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脅し
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逃げようと玄関を見た。
だがそれはバレバレで、考えてることが裕介に筒抜けだったみたいだ。
腰に巻きつけられた腕は強くなり、両手で抱えこまれる。
ニコッと笑うゆう。
若干うろたえる目つきのソラ。
裕介の考えが、手にとるようにわかった。
『逃がすつもりはない』
そう裕介の冷たい瞳が言っている…
暗くなった表情のソラは顔をうつむける。
裕介の左肩をつかみ押した。
「そら…」
言い聞かすような裕介の声。
手放したくなる冷静な自分をなんとか食しがみつきながら、ソラは辛そうに、そしてなぜか悔しそうに裕介を見た。
裕介の瞳は相変わらず優しかった。
下手に出られるとソラは弱い。
目をギュッとつぶった。
「…あ」
声が、震えた。
小さな部屋に、インターホンの音が響き渡った。
なんにもないのに焦ってしまう。
それで、ソラの頭に浮かんでいた拒絶の言葉は消え去った。
無表情で若干苛ついた様子の裕介はニコッと笑う。
顔を覗き込まれているのがわかった。
ぼくはわざと目を合わせなかった。
「誰?」
裕介は笑っている。
ぼくは怯えながら裕介の表情をうかがった。
案の定、笑っているが、言い方に強い険を感じた。
なにか勘違いしてる…と直感でわかった。
「ち、違ッ…母さんの荷物だよ。きっと」
焦って言う。
苛ついた表情に変わりゆく裕介を止め、代わりにぼくは玄関に向かおうと立ち上がる。
だが立ち上がらせずに、腕を引っ張られ引き止められた。
「なんだ?」と思い、裕介の顔を見る。
下を見ると、怒ったままニコニコ笑っている裕介がいた。
ぼくは一瞬、呆れたように天を仰ぐ。
可愛い…と内心思うも、強烈な嫌な予感が頭に浮かんだ。
「なに…」
考えずに出た言葉。
裕介は顔をゆったりと傾ける。
いつものコイツの一見朗らかに見える雰囲気は、今はとても不気味だった。
強烈な違和感と恐怖感だけが襲う。
ぼくの両腕は、逃げられないように、ガッチリ掴まれていた。
「ゆう、離せ…帰られる」
ニコッと笑い手をパッと離される。
嫌な予感は過ぎ去らなかった。
……
「ソラのこと、信じるよ。」
甘くやさしい声。
きれいな顔がニコッとほほえむ。
わかりやすいアイドルスマイルに、内心警戒した。
裕介は、少し考えたような表情をし、話を続けた。
「だけど…もし、ここにまた戻って来なかったら、僕の恋人だって世間にソラの存在バラすから」
嬉しそうに言う裕介。
サアアと背中が冷えていく。
ぼくが、一番恐れていたことだった。
……
だがそれはバレバレで、考えてることが裕介に筒抜けだったみたいだ。
腰に巻きつけられた腕は強くなり、両手で抱えこまれる。
ニコッと笑うゆう。
若干うろたえる目つきのソラ。
裕介の考えが、手にとるようにわかった。
『逃がすつもりはない』
そう裕介の冷たい瞳が言っている…
暗くなった表情のソラは顔をうつむける。
裕介の左肩をつかみ押した。
「そら…」
言い聞かすような裕介の声。
手放したくなる冷静な自分をなんとか食しがみつきながら、ソラは辛そうに、そしてなぜか悔しそうに裕介を見た。
裕介の瞳は相変わらず優しかった。
下手に出られるとソラは弱い。
目をギュッとつぶった。
「…あ」
声が、震えた。
小さな部屋に、インターホンの音が響き渡った。
なんにもないのに焦ってしまう。
それで、ソラの頭に浮かんでいた拒絶の言葉は消え去った。
無表情で若干苛ついた様子の裕介はニコッと笑う。
顔を覗き込まれているのがわかった。
ぼくはわざと目を合わせなかった。
「誰?」
裕介は笑っている。
ぼくは怯えながら裕介の表情をうかがった。
案の定、笑っているが、言い方に強い険を感じた。
なにか勘違いしてる…と直感でわかった。
「ち、違ッ…母さんの荷物だよ。きっと」
焦って言う。
苛ついた表情に変わりゆく裕介を止め、代わりにぼくは玄関に向かおうと立ち上がる。
だが立ち上がらせずに、腕を引っ張られ引き止められた。
「なんだ?」と思い、裕介の顔を見る。
下を見ると、怒ったままニコニコ笑っている裕介がいた。
ぼくは一瞬、呆れたように天を仰ぐ。
可愛い…と内心思うも、強烈な嫌な予感が頭に浮かんだ。
「なに…」
考えずに出た言葉。
裕介は顔をゆったりと傾ける。
いつものコイツの一見朗らかに見える雰囲気は、今はとても不気味だった。
強烈な違和感と恐怖感だけが襲う。
ぼくの両腕は、逃げられないように、ガッチリ掴まれていた。
「ゆう、離せ…帰られる」
ニコッと笑い手をパッと離される。
嫌な予感は過ぎ去らなかった。
……
「ソラのこと、信じるよ。」
甘くやさしい声。
きれいな顔がニコッとほほえむ。
わかりやすいアイドルスマイルに、内心警戒した。
裕介は、少し考えたような表情をし、話を続けた。
「だけど…もし、ここにまた戻って来なかったら、僕の恋人だって世間にソラの存在バラすから」
嬉しそうに言う裕介。
サアアと背中が冷えていく。
ぼくが、一番恐れていたことだった。
……
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