魔法も使えない下等幼女

冬田シロクマ 

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知り合い 続き

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「だから…銃が欲しい。
防犯のために。
銃をくれたら、私に掛けられた魔法について詳しく教える」

青年の赤い目が広がる。
とてもよい交換条件だったようだ。

「そうだね…でも」

青年は私を見てほほえんだ。
銃をカチャ、と音をたて突きつけられる。

「こうやって、脅して話してもらうほうがはるかに早い」

ニコリと笑う赤い目の美青年。
あーあ、やっぱりお前はそんなやつよな、と幼女は心の中で思った。
……

思えば最初からおかしかった。
今まで誰にも見つかっていない場所で、知り合いに会い、そしてその相手は敵国の軍人だとは。
ニッコリ笑い「久しぶりだね。」
そう言うと思った。

だがそんなわけないことを忘れていた。
髪色まで変え、魔法使いに見えるよう着飾った私に、昔の芋っぽい、ありのままの子ども時代を知る人には、まず気付かれないだろう。

まず幼子のまま、姿を止められてるとは普通、誰も夢にも思わないに違いない。

顔を傾け、大人になったソイツを見る。
整った顔は昔からだったが、雰囲気がまったく違った。
胡散臭く、やわらかい雰囲気。
それと相反し、引くほど冷徹な瞳…
そのギャップは、唯一無二の不思議な魅力を醸し出している。

ほうっ…と見る。
なにもかも変わった、昔の友人を。
子どもが崖から落ちても、平気な顔で見てられる人間。
そして、疫病は流行らせただろうこの人。

息が…詰まった。
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