5 / 11
落ちていく間 (幼女目線)
しおりを挟む
真っ逆さまに落ちていく。
顔は冷たく、無表情。
死にたいなら、仕方ない。
そう赤い瞳の青年は語っていた。
あの頃とは、まったく違う。
昔井戸に落ちそうになった時…わたしの手を掴もうとするその顔は、酷く焦っていた。
もう概に膨大な魔力があったフィーピーは、落ちる途中焦りながらも、軽々とわたしを井戸から出していたが…
あの面影はまったくない。
…
冷静な今がいいか、さっきの脳内麻薬バンバン出てる状態の方がいいか…
答えが決まってもこの際どうでもいいことが頭に浮かぶ。
私はへらっと笑い、その男の目にヤバいものとして映った。
「殺して、殺してよ…」
笑い、泣き、小さな声で戯言を言っている。
「…なんで?」
飄々と言う美青年。
意味がわからなげに。
私は涙目で、呆れたように目線だけソイツにやった。
縛って無理やり連れ出された事実を、私は忘れていなかった。
それと、思うこともある。
「たくさんの…病気の人たちを見てたの。
運ばれていく…
疫病を流行らせたでしょ。この国で」
このぐらいでやめとけばよかった。
少し前の情景が目に浮かんだ。
私の口から、ポロポロと涙のように言葉がつらなる。
「人を殺すのがなんとも思ってない人たち…」
最後の最後に侮辱した。
赤い瞳の美青年に目をやる。
冷たい表情だった。
ランプでオレンジ色がゆらゆらと揺れる。
自分の不安定な心を表してるようだった。
……
まだ死んでない事実に愕然とする。
現実が頭を通過するように、徐々に現状が掴めてきた。
治癒魔法と脳内の快楽物質は、私の身体の治りと反比例して収まっていく。
そして記憶もゆっくり戻る。
さっきまで、頭が半分以上無くなっていた。
それが再生し終わりそうだからみたいだ。
8割方、頭が戻る。
(魔法が使えるのが当たり前の国で、高いところから飛んだくらいで死ねるわけなかったのに…)
自分の考えの浅さを恥じた。
もっと、思い出していく…
無表情な軍人たちに冷たく見下された。
まるで壊れたガラクタを見るような目つき。
岩の狭間にガツン!!!と、大きな音をたて落ちたあと、魔法のようなものに引き上げられた。
ブラーンブラーンと吊るされる。
息を吹き返す魔法を掛けられ、私は痛みで絶叫した。
怒号のような声で泣き叫びながら、よくあることかのように兵士たちは冷たく見守った。
そして、なにやらあの金髪の命令を待っているようだった。
「まだこの子に聞きたいこともある。
丁重におもてなしして。
また縛ったりしたら許さないから」
ニコッとほほえみ、命令している。
神妙な顔つきで頷く兵士たち。
私は痛みで気を失った。
顔は冷たく、無表情。
死にたいなら、仕方ない。
そう赤い瞳の青年は語っていた。
あの頃とは、まったく違う。
昔井戸に落ちそうになった時…わたしの手を掴もうとするその顔は、酷く焦っていた。
もう概に膨大な魔力があったフィーピーは、落ちる途中焦りながらも、軽々とわたしを井戸から出していたが…
あの面影はまったくない。
…
冷静な今がいいか、さっきの脳内麻薬バンバン出てる状態の方がいいか…
答えが決まってもこの際どうでもいいことが頭に浮かぶ。
私はへらっと笑い、その男の目にヤバいものとして映った。
「殺して、殺してよ…」
笑い、泣き、小さな声で戯言を言っている。
「…なんで?」
飄々と言う美青年。
意味がわからなげに。
私は涙目で、呆れたように目線だけソイツにやった。
縛って無理やり連れ出された事実を、私は忘れていなかった。
それと、思うこともある。
「たくさんの…病気の人たちを見てたの。
運ばれていく…
疫病を流行らせたでしょ。この国で」
このぐらいでやめとけばよかった。
少し前の情景が目に浮かんだ。
私の口から、ポロポロと涙のように言葉がつらなる。
「人を殺すのがなんとも思ってない人たち…」
最後の最後に侮辱した。
赤い瞳の美青年に目をやる。
冷たい表情だった。
ランプでオレンジ色がゆらゆらと揺れる。
自分の不安定な心を表してるようだった。
……
まだ死んでない事実に愕然とする。
現実が頭を通過するように、徐々に現状が掴めてきた。
治癒魔法と脳内の快楽物質は、私の身体の治りと反比例して収まっていく。
そして記憶もゆっくり戻る。
さっきまで、頭が半分以上無くなっていた。
それが再生し終わりそうだからみたいだ。
8割方、頭が戻る。
(魔法が使えるのが当たり前の国で、高いところから飛んだくらいで死ねるわけなかったのに…)
自分の考えの浅さを恥じた。
もっと、思い出していく…
無表情な軍人たちに冷たく見下された。
まるで壊れたガラクタを見るような目つき。
岩の狭間にガツン!!!と、大きな音をたて落ちたあと、魔法のようなものに引き上げられた。
ブラーンブラーンと吊るされる。
息を吹き返す魔法を掛けられ、私は痛みで絶叫した。
怒号のような声で泣き叫びながら、よくあることかのように兵士たちは冷たく見守った。
そして、なにやらあの金髪の命令を待っているようだった。
「まだこの子に聞きたいこともある。
丁重におもてなしして。
また縛ったりしたら許さないから」
ニコッとほほえみ、命令している。
神妙な顔つきで頷く兵士たち。
私は痛みで気を失った。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる