魔法も使えない下等幼女

冬田シロクマ 

文字の大きさ
上 下
7 / 11

しおりを挟む
表情だけ、優しく笑う…あの少年。
だけど、行動をよく見てたらわかる。
なんにも優しくない。
そして誰に対しても冷たい。
だけどたまに助けてくれる、そんな関係だった。

別人だと思ったし、そうであってほしいと願った。
アイツならなにされるか、わかったもんじゃない。
だが…無駄な祈りのようだ。
あの子で間違いないだろう。

リチャード・フィーピー

綺麗な顔立ちの男の子だった。
数々の祖母の魔法の守りを切り抜け、私のところに遊びに来てくれた。

私は無邪気だった。
なんの疑いもせず、リチャードと遊んでいた。
もっと、自分の利用価値をわかっていたらなにか変わったのかな?


そういう私は盛大に傷ついた。
初めて出来た友だちは、大人たちからお金をもらい、私からの祖母の情報を売っていた。

他にも聞いた。
私がこの子に執心のようだから、騙して誘拐し、お婆さまをゆすろうと…


目に涙を溜め、コンクリートの壁の後ろで聞いていた。
やっと魔法たちから切り抜けたあと、こんな傷つく思いをするとは夢にも思わなかった。

軽やかで、きれいな澄んだ声。
間違いなく、フィーピーの声だった。
本当の意味で、幼い私は泣いて、しゃくり上げた。
その音が聞こえないように、私は必死で口元を抑えた。
……

「お婆様のことが知りたいんでしょ」

身も心も子どもの頃の私は、冷たい声色でそう言った。
そう言われ、子ども頃のリチャードは、まるで傷つけられたかのように固まっていた。
それを心底意外に思う。

「…興味ない」

そうゆっくり口を開いたかと思えば、静かに響くリチャードの声。

だけど、私は聞いたんだ。
リチャードが大人たちと話している内容を…

「次は、誘拐?」

せせら笑いながら言った。
リチャードの表情は変わらなかった。
無性に怒鳴り上げたくなる衝動が走る。
だが…

「言って。
私のお婆さまのこと、知りたいんでしょ?
教えてあげるから。」

冷静を装って、ほほえんで言った。
コイツに裏切られて、こんなに傷つけられたとは思われたくなかった。

大したことじゃないように
こういう魔法使い(私を利用しようとした碌でもない奴)はいくらでもいて、リチャードもその中の一人であるかのように。

お前は、取るに足らない、どこにでもいる平凡な奴なんだと。

私の思いを知ってか知らずか、何も言わないリチャード。

彼女は冷笑的に笑った。

「聞かないの?」 
「信じてくれないの?僕のいうこと」

被せるように言う。
かすかに怒りに染まった赤い瞳。
私はここで初めてよくわからなくなった。
疑うような瞳でリチャードを見る。
リチャードの表情は俯いて暗かった。

「誘拐なんか…協力するわけない…!
もとから潰してしまうつもりだったし…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...