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惑わす
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このときはどこか他人ごとで、自分に降りかかっていることのように思えなかった。
さっき感じたゆうすけからの怒り。
それは一過性のもので、ずっとあり続けるものではない。
そう思っていた。
……
「俺はずっとソラと一緒に居続けるの気なんだけど。
それがわからない?」
綺麗な瞳がぼくを映す。
冷たい表情に照らされた。
そして裕介の声のトーンは、少し必死に聞こえる。
「…飽きるまででしょ」
ぼくは小さくつぶやいた。
………
「試し行動っていうんだって。
こういうの」
両手首を後ろから裕介に掴まれた。
その状態のまま話す裕介に、ぼくは「は…?」と言った。
こんな状況で、何言ってるの?
片手首に掴まれていた手が離れた。
ホッとしたのも束の間,顎を手のひらで上げられるように持たれる。
ぼくは意味不明な裕介の行動のあと、何も言えずにいた。
「めちゃくちゃに抱かれたい?」
昔のように
後ろを振り向き目が合う。
ゾクッと自分の身体が震えたのがわかった。
「あ…」
なにも言わないからわかるだろう。
ぼくがなにを求めているのか。
「僕は真面目に話したいんだけどね。
だけどソラはいつも挑発して自分のペースに持っていこうとする。
今僕を怒らせて手綱を引こうとしてる」
なにも言い返せない。
自分でもなにをしようとしているのかわからないが、思い通りにならない裕介に、半ば八つ当たりで攻撃している。
自分の思い通りにならないなら、ぼくもお前の言う通りにならないぞ、と示しているのかもしれない…
ニコリと笑う裕介。
おれが怒らせたとはいえ、少し恐怖でおののいた。
拘束され犯される可能性もある。
誘拐して、監禁している裕介。
いつ、タガが外れてもおかしくない。
タガが外れたとき、ぼくは裕介をそれでも好きでいられるだろうか?
「聞いてる?
僕は真面目に話したいんだよ?」
あのままぎゅううと抱きしめられる。
はああ、とため息をつく裕介に安堵する。
無理やり嫌なことをされたいわけじゃない。
ただ自分の怒りの矛先を、どこに持っていっていいかわからないそんなおかしなこの状況。
「どうしたい?したいの?」
目をつぶり、おれの答えを待っている裕介に、なんと答えて欲しいのかわかる気がした。
したい、と言ってほしいのだろう。
「………してから話すのに、内容思い出せる?」
裕介は目を開ける。
内心ぼくは笑っていた。
ゆうが、なんて答えるか知りたかった。
…………
さっき感じたゆうすけからの怒り。
それは一過性のもので、ずっとあり続けるものではない。
そう思っていた。
……
「俺はずっとソラと一緒に居続けるの気なんだけど。
それがわからない?」
綺麗な瞳がぼくを映す。
冷たい表情に照らされた。
そして裕介の声のトーンは、少し必死に聞こえる。
「…飽きるまででしょ」
ぼくは小さくつぶやいた。
………
「試し行動っていうんだって。
こういうの」
両手首を後ろから裕介に掴まれた。
その状態のまま話す裕介に、ぼくは「は…?」と言った。
こんな状況で、何言ってるの?
片手首に掴まれていた手が離れた。
ホッとしたのも束の間,顎を手のひらで上げられるように持たれる。
ぼくは意味不明な裕介の行動のあと、何も言えずにいた。
「めちゃくちゃに抱かれたい?」
昔のように
後ろを振り向き目が合う。
ゾクッと自分の身体が震えたのがわかった。
「あ…」
なにも言わないからわかるだろう。
ぼくがなにを求めているのか。
「僕は真面目に話したいんだけどね。
だけどソラはいつも挑発して自分のペースに持っていこうとする。
今僕を怒らせて手綱を引こうとしてる」
なにも言い返せない。
自分でもなにをしようとしているのかわからないが、思い通りにならない裕介に、半ば八つ当たりで攻撃している。
自分の思い通りにならないなら、ぼくもお前の言う通りにならないぞ、と示しているのかもしれない…
ニコリと笑う裕介。
おれが怒らせたとはいえ、少し恐怖でおののいた。
拘束され犯される可能性もある。
誘拐して、監禁している裕介。
いつ、タガが外れてもおかしくない。
タガが外れたとき、ぼくは裕介をそれでも好きでいられるだろうか?
「聞いてる?
僕は真面目に話したいんだよ?」
あのままぎゅううと抱きしめられる。
はああ、とため息をつく裕介に安堵する。
無理やり嫌なことをされたいわけじゃない。
ただ自分の怒りの矛先を、どこに持っていっていいかわからないそんなおかしなこの状況。
「どうしたい?したいの?」
目をつぶり、おれの答えを待っている裕介に、なんと答えて欲しいのかわかる気がした。
したい、と言ってほしいのだろう。
「………してから話すのに、内容思い出せる?」
裕介は目を開ける。
内心ぼくは笑っていた。
ゆうが、なんて答えるか知りたかった。
…………
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