アイドルの元彼

冬田シロクマ 

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性格に難ある裕介

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そう自分に言い聞かせながらも、涙があふれる。
キスを何度もされ、おれはそれを受け入れた。
服の中に…手を入れられた。


自分が中途半端で突き放せないから悪い。
セックス中、ささやかれる裕介の甘いかっこいい声。

『まだ僕ソラのこと好きみたいだから…やっぱりソラのこと諦められない』 

抱き締められ、苦しそうな声だった。

「え…」

両腕で閉じ込められてるおれは、そう言い、呆然とした顔でゆうを見た。
笑う裕介が、目の前にいた。
……

終わったあと、裕介に抱き着かれながら、遠くを見ているソラ。
「そら、そら」と言っている裕介を尻目に、裕介についてぼくはボーと考えた。

コイツ…はじめから大人しく帰るつもりないだろ

無気力にそう思う。
適当に裕介の背中をポンポンと叩き、そして考えてしまう。
裕介の仕事のこと。

自分が、裕介の足を引っ張るわけにはいかない。
ここに住むっていったって、祐介のことだ。
隠しもしないのだろう。
昔より寛容になったからといっても、今も根強く同性愛についての偏見はある。
それでファンが減りーの…
……こんなんで、裕介の仕事がなくなってしまったら…

自分の顔が青くなる。

テレビの映像が頭に浮かんだ。
裕介の、カッコいいアイドルスマイル。
かっこよくない時なんてないが、画面を通して見ると、キラキラしている。
淡い水色の髪のゆうが、無邪気に笑う。
画面ごしでは、数倍爽やかに見えるゆう。
「キャーキャー」と騒がれ、圧倒的な華があり、誰からどう見てもゆうの天職だった。

『アイツの将来を潰すのか?』

何度も頭に木霊する。
ここにいていい人じゃない。
ここに来たときも、まったく変装してなかった。

「……はぁ」

顔を覆い、落ち込むソラ。
どんどん下を向く。

ぼくのせいで…

頭を抱えた。

「…そんなにいや?僕とこうしてるの」

顔を上げる。
強い目で、見てくる裕介。
そこには裏切られたような表情も垣間見れた。
傷ついてるんだとわかる。

「…いや」

その表情を見ながら否定する。
裕介に抱き着いた。
安心させるように。

約束は、約束だ。

大好きホールドをし、ぎゅとしがみつく。
「よしよし」と言い、嬉しそうにぼくの頭を撫でるゆうの手。
裕介の肩に顔を埋めた。
好きな匂いで、肺がいっぱいになる。

これで…最後だ。

「甘えただね」

嬉しそうな、機嫌がいい声。
背中に腕が回る。
涙目で、ギュッと裕介に抱きついた。

「これからは、ずっと一緒にいようね?」

…息が詰まる。

「…そら?」

返事をしないおれに、怒ったような声。
まだ抱きついていたいのに、身体を離され、顔を見られた。
心配そうなゆうの表情。
おれの顔はまたもや歪んでいた。
腕で隠す。

「会うのは、これで…最期」

って言った…

声が震える。
自分を守るため身体を両腕でさすった。

「…?ゆ、う」

裕介は安心したようにフッと笑う。
ゆうとは違う、黒の髪を触られた。
起き上がろうとするソラに、裕介は腰を掴む。
起き上がらせないようにされる。
その間、ゆうは顔を横にゆっくりと傾け、魅力的な顔で笑った。

「…ソラのことだから、僕の将来とか考えてくれてんの?」

思ったより優しい言い方だった。
だけど頭にカッと血が上った。

「そうだよ!悪いか!?お前のこと、思って…ッせっかく…」

言いながら、ゆっくり泣き始めてしまう。
それを情けなく思った。
おれはもともと、泣かない方だったのに。
それをケラケラと面白がるように見てくるゆう。

相変わらず性格悪い…と涙を拭きながら思った。

「いい?ソラくん。」

しゃがむ。
馬鹿にするようにニコニコ笑う裕介。
ソラは口を線に結んだ。
突き放そうとする表情は変わらなかった。

「俺そんなの頼んだっけ?」

怒ってる…でもそんなこと知るか…!
こっちはお前の大勢のファンを敵にするかもしれないんだ…!
そして、生きがいを奪うことにも…

どっちが怖いと言ったら裕介だが、かろうじて裕介の将来をだめにする気はなかった。
好きな人を…自分に縛り付けるなんて…

「そら、聞いてる?」

両頬を優しく掴まれていた。
優しくほほえむゆう。
……
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