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ハル目線
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どうせロンは俺から逃げられない。
撮影したデータがたくさんある。
それに一度逃げても連れ戻した。
そしてロンは本当の意味で、俺のところ以外に帰る居場所はないから。
卑怯だなぁ…
自分の性格の悪さに嫌気がさす。
歩いていると女の視線が突き刺さる。
女の声がうるさい。
寝不足の頭に響いた。
『好き、だよ』
少しかすれた綺麗な声を思い出した。
近くでロンが囁いているみたいだ。
「ハア」
ハルは地面に座り込む。
「大丈夫ですか?」
女性に話し掛けられた。
「はい」と素っ気なく答えて、早足で逃げた。
人気がいないところで、再び座る。
カフェでコーヒーを頼んだ。
店員がロンに似ている気がした。
色素の濃い髪の毛や、瞳の色が似ている。
じっと俺の顔を見ていたので、ニコッと微笑みかける。
その女性は赤面した。
…違う。
女性にロンの面影が重なった。
はっきりと全然違うと分かる。
…ロンを思いだすと苦しくなった。
胸が酷く締め付けられる。
ロンの声を頭から追い出そうとしても無意味だった。
ロンは目を赤くし、泣きそうな声で言った。
俺のことが好きだと。
…一瞬、信じてしまいそうになった。
「…苦しい」
低い声が辺りに響く。
心配そうな店員に、「大丈夫ですよ」と微笑みかける。
痛い…
胸に強烈な痛みを感じた。
会いたい。
ハルは家の方向に向かっていた。
高校の時、初めてロンに「好き」と言われた。すぐに嘘だとわかった。
それでもいいと思った。
ロンの傍にいられれば、それだけでいいと思ったのに…
そんな自分はどこへ行ったのか。
自分のものにしないと気がすまない。
誰かのものになって幸せになるなんて…
嫌だ。
ロンに対する感情は、綺麗な恋や愛ではない。
途中から変わってしまった。
ロンの態度で、俺は狂った。
ドロドロと醜い執着。
顔を両手で抑えた。
泣きそうな気持ちを押し殺した。
「ハハッ」
ハルの乾いた笑いは、夜の真っ黒な空が吸収した。
家に着いた時、ロンはスースーと音をたて寝ついていた。
ロンの髪を優しく撫でる。
小さな顔が見やすくなった。
俺の大好きな顔だ…
ハルは床に膝をついた。
涙が大量に溢れてくる。
…苦しい…何でだ?
ロンの穏やかな寝顔を見る。
ここから、逃げられるはずも無いのに。
◇
僕は目をこすり、起きた。
「ん…ゔうう…」
伸びをする。
随分寝た気がする。
寝惚けた頭で、横を見てギョッとした。
ハルが地面に膝を付き、顔をうつむけていた。
「ハル…?」
恐る恐るハルの顔に触れる。
「ハル?本当にどうしたの?」
顔を上げたハルは、酷く泣いた後の顔をしていた。
「なんで…泣いてるの?」
僕は酷く動揺し問いかける。
ハルは涙を雑に拭った。
「俺のこと…好きになってよ…」
ハルは涙を溢しながら言う。
声が上擦っていた。
僕は目を丸くする。
「だから、好きだって…」
ハルの茶色い綺麗な瞳を見て言った。
その瞳は僕の言葉を信じていなかった。
ハルは何度か首を振った後、口を開いた。
「ロン、俺から…逃げていいよ」
最後の方は上手く聞き取れなかった。
撮影したデータがたくさんある。
それに一度逃げても連れ戻した。
そしてロンは本当の意味で、俺のところ以外に帰る居場所はないから。
卑怯だなぁ…
自分の性格の悪さに嫌気がさす。
歩いていると女の視線が突き刺さる。
女の声がうるさい。
寝不足の頭に響いた。
『好き、だよ』
少しかすれた綺麗な声を思い出した。
近くでロンが囁いているみたいだ。
「ハア」
ハルは地面に座り込む。
「大丈夫ですか?」
女性に話し掛けられた。
「はい」と素っ気なく答えて、早足で逃げた。
人気がいないところで、再び座る。
カフェでコーヒーを頼んだ。
店員がロンに似ている気がした。
色素の濃い髪の毛や、瞳の色が似ている。
じっと俺の顔を見ていたので、ニコッと微笑みかける。
その女性は赤面した。
…違う。
女性にロンの面影が重なった。
はっきりと全然違うと分かる。
…ロンを思いだすと苦しくなった。
胸が酷く締め付けられる。
ロンの声を頭から追い出そうとしても無意味だった。
ロンは目を赤くし、泣きそうな声で言った。
俺のことが好きだと。
…一瞬、信じてしまいそうになった。
「…苦しい」
低い声が辺りに響く。
心配そうな店員に、「大丈夫ですよ」と微笑みかける。
痛い…
胸に強烈な痛みを感じた。
会いたい。
ハルは家の方向に向かっていた。
高校の時、初めてロンに「好き」と言われた。すぐに嘘だとわかった。
それでもいいと思った。
ロンの傍にいられれば、それだけでいいと思ったのに…
そんな自分はどこへ行ったのか。
自分のものにしないと気がすまない。
誰かのものになって幸せになるなんて…
嫌だ。
ロンに対する感情は、綺麗な恋や愛ではない。
途中から変わってしまった。
ロンの態度で、俺は狂った。
ドロドロと醜い執着。
顔を両手で抑えた。
泣きそうな気持ちを押し殺した。
「ハハッ」
ハルの乾いた笑いは、夜の真っ黒な空が吸収した。
家に着いた時、ロンはスースーと音をたて寝ついていた。
ロンの髪を優しく撫でる。
小さな顔が見やすくなった。
俺の大好きな顔だ…
ハルは床に膝をついた。
涙が大量に溢れてくる。
…苦しい…何でだ?
ロンの穏やかな寝顔を見る。
ここから、逃げられるはずも無いのに。
◇
僕は目をこすり、起きた。
「ん…ゔうう…」
伸びをする。
随分寝た気がする。
寝惚けた頭で、横を見てギョッとした。
ハルが地面に膝を付き、顔をうつむけていた。
「ハル…?」
恐る恐るハルの顔に触れる。
「ハル?本当にどうしたの?」
顔を上げたハルは、酷く泣いた後の顔をしていた。
「なんで…泣いてるの?」
僕は酷く動揺し問いかける。
ハルは涙を雑に拭った。
「俺のこと…好きになってよ…」
ハルは涙を溢しながら言う。
声が上擦っていた。
僕は目を丸くする。
「だから、好きだって…」
ハルの茶色い綺麗な瞳を見て言った。
その瞳は僕の言葉を信じていなかった。
ハルは何度か首を振った後、口を開いた。
「ロン、俺から…逃げていいよ」
最後の方は上手く聞き取れなかった。
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