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未来政府の方針をりんごへ伝えるのだが
しおりを挟む前回から、無事クレアのテレポートカードで未来へ辿り着いたりんごたち。
すぐさまロストチャイルド課の執務室へ行き、腹ごしらえをしたいというりんごを全スルーして、今後の未来政府の方針についてりんごに全てを伝えたのであった。
最初は不貞腐れるりんごだったが、話を聞くうちに、驚いたような顔で真剣に聞き始める。一通りオスカーが話し終わると、クレアがまとめる。
「つまりね、まとめると過去政府へ協力を要請することになったの。過去の番人の行動を正確に把握して、ひとりでも多くの味方をつけるためにね。」
「貴方の時代ですから、今後面識があるでしょうし。
過去への接触を図るのは、我々未来政府関係者数名と番人。
そして記憶消滅部隊ーー通称バク、です。」
「バクぅ??ってなんだ?」
「バクとは夢を食う動物のこと。
ーーと、いうのも、彼らの主な仕事が、時空の歪みによって迷い込んだ、ロストチャイルドの未来での記憶や、余計なことを知ってしまった人々から、記憶を裏で消すのが、仕事なのです。
ーー分かりやすく言えばつまり、時の番人がロストチャイルドを下界から保護し、その後、我々が引き取り、バクが記憶を消して過去へ送り届けるんです。
例外として、時の番人も記憶を消せるので、全て彼らがやってしまうこともありますが。
まぁそのために、夢食いという意味で、バクと呼ばれてるんです。」
と言うと、りんごをみてボソッと続ける。
「まぁ、貴方もいずれ記憶を抜かれ、我々のことなど忘れ去ってしまうのですがね」
「なぁなぁなぁっっ!!俺も会いたいっっっ!!きっとかっけえんだろうな!」
先程のオスカーの呟きが聞こえなかったようで、目を輝かせながら、ガシィッとオスカーの裾を掴んで揺さぶりだす。
「ーーーっ!離しなさい!
制服が伸びたらどうしてくれるんです?!貴方じゃ到底二割でさえ、支払うことすら出来ないような代物なんですよ!
それに、彼らと会ったところで会話がまともに成立するかどうか。バクへたどり着く人間は、大方左遷か、変人なんです。言わば、天下りですね。
彼らの奇行は有名で、巷では、ドリーミングウェルドーー夢を見る変人とまで言われる始末」
と、首をすくめてみせるオスカー。
するとクレアが、顔をしかめて抗議する。
「そんなこといわないでくださいよ!あたしの同期がいるんですから!」
「なおさら会いてえな。変人の集う会か」
「なんか解釈間違ってーーーもういいです。話を戻しましょう。
まずは、過去政府と、接触を図るのですが…。
実は、未来政府上層部は、もともと全ての時代の政府と連絡を取り合い、繋がっているんです。古くから時を超える計画は立てられていたようですし、時代時代に、未来政府と呼ばれる組織があったのですよ。
しかし、このように公にしてまで協力を仰ぐと言うことは、前代未聞。
それほど、歴史が大きく動いたターニングポイントでもあり、後がなくなってきているのでしょうね。」
「ふぅん、そうか。未来政府で働くのもアリだな。」
と、真剣に考え出すりんごに、オスカーが呆れたように言い放つ。
「圏外ですよ、貴方は。
トップレベルのうちの一握りだけが面接へ進め、その大方は、書類の時点で落とされるのですから。そもそも全てにおいて、本当に優秀なもののみが未来政府からのスカウトで面接を受けられるんです。
それで、どこまで話しましたかねーー
そうです。我々は、三つの場所を拠点に過去の番人を探ることにしたんです。
一つ目は過去の未来政府。二つ目は、パリス政府。
そして、最後に、日本です。
これらの場所はすべて、現在確認されている過去の彼らがいた場所です。」
「すげえっっっ!!!映画みたいだなっっ!!!たかしたちに自慢してぇっっ!
ーーーーふぐぅ?!?!」
突然、オスカーがりんごの顔を掴み上げる。そして、今まで聞いたことのないどすの利いた声で続ける。
「これは、極秘事項、です。
ーーー万が一バラした時は、貴方も一緒にバラされると思ってくださいね?
ーー安心しなさい、殺されはしません。未来では拷問器具や、脳を操作することが可能でしてね。夢の中で殺すことが出来るんですよ。もちろん実際には死にませんが…
現実と同じくらいの痛みを感じると言いますねぇ?
さぁて、リークした場合は罪が重いので、何回死ぬでしょうねぇ?」
ゾォッ
一気に全身に悪寒が走り、口を真一文字に結んだまま、慌てて首を振るりんご。それを見ると
「ふん、よろしい。これくらい脅しておかなければ、後先考えず言いふらしそうなので。
ーー貴方は、最重要参考人なのです。貴方の周りだけが、明らかに目まぐるしく変化している。
貴方は本来、平凡な人生を歩むはずだったと言うのに」
「ええっっ?!知ってんのかっっ?!俺の本来の人生!!」
「知ってますよ。ロストチャイルドのトップなんですから、当然です。最終的には記憶を消すので、貴方に言ってもなんの問題もないですね。」
その言葉に、目を輝かせて次の言葉を待つりんご。
「期待なんかしないほうがいいですよ。普通を文字に書いたものなので。なんの変化もなく、普通に暮らして、普通に幕を閉じる、平凡ですね。」
「悪意があるな。言い方が」
「そのままをお伝えしたのみです。
暖かい父母の元で何の不自由もなく、二十歳ごろまですごし、仕事をする平凡な人生ーーーー」
といったところで、りんごの動きが止まる。
突然、今まで見たことないくらい無表情になり、目の光が消えた。
話していたオスカーも途中でそれに気付き、軽く尋ねる。
「ーーーーーどうかしましたか?顔色が良くないようですが。」
「………あ…」
オスカーの声に、ようやく表情が戻るりんご。
「なんでもねえよっ!
つか、平凡中の平凡だな!モブキャラだったってことだろ?!それが本当の歴史なんだよな?」
「その通りです。よくお似合いですよ」
嫌味を言うと、りんごが即座に反論し出す。適当にあしらいながら、オスカーは先程のりんごの様子を思い返していた。
どうしたのでしょう。一瞬、時が止まったような気がしました。
見たこともない顔…
ーーま、気のせいですかね!
アンポンタンにも暗い過去があったとは思いませんし!過去がくらい人間は、もっと洗練されて、こんな能天気すぎるアンポンタンに成長するはずがありません!
第一そんなベタすぎる展開があるわけがない!
みんながみんな漫画のような世界の話ではありませんからね!!
ーーーーピラリラリ~ン♬
と、オスカーのイヤリングから音楽が流れる。
「いけません。もう時間のようですね」
「?どう言う意味だ?」
何が何だか分からないというような顔をすると、クレアが横から言った。
「センパイも、番人と一緒に過去に行って政府と接触することになったんだよ。」
その言葉にうなづきながら、りんごが言う。
「そうか。じゃあここでお別れだな。まゆげとも」
言葉では、名残惜しそうにしているが表情は全く悲しそうではないりんごに、オスカーがいらっとしたのか、顔を顰める。
「何を言っているんですか?貴方も行くんです。そのために連れてきたのですから」
「えっっ?!?!や、でもこれ以上まゆげの世話になるわけにはーーーーぐむっっ?!?!?!ぐグゥッッ」
「言いましたよね?次言ったら容赦はしないと。というか、いいんですか?番人も行くので久々に会えるのですが。」
「やっぱ行くわっっ!!!!現場はどこだっっ?!?!」
すぐに切り替え部屋を出ようとするりんごに、呆れたような目を向ける。
そして、クレアに言った。
「それでは、私は抜けますが貴方はきっちり仕事をしてくださいね。」
と言うと、机上の大量に積み重ねられた書類をクレアに目配せする。
「げげぇっ…はぁ、分かりましたよ…」
「サボってた分も今つけを返す時がきたようですね。
ーーさぁ!行きますよ、アンポンタン!」
颯爽と身を翻し、りんごとともに過去へ行くため、番人の待つ部屋へと向かっていったのであった。
「え、オスカーさん、メシは????」
「その後です」
「横暴だっっ!!!!訴えてやるっっ!!こんな育ち盛りの可愛らしい俺を雑に扱いやがってっっ!!こんなこと許していいはずがねえーーー」
「なんとでも喚きなさい。
ついてこなかったら、さらに遠のきますけどね」
「グッッ」
悪態を吐きながら、渋々オスカーをおうりんご。
その背中を見ながら、
りんごは、心の中で思った。
ーーー本来の人生ならば、父親が死ぬことはなかったのか、と。
その感情は、心の奥底でぐるぐると渦巻き、やがて、表面上は何事もなかったかのように、奥に沈み込んでいったのだった。
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