身体を動かす。
言われたとおりに、ハルの腕の中に入る。
ハルの膝の上に座った。
ボッーとしたまま、ハルの胸板に頭を預ける。
背もたれのように、ハルの身体に体重を乗せた。
「んゔ…」
まだ眠たくて、ハルの肩に頭をグリグリと押し付ける。
前に腕が回り、ハルにゆっくり抱かれた。
僕は「まだ眠い」と言いたげに、ハルに抱き着く。
「ふふ。温かい。子ども体温みたいだね。」
嬉しそうな、ハルの笑い声。
横の髪の毛にキスをされる。
「ロン、引っ越しするよ。」
「…?」
やはり、頭がボッーとしたままじゃ、すぐに意味が呑み込めなかった。
ロンは、みかんを頬張りながら言った。
何年かたった後だった。
「へぇ」
辺りはシンシンと雪が積もっている。
相変わらずこの街は、人が少ない。
クリスマスにも関わらず、外からは何の音もしない。
「ロンは、いい子だよねぇ」
怒ってるのか…
真綿で首を絞められる気持ちになる。
「ソイツと逃げないで、俺なんかと一緒にいて。その子はもういないよ?」
ハルの少し、おちゃらけたような声。
言葉を続ける。
「ロンと今一緒にいるのは俺だ。」
「うん。」
首に手をかけられ、僕は頷いた。
知ってるのだろう。
昔の元カノが、また来たこと。
「…」
僕がハルから逃げないのは、庇護欲?
「ハッ」
そんなわけない。
自分で思って、笑いが出てくる。
「…?」
ハルは不思議だと言いたげな顔で、僕を見ている。
気にする風もなく、僕はみかんを頬張る。
真っ暗な窓から、チラチラと雪が降っている。
パチパチと暖炉の火の音。
眠くなり、ボーとする。
走馬灯のように過去のことが、思い出された。
◇
寝ているロンの拘束具を、一つ一つ外す。
ロンが掴んでいるシーツごと抱き上げ、3階に向かう。
誰も使ったことがない、来客用ベッドに寝かせた。
スースーと幸せそうに、寝息をたてるロンの髪を、かき上げるようになでた。
「ん…」
俺の手に頬ずりをしてくる。
「よしよし」とロンの花びらのような、ピンクの口唇をなでた。
くすぐったかったのか、ロンの身体はピクッと反応した。
ハルはまた、「よしよし」と遊ぶように、ロンの頬をさわった。
◇
「おはよう」
ハルの機嫌がいいのが声でわかる。
僕は低血糖で、険しい顔をしていた。
いつも付いている拘束具はなかった。
見たこともない部屋。
下の階を見ると、ダンボールを持ち上げ、運んでいる人が多数いた。
「…?」
寝ぼけた顔で、ハルをボッーと見た。
寝癖が酷く、前髪も上に立っていた。
おでこが見える。
ハルは「かわい…」と言い「こっちおいで」と言った。
ロンは、のっそりと身体を動かす。
言われたとおりに、ハルの腕の中に入る。
ハルの膝の上に座った。
ボッーとしたまま、ハルの胸板に頭を預ける。
背もたれのように、ハルの身体に体重を乗せた。
「んゔ…」
まだ眠たくて、ハルの肩に頭をグリグリと押し付ける。
前に腕が回り、ハルにゆっくり抱かれた。
僕は「まだ眠い」と言いたげに、ハルに抱き着く。
「ふふ。温かい。子ども体温みたいだね。」
嬉しそうな、ハルの笑い声。
横の髪の毛にキスをされる。
「ロン、引っ越しするよ。」
「…?」
やはり、頭がボッーとしたままじゃ、すぐに意味が呑み込めなかった。
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