溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

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しかめっ面のロン

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え?

ロンは驚いた顔でハルを見る。
俯いていたハルは、ゆっくり顔を上げた。
自分の顔の涙を拭き、鋭い瞳でロンを見据えた。

「なに驚いた顔してるの?」
 
ハルは、からかう様に笑った。
下から、太く長い腕が伸びてくる。
ハルに頭をよしよしと撫でられた。
犬にやるような手付きで。…微かに嫌悪感が湧いた。

「躾けなくても、俺に大好きって言えるようになったのは偉いね」

「いい子だね」と優しい表情でハルは言う。
だが恐ろしい雰囲気を醸し出していた。

さっきまで泣いていたのに…

ロンは本音を言ったのに、嘘だと思われたショックで、ハルの怒っている雰囲気までは感じ取れずにいた。
今のハルは貼り付けたような笑みで、僕を見ている。
僕はポカンとし、次に怒りが湧いてきた。

僕のこと試したのか…?

ロンの瞳は不安そうに揺れている。

本気で心配してたのに…!

ロンの瞳は怒りに染まった。
ハルの両肩を掴みバッと体を離させた。

「何で体離すの?さっきは頭も撫でてくれていたのに」

穏やかな口調だが、責めるような響きを感じ取った。

「撫でたいなら好きなだけ撫でていいよ」

ハルはロンの手を掴み、自分の頬に当てる。
手のひらにキスをされた。
余裕そうなハルの顔と行動にイラッとする。
抱きしめる片腕はそのままに、ハルはニコニコと僕を見て笑った。
嘲笑われているようで不愉快だった。
ロンはあからさまに、イラッとした表情をハルに向けた。

「一応声質取ったんだよ」

ハルは小さな録音機を見せて言った。

「嘘を付いた証拠を出せば、ロンにお仕置きできるからね」
「僕は真剣にっ…!」
「ロンは嘘付きでしょ。違う?」

優しい表情でハルは言っている。
好きだと自覚しているので、一々好きなハルの行動が心臓にくる。
だけど僕に言ってくる言葉が悲しすぎた。
そして、いつものような余裕シャクシャクで、魅惑的な表情を見せた。
試すような…そして懐疑に満ちた瞳。

全然僕を信じていない。

それがハッキリと分かった。
ハルは「俺もロンが大好きだよ」と言い、機嫌が良さそうに俺を見ている。

いや、機嫌が悪いのか?

ハルは高校の時から、ニコニコとずっと笑っている時は本当に機嫌がいい時か、もしくは何か気に食わない事がある時だった。

…何でハルが怒るんだ!怒るのは僕だろ!?

ロンはギリッとハルを睨む。
ハルは相変わらず、ニコニコした胡散臭い笑みを浮かべている。
大きな手が伸び、顎を撫でてくる。
僕は嫌そうに顔を背けた。
それを気にした風も無く、ハルは僕の顎を猫にするように、よしよしと撫で話し続けた。

「かわいいね」

吸い込まれるような綺麗なハルの瞳。
顎をグイッと掴まれた僕は、しかめっ面を作った。

「その顔もかわいい」

ハルはクスッと笑った。

「俺から逃げないようにするには、ずっと貞操帯付けてた方が確実だよね。
それでロンのこと覚えてるの俺だけがいいな。
ロンと会えるのは、一生俺だけにする」

ハルは僕に抱き着き、楽しそうにしゃべっている。
僕はハルの肩に顔を預け、ウンザリしたようにハルの横顔を見た。

少しでも想いが通じたかも…と期待した僕がバカだった。

ロンは、「ハア」と溜め息をつき、ハルを見る。
ハルは僕に向かって優しく微笑んだ。
嫌な予感が頭を駆け抜けた。

「ロン、最近俺から逃げようとしてるでしょ?」
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