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可哀想なハル 

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高校の時のハルは優しくて、都合がよくて…
でも途中から、どんどん性格が怖くなってきて…

ハルを目の前にして考え事をすると、ハルの機嫌が悪くなるので、ロンは思案する前に自らハルに抱き付いた。
ハルの大きな優しい手に背中をトントンと叩かれる。
ホッとし、好きなハルの匂いを吸い込んだ。
頭がクラクラする感じがした。
ハルの温かい体温が自分の身体に移ってくる。

心地いい…

ロンはハルにすり寄った。
ハルは頭をなでてくれた。
そして抱き締められる。
抱き締める腕が強くなった。
少し痛いぐらいだ。
だけどその痛いくらいが、今の僕には丁度良かった。
だけど更に強くなる。結構な痛みを感じた。
 
「…ハル、痛い」
「…」

ハルは何も答えない。

「ハル?」

背中をさすった。
ハルにやられたように、トントンと背中を優しく叩く。
ロンの肩にうずめていたハルの頭が、グリグリと動いた。

「我慢してよ、これぐらい…」

甘い声が耳に触れる。
寝起きだからか、声がかすれていた。
それが余計に色っぽい。
だが微かに震えた声に、泣くのかな?とちょっと思った。
僕はハルの背中を、慰めるようにそっとなでる。
僕にできるのはこれくらいだ。
ハルの身体が巻き付いてくる。
体重を乗せられ覆いかぶさってきた。
 
「…ロン」

かすれて泣きそうな声だった。

僕はハルの背中を優しくさすった。
そしてゆっくりと、ハルの心に染み込ませるように言った。
 
「好きだよ。ハル」

抱き締める力が更に強くなる。
ロンの肩でハルは泣きそうに目を細めていた。


めちゃくちゃに抱かれた。
いつものような道具は使わず、ただ抱かれた。
受け入れるようにハルの背中に腕を回した。
苦しいほどの貪るようなキスをされる。

「好、き…だよ」

途切れ途切れに言葉を探す。

ハルに言わなきゃいけないのは、この言葉な気がして…

「…うるさい」

ハルは辛そうに泣いていた。
涙が僕に向かってポタポタと落ちる。
大きなハルの手が、ロンの首元に移行した。
ハルは泣きそうな顔で僕の首に手をかけた。

「嘘つきの癖に」 

胸ぐらを掴まれた感じがした。
口の中に苦味が広がり、ジワジワと目に涙が滲んでくる。
ハルは歪んだ笑みを浮かべていた。
僕は泣きそうになるのを耐える。
ハルの首を掴む手が、強くなった。

息苦しくなっていく…。

「殺されたくなかったらその口、閉じて」

僕には酷く冷たく聞こえた。
目が潤む。
ハルは苦しそうな顔を変え、ニコッといつものように優しくほほえむ。
ハルのなにを考えているのかわからない笑みは、陰がかかり美しく狂気的に映った。



ロンはハルの寝ている顔を至近距離で見ている。
鎖で足を拘束され、その上ハルに抱きつかれ腕をガッシリと握られている。

もう、逃げるつもりなんて無いのに…

腕を離させようとするも、長く綺麗な指から逃れられない。
身体だけハルから離した。
ハルはうめき声のような不満の声を漏らした。
眉間にシワを寄せている。
腕を離させることを諦め、片手で頬をなでる。と、穏やかな寝顔に変わった。

[…ごめんね]

ハルが言った、昨日のことが思い出される。
苦しそうな表情で言った、ハルの顔と言葉が頭から消えない。

今にも泣き出しそうで…可哀想と思った。

こんな弱そうで壊れそうなハルに、ロンは心が締め付けられるような気持ちを覚えた。
だから、背中を撫でてあげたのだろう。
不憫に思って。
「好き」とも言ってあげた。
多分信じなかっただろうけど。

ロンは、ボフンッとベッドに仰向けになった。
ハルの手と自分の手を、恋人つなぎのように絡ませる。
隣で寝ているハルは天使のように美しかった。
…ハルは昔から優しい人で、僕が変えてしまった、と一抹の罪悪感を覚えたこともある。
だけど根本的には変わっていない。 
僕に「ごめん」と謝るのだから。

確かに謝られるほど酷いことはされたけど…

「好き」と伝えたら首を軽く締められた。
そして涙をこぼした。
身から出たサビとは言え、僕の言うことを信じてくれない。

「あああー!」

声を発し、髪の毛を掻きむしる。

どうしたら信じてくれる?

抱きついた時、はっきりと分かった。
僕はハルが好きなのだと。
ロンは「ハア」と息をつきフワフワな羽毛の中に潜った。
本来はこんなことを、考えるのは面倒くさい。
だけどハルの可哀想な姿を見ると、伝えてあげなくてはいけない気がした。
ゆっくりとハルの大きな身体が、ロンに絡みついてきた。



つる植物のように絡みついていたハルは、起きたらいなくなっていた。
仕事に行っているのだろう。
ベッドから降りるとジャラ…と、もっと厳重に付けられた鎖の音がした。
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