アイドルの元彼

冬田シロクマ 

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閉じ込めておきたい

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監禁するつもりだった。
再び会ったそのときから

だけど実際ソラに会えたとき、嬉しさですべてが吹き飛んでしまった。
会えた喜びだけが残り、あとはどうでもいいみたいな…
それは、ソラも同じだと思っていた。
内心、自分が来ることを待ち望んでいるとばかり思ってたんだ。

…可愛さ余って憎さ百倍 とはよく言ったものだ。
今は拒絶された苛立ちだけが強く残る……
……

気味が悪い

裕介は顔を上げ、無邪気に笑う。
にこにこと幸せそうだ。
懐かしく、見惚れ、その綺麗な顔がやたらキラキラして見え、ぼくは目を細めた。

「ソラ、おはよ」

心地よい声が響く。
上を向いて、ぼくの膝を枕にして言う裕介に、愛おしさが倍増した。
ぼくはとっさに、「うん、おはよう」と言った。
水色の髪の毛をなでる。

やわらかい

ふふっと笑う、うれしそうな裕介。
ぼくはボッーと、まるで裕介が透けているみたいに見続けた。

「ゆうすけ…気が済んだか?」

なでた手を止め、静かに言う。
あえて、嫌な言い方をした。
可愛げのカケラもないと自分でもわかる。

思い切り強引に、ぼくをヤった。
自業自得だ

そう内心つぶやき、ソラは笑う。

「出てってほしい」

そう、いつも通りの口調で言い放った。
……

抱かれてる間、乱暴ではあったものの、ずっと「愛してる」「好きだよ」と裕介の声が聞こえてきた。
自分の両耳を拳で抑えつけてても、ゆうすけに離させられ、聞かせられる。

『拒まないでよ。
…手はこっちだよ?』

そう言い、ゆうの背中に腕を回すように命令された。

「ハア…ッ!」

肺に、一気に空気が入った。
思い出すだけで、感じたこともない甘ったるさで胸がでいっぱいになる。
心地よい息苦しさに苛まれた。

『俺のこと、まだ好きだよね?』

抱きかかえられ、面と向かって言われる。
ぼくは目を背けた。
そのときの、裕介の表情を忘れられない。
いつものような余裕しゃくしゃくな笑顔だった…

「ソラ?」

ハッとした。
不機嫌な声が響く。
赤くなったであろうソラの顔に、裕介は怪訝な顔をした。
ソラは取りなして、言った。

「じゃあ、ね…ばいばい。
…今までどおり、応援してる。」
「はあ?」

笑っている裕介。
だが瞳にははっきりと怒りが見えた。
ぼくは手を振る。
立ったまま、動く気配のない裕介に。
ソラは静かに玄関を指さした。
裕介は、指した方向を見、ソラがいる前を向き直した。
下を向き、「ははっ」と笑った。
その裕介は、怒りとなにか思案しているように見えた。
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