魔法も使えない下等幼女

冬田シロクマ 

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急に連れ去られる、拉致

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魔法も使えない下等幼女。
錆びれた街の中、隠れて住む。
だがある日、台風のように連れ去られた。

美しい、真っ赤な瞳の青年…

「お前、ペドか?」

トンガリ帽子の幼女から、とんでもない言葉が飛び出てきた。


私は元々アウトドアだった。
暇だと外に繰り出し、1人、キャンプをする。
それができたのは、比較的治安のいい地域に住んでいたからだ。

今は違う。
戦争が始まり国を乗っ取られた。
私の住んでいた地域にも被害が及ぶ。

私は身を護るための魔力はない。
この魔女のような大きな帽子は、ただの見掛け倒しだ。

それが野蛮な人たちに気づかれれば、どんなことをされるか…

レイプ、暴行、売られる…

ざっと頭に浮かんだ言葉。
みんな知り合いは、ホオキに乗って逃げてった。

私は逃げられない、かと言って戦えるわけもない。
ただ私は、隠れるほかなかった。
………

男の目の前に連れ出される。
両腕に縄をつけられ、後ろで縛られたまま。
ドアが空いた先は、さっきのように赤い瞳の美青年だ。
派手なブロンド、そしてガーネットのようなキラめく瞳…
キラキラと光るその瞳は、「自分は世界一美しい」と言っているようで辟易した。

見るからに、自己愛が強そうな厄介な人間…

そんなことを思われてるとはつゆ知らず、ニコッとほほえむ美青年。
その幼女はどんよりとした空気を纏った…

「なに」

ぶっきらぼうに響く。

「ソファーに座ったら?」と優しそうな声で促される。
私は立っていたかった。

銃で殺されるなら、その方がマシだと。
奪って自分を撃つシュミレーションをした。

「…はぁ、要件が知りたい」

男のような低音。
その幼女は言いながら、髪の毛をクシャクシャ掻く。
意を決した様子でこちらを見た。

おれは首をかしげる。

大人び…過ぎてる

やばいものを見すぎて、しっかりせざるを得なかった憐れな子か…?

「きみは保護される対象だ。」

怖がらせないように、努めて優しく言った。

「フッ、こんな縄で縛っておいて?」

馬鹿にするような表情に、嘲笑うような声。

「…?」

再び顔をかしげる。

おかしいな

話していると、同じくらいの年齢の人と話している気分だった。

「ごめんね?従者によくいって言い聞かすよ。」

余裕そうな笑みを浮かべる。

従者に言い、解かせた。
その間、憎っくきとでも言いたげな瞳を向けられた。
強い、目。
ぼくと同じ、暖色系だ。

「きみは…名前は?」
「マルチーノ。マルチーノ・ブランシェ」

幼女とは思えない、落ち着き払った声が響いた。
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