魔法も使えない下等幼女

冬田シロクマ 

文字の大きさ
上 下
3 / 11

死ぬより怖いこと。

しおりを挟む
死んだ方が、マシだと思った。
自分のプライドをズタズタにされるくらいなら。
数々の歴史を見て思った。

戦争に、レイプはつきものだと

だが、別にこの人たちにレイプされると思ったわけではない。
そんなのわからない。
だがもし今、被害にあわなくとも、今後どうなるかなんて誰にもわからない。
ある可能性の高い、その恐怖に、怯える。
その恐怖は、打ち消せなかったし、想像するだけで、全身が死体のように硬くなった。

…自分は、このまま死ぬのが幸せだろう。
そう客観的に、まるで自分のことではないかのように言ってみる。
納得できた。
その通りだと思った。
まだ私が耐えれるほどのバッドエンドでよかった。
そう心から思っている。
そして今後もこの考えは変わることはない。
…………
………

長い沈黙、打ち破る声。
暗闇の中、話し声が聞こえた。
表面上だけ優しい声と、緊張した、硬い声。
私をどうするか、話しあっているのだろう。
トロンとした目で、ぼやけて見える。
発光したような派手なブロンド。
片方は嫌でも誰とわかった。
………

しばらく経つ。 
退屈になってきた。
そして、自分のすべてをさらけ過ぎたと反省する。
敵軍に、どう思われただろうか。 

おかしい子ども、あるいは…

考えに至ってほしくないことが頭に浮かぶ。

魔法で、中身は成長しきってると思われたか。

喉が鳴った。
ヒュッと、
死ぬことさえ怖くなかった私。
やっぱりこの世には、死ぬより恐ろしいことがあるとわかる。
投与された薬のせいか、脳がハイになりなにかがドバドバでている。
……

「起きた?」

美しく笑う青年。
一瞥される。
優しい…甘い声。
見てくるのは、真っ赤な派手なルビー。
私は無意識に、うんざりするような目線をするのをやめられない。
この人が、あまり怖くないのもあるだろう。

「大丈夫?しゃべられないかな」

枕元を見られる。
なにを見ているのかわからない。  
そして…他にもひっかかる。

若干…子どもにするような声だったのが、女に対するような、低い声になった気もしないでもなかった。
静かに全身の毛が逆立つ。
そして、私の頭にはなぜ?という疑問符が浮かんだ。

私は疲れた顔で、寝たまま美青年を見る。
薄暗い夜明け。
気づかないうちに、部下らしき人はいなくなっていた。
ほほえむ美青年。 
私のうんざりした表情は、変わらなかった。
身体を動かそうとする。
腕が上がらないことにき気づき、イラッとした。
そのあと、冷静な頭が今後どうなるか教えてくれたため、喉がまたもやヒュッと鳴った。
今にも泣き出し、オエッと吐きそうだった。
男はマイペースに言う。

「ごめんね。
今治癒魔法かけてるから、しばらくは動けない。
なにもしないから…安心して」

信用できない…

心の声は、言葉にして出していた。
すぐにも、「殺して…」と言う言葉が、一粒の涙とともに自分の口から出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

処理中です...