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過去8 登校 アリサの不在

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学校に着くと、ザワザワといつも通りの声がする。
僕はいつも通り席に座った。
ハルとのことが広まっていないか、気が気じゃなかったが、この日アリサは欠席だった。

なんか、胸騒ぎがする…

僕は後ろの席の人に話しかけた。

「ねぇ、アリサに何かあったか知らない?」

いつもの愛想笑いを振りまく。
後ろの席の子は、言いにくそうな顔をした。
そして僕に顔を近づけた。

「えっと…喧嘩してたみたい。ハルくんと」
「…え?」

思考が止まった。

「昨日のことなんだけどね」

後ろの子は小声で話し続ける。

…あの後、夜アリサと会ってハルが何かしたのか?

ヒヤッと、皮膚の表面の温度が下がった。

「何を…喧嘩することが?」

バレないように恐る恐る言った。

「分からない…だけどアリサちゃん酷く怖がって泣いてた。
…どういうことかロン、知らない?」

酷く心配そうにその子は言う。
僕は顔面蒼白になっていた。


「どういう事だよ!?」

ハルの胸ぐらを掴む。
ハルはされるがままに、無表情で僕を見ている。

そうだ…
あのぐらいで、コイツの腹が収まるはずはない。
アリサに何かしたんだ…!

責め立てるように怒りながら、ハルを揺らす。
胸ぐらを掴むその手は、大きな手の平に捕まえられた。

「別に大丈夫だよ。
噂が立たないよう、この前のこと言わないように頼んだだけ。
酷いことはしてないよ。」

ハルは優しく微笑む。
僕は疑う気持ちを、拭えなかった。

「…どうやって頼むんだよ」
「え?」

ハルはニコッと笑う。
僕の顔はヒクついた。

「優しくお願いするだけだよ?
なに考えてるのロンは。」

再び笑い、ハルは僕の頬に手を伸ばす。
愛おしそうな、ハルの目に困惑する。
ハルは、ロンのきめ細やかな肌をスリッと触った。
そして頬にゆっくりキスをする。
目がしっかりと合った。

「何も心配することはない」

ハルの声は、脳髄に甘く響く。
言い聞かすような言い方も一緒に届いた。
僕は目を細めてハルを見た。
逆光が眩しい。

「大丈夫だよ」

ハルはいつもの優しい表情で、僕を見ていた。瞳はいつものように、透き通っている。

本当に…大丈夫かな…

少し納得しそうになる…
畳み掛けるように、とても近い距離でハルは呟く。
酷く魅力的な笑みで、取り込まれそうになった。

「ロンが心配することはなにもないよ?」

いつまで経っても見慣れない…

綺麗な顔は、とても優しそうに笑った。
ロンは、少し責めるような表情でハルに問いかけた。

「…女子を、泣かせたのか?」

頬やオデコに、嬉しそうに何度もキスをしてくるハルは、一瞬動きが止まった。

「なんの事?」

ニコッと笑う。

ああ…作り笑顔だ

ロンは確信し、口に執拗にキスをしてくるハルをさえぎった。
だがそれを無視し、ハルはロンへのキスを続ける。
両手を絡ませられ、握られた。

…これ以上、この話をしたくなさそうなのは明らかだった。

「…誤魔化すな」

地面から這い出るような、低い声。
口には、今さっきハルにキスされた感触が残っている。

「拭かないでってば。傷付くなぁ」

笑うハルは、傷ついたようには見えなかった。
ハルに身体を、引き寄せるように持たれる。
片方の手が頭を撫で…そして耳にハルの指が触れる。
慣れない感覚に、ゾクッと身体が反応する。

クソッ!

恨めし気な目で、ハルを睨んだ。
ハルは満足そうに笑う。
次に、作り笑顔を向けられた。
その顔に濃い、影がかかった。

「ちゃんと話せよッ!!」

ロンは真剣に叫ぶ。
ハルは、「ハァ」と溜め息をつき、冷たい表情でロンを見下ろした。

「え…?」

見たこともない表情に、ゾッと身体が粟立った。
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