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飽きたら
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居心地が悪そうに、ぼくは低姿勢になり、ゆうの腕を解かせるよう手をかける。
離させようと頑張った。
だが、びくともしないその腕と、後ろで笑った裕介の気配に圧倒される。
固く抱きしめられた。
それに多くの多幸感と満足感、それにゆっくり落とされる。
チャプ…と水溜まりのようなところに落ちたら,次は大きな不安が襲ってきた。
……
優しい声がする。
だが、ぼくの頭で通過した。
横に振り返り聞く。
んーと考えているような声を出す裕介。
袖が畳まれた状態でくっ付いているオシャレなシャツからは、ふんわり柔剤の香りがした。
背中を裕介の大きな身体に預ける。
「飽きそう?ぼくに」
ソラは物憂げに、裕介に聞いている。
裕介は機嫌がいいのか笑っている。
もう、怒っているのかどうかも判別つかない。
自分の頬についた髪をゆうの指で払われた。
こんなこと言いながらも,いちゃついているぼくたち。
「全然だね」
そう言いながらつむじの匂いを吸われた。
急なことで、背筋がぞくっとした。
鳥肌が立ち、性的な気持ちよさが襲う。
目をつむり、ゆうに気づかれないように耐えるぼくは耐えた。
身体を屈み、首を引っ込め、止まるソラ。
上から、ゆうのはは、とやわらかい笑い声がした。
「ゆう…どのくらい?」
誤魔化すように聞く。
耳にキスされ、ソラの身体はピクッと動いた。
「どのくらいで飽きそう?」
また身体をすくめ聞く。
ゆうの腕の中で、ソラはとても小さくなっていた。
「飽きられたい?」
声に、突き放すような響きを感じとり、上を向く。
変わってない裕介の表情を、今しばらく見る。
表情はやわらかいが、視線は氷のように冷たく感じる。
ただ抱きしめる腕はしっかりと、自分の周りを固定され、それだけが天邪鬼な自分の気持ちを安定させる。
どうしようもない自分。……
「…ゆうが、またテレビで活躍してくれるようになったら嬉しい」
純粋な声で言ってみる。瞳もできるだけ純粋に……
自分ではそう見えるよう努力をした。が、裕介は「へぇ」と気のない返事をする。
ぼくは挑発した。
「ゆうが……飽きるか飽きないかより、お金がいつ底を付くかの問題かもね」
ぼくの頭を撫でていた手がピタッ…と止まる。
「お金の心配をしてるの?」
顔を覗き込まれる。
ぼくは再び口を開いた。
「いや…でもそうなったら、ぼくは働きに出ないわけには行かなくなるでしょ?」
嬉しそうに笑う。
それに応えるように裕介は優しく微笑んだ。
「社会不適合者なソラが、働こうとするとはね」
急な嫌味に面食らう。
だが、就活のときに働きたくない働きなくないと、喚いていたのは裕介に散々聞かれていた。
「貯めてたよ」
「ゆうが?」
ぼくの知ってる限り、裕介は散財するのが趣味だ。
だから家を買った、と聞いてもそのこと自体に驚きはなかった。
だけど2人で住み続けるってなったら、話は違って……
「うん。」
無邪気に笑い、通帳を取り出す。
ぼくは自分の置いていかれた思考を、なんとか目の前のことに合わせた。
離させようと頑張った。
だが、びくともしないその腕と、後ろで笑った裕介の気配に圧倒される。
固く抱きしめられた。
それに多くの多幸感と満足感、それにゆっくり落とされる。
チャプ…と水溜まりのようなところに落ちたら,次は大きな不安が襲ってきた。
……
優しい声がする。
だが、ぼくの頭で通過した。
横に振り返り聞く。
んーと考えているような声を出す裕介。
袖が畳まれた状態でくっ付いているオシャレなシャツからは、ふんわり柔剤の香りがした。
背中を裕介の大きな身体に預ける。
「飽きそう?ぼくに」
ソラは物憂げに、裕介に聞いている。
裕介は機嫌がいいのか笑っている。
もう、怒っているのかどうかも判別つかない。
自分の頬についた髪をゆうの指で払われた。
こんなこと言いながらも,いちゃついているぼくたち。
「全然だね」
そう言いながらつむじの匂いを吸われた。
急なことで、背筋がぞくっとした。
鳥肌が立ち、性的な気持ちよさが襲う。
目をつむり、ゆうに気づかれないように耐えるぼくは耐えた。
身体を屈み、首を引っ込め、止まるソラ。
上から、ゆうのはは、とやわらかい笑い声がした。
「ゆう…どのくらい?」
誤魔化すように聞く。
耳にキスされ、ソラの身体はピクッと動いた。
「どのくらいで飽きそう?」
また身体をすくめ聞く。
ゆうの腕の中で、ソラはとても小さくなっていた。
「飽きられたい?」
声に、突き放すような響きを感じとり、上を向く。
変わってない裕介の表情を、今しばらく見る。
表情はやわらかいが、視線は氷のように冷たく感じる。
ただ抱きしめる腕はしっかりと、自分の周りを固定され、それだけが天邪鬼な自分の気持ちを安定させる。
どうしようもない自分。……
「…ゆうが、またテレビで活躍してくれるようになったら嬉しい」
純粋な声で言ってみる。瞳もできるだけ純粋に……
自分ではそう見えるよう努力をした。が、裕介は「へぇ」と気のない返事をする。
ぼくは挑発した。
「ゆうが……飽きるか飽きないかより、お金がいつ底を付くかの問題かもね」
ぼくの頭を撫でていた手がピタッ…と止まる。
「お金の心配をしてるの?」
顔を覗き込まれる。
ぼくは再び口を開いた。
「いや…でもそうなったら、ぼくは働きに出ないわけには行かなくなるでしょ?」
嬉しそうに笑う。
それに応えるように裕介は優しく微笑んだ。
「社会不適合者なソラが、働こうとするとはね」
急な嫌味に面食らう。
だが、就活のときに働きたくない働きなくないと、喚いていたのは裕介に散々聞かれていた。
「貯めてたよ」
「ゆうが?」
ぼくの知ってる限り、裕介は散財するのが趣味だ。
だから家を買った、と聞いてもそのこと自体に驚きはなかった。
だけど2人で住み続けるってなったら、話は違って……
「うん。」
無邪気に笑い、通帳を取り出す。
ぼくは自分の置いていかれた思考を、なんとか目の前のことに合わせた。
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