アイドルの元彼

冬田シロクマ 

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「暇なら他の遊びは?」

掴まれた腕はそのままに、「ここに座って」と笑顔で言われた。
ぼくは疲れた顔のまま裕介の膝の上に座る。
満足そうな顔のゆう。
ぼくは、ゆうは可愛くないのが好きなんだな、と思いながら、身体を捻りゆうの顔を見る。
子どもにするように、ぽん…ぽん…と腕の上を優しく叩かれる。
ぼくは固まる、意図的に。
優しくされてる時に、反抗したら、なにが始まるのかわかるから。
内心、深いため息つきたいのを抑えた。
……

さっきまで、ずっと抱きしめられていた。 
もしかしたら、もう少し押せば自分の希望が通るかもしれない。
ぼくはそう考えていた。
裕介は現時点で、大きな反対はしない。
あんなに逃げる気満々だとわかりやすかったのに。

寝落ちている。
ゆうを遠目で見た。
ゆうを見たあと、反射的にドアの方を見る。
内鍵はきっちり掛けられていた。

どこまで…本気なんだろう。
この監禁が。

前も「付き合って」と言われたから付き合ったが、ごっこ遊びのようだった。 

ただ、先の見えない関係…

お互いが同性愛者でもなく、今回初めて男と関係を持った。
ぼくに関して言えば、ほぼゆうの好奇心に巻き込まれたようなものだ。

ゆう…

起こさないよう、静かにしゃがむ。
整い過ぎたその綺麗な顔を近くで見る。
髪の毛が…色落ちして金髪になっていた。
ふと、思う。

時が止まり、今の状況が永遠に続けばと。
歳をとることなく、ヴァンパイアのように長く生きながられれば…
そうしたら、要らないことを考えなくても済むだろう。
時間が、無限にあれば、と。
…… 

従順になれば終わるのか。
 
腕を掴まれ手繰り寄せられる。
お腹の方を安全ベルトのようにがっしり掴まれ、後ろ髪を吸われる。
諦めたかのように、ぼくは動きを封じた。
自分が、まるで裕介の所有物になったかのような気分だった。

ここに来て、裕介の言うことはほぼ聞いている。
飽きられるのは、時間の問題だ。

「はぁ」と1人でにため息をつく。
でも、どうにか…逃げられる道を探さなきゃ。
でも…

「ソラ」

華やかな顔立ち。
手繰り寄せられ、首元の匂いをかがれる。

「好きだよ…ソラ。大好き」

ぼくはかがみ、受け入れる。

これで、裏切ったら…どうなるか。
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