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過去7 朝と寝癖
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「やった。やっと二人っきりになった」
無邪気に笑うその顔は、さっきまでの疎ましさを、大幅に減らすものがあった。
ハルに対し少なからず、優しくしてやってもいいという、気持ちになっていた。
だがその気持ちは、この後シュウウと音をたて、しぼんでいった。
…
コンモリとした羽毛の山は、虫のような動きから始まった。
寝癖だらけで反目の表情が顔を出す。
僕は、最悪の気分で朝を迎えた。
「おはよう。起きるの早いね」
爽やかで優しい声。
ハルは横でニコニコと笑っている。
それをロンは、目つきの悪い顔で見ていた。
「ハルば…朝がらハルなんだね…」
喉の痛みを我慢し、かすれた声でこたえる。
ハルに手渡された蜂蜜入りのホットミルクを、ゴクゴクと飲み干す。
いつものように、寝起きでも綺麗な状態のハルは、ボロボロの状態のロンを、面白そうに上機嫌で見つめていた。
…昨日の、素直にハルのあとをついていったあの後、好き勝手に抱かれた。
家に着くなり、笑顔で可愛げのあることを言ったと思ったら、急に押し倒された。
自分の体は今やグチャグチャだ。
Tシャツは伸び、自分の体には噛み跡や、キスマークが大量に付いている。
どうすんだ?これ…
ガラスに映る自分に愕然とする。
…この格好で学校に行くのか?
僕はベッドにゴロンとし、現実逃避で再び目を閉じる。
首元を襟で隠しても足りないくらいに、噛み跡やキスマークが付いていたことを考えた。
ハルの嫌がらせか…
ロンは目をつむったまま、苦い顔をする。
「どうしたの?ロン」
声には笑いを堪えているのがわかった。
カッと頭に血がのぼる。
だが、しゃべることすら辛い今は、目を瞑り不貞寝するしかなかった。
「ハルば起ぎでていい…」
ハルとは対照的な、ガラガラ声が言った。
しばらく一人で考えたかった。
だがハルの大きな手は、心配するように、僕の喉を後ろから触る。
ハルのせいなんだけどな…
そう思いながらも、心から心配している様子にイラ立ちが収まっていった。
…抱かれる度、優しくされる度、なんで女子を抱かないのか疑問だった。
だけど…今日のは、酷かった。
これだと女子は逃げるだろう。
乱暴に、好きなだけオモチャのように遊ばれた感じだ。
愛情もへったくれもない。
だが今はニコニコと笑い、僕を優しく撫でている。
落差があり過ぎるギャップに、内心怯える。
もう、怒らせたくない。
ロンはハルの方に体を預け、胸板に顔を埋めた。
ハルのいい匂いを吸い込んだ。
トン…トンと背中を優しくたたかれる。
気持ちいい…
僕はギュウウとハルに抱き着いた。
赤ちゃんのようにハルに密着するロンは、ハルの怒りを無意識に鎮圧していた。
「…まだ昨日のこと、謝ってないよね?」
静かに聞こえる。
ハルの鼓動のペースは変わらない。
そんなに悪いことなのか?
その疑問を自分の中で押しつぶす。
「ごめんなさい」
「許して」と言うように、ギュウウとハルに抱きつく。
ハルは嬉しそうな笑みを浮かべ、よしよしとロンの髪の毛を撫でた。
僕はホッとした。
ハル(かわいいなぁ…)
独占欲に浸かった目でロンを見つめる。
ロンは目を瞑り、今にも寝そうだった。
ハルはロンの頬を、スリスリと指で撫でている。
「まだ寝てていいよ」
ハルの声を合図に、僕はスゥーと眠りに入った。
無邪気に笑うその顔は、さっきまでの疎ましさを、大幅に減らすものがあった。
ハルに対し少なからず、優しくしてやってもいいという、気持ちになっていた。
だがその気持ちは、この後シュウウと音をたて、しぼんでいった。
…
コンモリとした羽毛の山は、虫のような動きから始まった。
寝癖だらけで反目の表情が顔を出す。
僕は、最悪の気分で朝を迎えた。
「おはよう。起きるの早いね」
爽やかで優しい声。
ハルは横でニコニコと笑っている。
それをロンは、目つきの悪い顔で見ていた。
「ハルば…朝がらハルなんだね…」
喉の痛みを我慢し、かすれた声でこたえる。
ハルに手渡された蜂蜜入りのホットミルクを、ゴクゴクと飲み干す。
いつものように、寝起きでも綺麗な状態のハルは、ボロボロの状態のロンを、面白そうに上機嫌で見つめていた。
…昨日の、素直にハルのあとをついていったあの後、好き勝手に抱かれた。
家に着くなり、笑顔で可愛げのあることを言ったと思ったら、急に押し倒された。
自分の体は今やグチャグチャだ。
Tシャツは伸び、自分の体には噛み跡や、キスマークが大量に付いている。
どうすんだ?これ…
ガラスに映る自分に愕然とする。
…この格好で学校に行くのか?
僕はベッドにゴロンとし、現実逃避で再び目を閉じる。
首元を襟で隠しても足りないくらいに、噛み跡やキスマークが付いていたことを考えた。
ハルの嫌がらせか…
ロンは目をつむったまま、苦い顔をする。
「どうしたの?ロン」
声には笑いを堪えているのがわかった。
カッと頭に血がのぼる。
だが、しゃべることすら辛い今は、目を瞑り不貞寝するしかなかった。
「ハルば起ぎでていい…」
ハルとは対照的な、ガラガラ声が言った。
しばらく一人で考えたかった。
だがハルの大きな手は、心配するように、僕の喉を後ろから触る。
ハルのせいなんだけどな…
そう思いながらも、心から心配している様子にイラ立ちが収まっていった。
…抱かれる度、優しくされる度、なんで女子を抱かないのか疑問だった。
だけど…今日のは、酷かった。
これだと女子は逃げるだろう。
乱暴に、好きなだけオモチャのように遊ばれた感じだ。
愛情もへったくれもない。
だが今はニコニコと笑い、僕を優しく撫でている。
落差があり過ぎるギャップに、内心怯える。
もう、怒らせたくない。
ロンはハルの方に体を預け、胸板に顔を埋めた。
ハルのいい匂いを吸い込んだ。
トン…トンと背中を優しくたたかれる。
気持ちいい…
僕はギュウウとハルに抱き着いた。
赤ちゃんのようにハルに密着するロンは、ハルの怒りを無意識に鎮圧していた。
「…まだ昨日のこと、謝ってないよね?」
静かに聞こえる。
ハルの鼓動のペースは変わらない。
そんなに悪いことなのか?
その疑問を自分の中で押しつぶす。
「ごめんなさい」
「許して」と言うように、ギュウウとハルに抱きつく。
ハルは嬉しそうな笑みを浮かべ、よしよしとロンの髪の毛を撫でた。
僕はホッとした。
ハル(かわいいなぁ…)
独占欲に浸かった目でロンを見つめる。
ロンは目を瞑り、今にも寝そうだった。
ハルはロンの頬を、スリスリと指で撫でている。
「まだ寝てていいよ」
ハルの声を合図に、僕はスゥーと眠りに入った。
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