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【番外】過去6.1 ハルの深い怒り

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家に入るなり、音もさせずそっと抱かれた。
僕は背筋が凍った。
ドクンと心臓が跳ねた。

「な…なに?」
「前にもこんなことあったね」

おこってるとは思えない、酷く優しい声。
その記憶は曖昧だったが、僕はコクンと頷いた。



…なにが始まるんだ?

言われるがままに、僕はハルの膝の上に乗る。
大きなハルの肩に、片腕を置いた。
満足したようなハルの表情。
それに少しホッとする。

そして僕は、ハルを抱きしめた。
ハルは僕の背中を、ポンポンと優しく叩く。
体を離し、ロンはいたずらっ子ぽく笑った。
次は機嫌を取るように、僕はハルの柔らかな髪の毛に手を伸ばした。



ニイッと笑うロン。
俺を飼い慣らしているような…ロンの、思い上がった表情かおに、少しばかり、嗜虐性を刺激された。



…?なに?

ロンは怪訝な顔をする。
ハルの髪に、触れようとした手は髪に届く前に掴まれた。
ニギニギとイヤラシく触られる。
…立ってしまわないように心を鎮める。

ハルはニコッと笑った。
僕も釣られて、ぎこちなく笑う。

何故か逃げたい気持ちになった。

こんなにハルは機嫌が良さそうなのに…

この不安な気持ちは、取り越し苦労であることを祈った。



「悪いと思ってるんだよね?ロンは。
あんなに泣いてたし」

さっきハルから逃げ、少しはねた髪の毛をハルに優しく整えられる。
…「泣いてたし」というのは余計だ、と思いつつも僕は素直に頷く。

「そっか~」

ハルは嬉しそうに笑う。
少し、意地悪げな…嗜虐的な色が顔を覗かせる。

本当に…機嫌は直ったのか?
不安はどんどん広がっていく。

その不安はよそに、ハルは戯れるように、ほっぺ、口と軽くキスする。
くすぐったいのか、ロンは少し体を縮こませた。

「ロン…俺のこと好き?」

何度も聞かれるこの言葉。
酷く不安そうな、今にも捨てられる子犬のような表情。

何回聞くんだ…

内心うんざりしながらも、優しい僕は答えてあげる。

「当たり前だよ」

僕は安心させるように、優しく笑った。
ハルの、キラキラした明るい瞳に綺麗な顔。
嘘をつくことに、珍しく罪悪感を感じた。

…僕は誤魔化すようにハルに抱き着いた。

「好き」

僕は言った。
ハルに頭を撫でられる。

機嫌は直ったのかな…?

とても…凄くホッとした。



『好きで付き合ってるんじゃない』

わかっているつもりだったが、この言葉は心をえぐる。
ロンの頭を、なでる。
今言ってくれた言葉が、本音だったらどんなにいいか…

俺は、ロンに気づかれないように、自分より色素の濃い頭にキスをした。


「ロン」

僕は顔を上げる。
ハルは優しく笑っていた。

「戯れて遊ぶのもいいけど、いつもはやってくれないことやってほしい。」

ハルの笑顔に嫌な予感が募っていく。
眠たいと思いながらも、心がザワザワとうるさい。揺れる。

「…?やってくれないこと?」

背中をずっと擦られたりするのが、気持ちよかったのか、目が少しトロンとしている。

このまま優しくしてもいいが…

ロンの細い腰をなでる。
艶っぽい触り方にロンは、「?」という顔をする。

「するの?」

ポヤンとしたロンの顔。

…一度だけ酷くしてみたい

「うん。その前に舐めてほしい。俺の」

ハルは、なんでもないことのように言う。
ニコッと笑った。
この時見惚れ、なにを言われたのかハッキリわからなかった。



「…はあ!?」

大きな声を出した後、ロンは脳がフリーズしたように固まってしまった。

「ロン?」

ハルは可笑しそうに、ロンをツンツンとつつく。

「…え?舐めるって…」

戻ってきたロンは、あり得ないといったように言う。
言い終わった後、引き続きロンは目を見開いたまま、ときが止まっているようだった。
ハルは「ハハッ」と笑う。

「なに、ふざけたことを…」
「俺は、なんにもふざけてないよ。」

優しげに笑う。
ニコッと笑った顔に「ああ…まだ怒ってるんだ」と、引き攣った笑みを浮かべた。
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