異世界転生だと思ってたのにただのタイムスリップでさらに歴史が変わってしまいました

桜ふぶき

文字の大きさ
上 下
31 / 41

りんごのもとへ来た男と

しおりを挟む



「りんご、お前赤点な」

担任である山部がりんごに無情にもテストの紙を突きつけ、言い放った。

「なぬっっ?!?!俺、あんなにーー」


「頑張ってねえよなぁ?!?!この前も高松たちと放課後遊びいってたよなぁ?知ってんだぞ、舐めんなよ」 


「ぐああああああっっっ」

山部の言葉に、りんごは床になだれ込んだ。 



「ーーで、いつまでこんな茶番続けてるわけ?」


しばらくしてさゆが、呆れたように冷ややかな目で2人を眺めながら言った。

「いや、これは俺は悪くないぞ。ただこいつに結果を伝えただけだからな。」


「ぐっっっ」


「つーわけで、お前放課後居残りな。あと10分後にも一回くるから準備しとけよ」

と、山部が教室から出ながらりんごに言うと、そのまま職員室の方へ向かっていった。

すると、美知が自分の席でりんごににやにやしながら言った。


「まぁたお前と一緒だな。  

あーあ。今度は別のやつと居残りしたいんだがな」


「こっちのセリフだわ。

つーか、まじかー!帰りてえ。」

そういいながら、わしゃわしゃと髪を撫でくりまわすりんごに、さゆは絡まれないように黙ってカバンを担ぐ。

「せいぜい2人で頑張んなさいよ。えみりとたかしは委員会みたいだし、あたしはもう帰るわね」


「そんなぁ~」

美知が悲しそうにかすれた声でさゆに言うが、それも虚しくさゆは静かに教室を出て行く。


そのまま廊下を通り抜け、階段を一歩ずつ降りて行くさゆ。


まぁ、予想通りね。
結果を聞くまで待っていたけど分かりきってたわ。全く美知ったら最後までーーー


まって。
そういえばさっきりんごの声が聞こえなかったわね。

ーーどこへ


思い出し、パッと振り返るさゆ。
後ろを見た瞬間、ため息が出た。

「あんた…どこ行くつもりなのよ」


後ろには、こそこそとさゆの後をついてきていたりんごがいた。振り返ったさゆに気まずそうな顔でりんごが言う。

「や…!その…っ。

とととトイレだよ!!」


「さっき行ってたじゃない」


「うっっ」

さゆのじとっとした目に、諦めたのか黙ったまま、いそいそと教室へと戻り出し始めた。

「言っとくけど逃げたりしたら張り倒すからね。」


りんごが階段を登り切ったところで、下からさゆの脅し文句が響き渡る。

「しねーよ!
サボろうとしてすいませんでしたぁっっ。戻りますぅー」


くっそぉっっ!いけると思ったんだけどなっっ!!さゆのやつ、勘が良すぎるんだよ!!

今日は早く帰りたかったのに!
逆に今日以外ならいつでもよかったよっ!


りんごが意味のわからない言い訳を並べながら教室へ戻っていると、聞いたことあるような声がした。

「居残りですか。なんというか。頭がたいそうお悪いようですねぇ?」


「あ?」

イラッとして、振り返ると、
そこにはいるはずのない見覚えのある人物が立っていた。

深い緑色の髪の毛に、黒い瞳。
身長はりんごよりも若干高く、ローブと制服を合わせたような服を、きっちり着込んでいる男。顔はそこそこ整ってはいたのだが、上に乗っかっている濃い眉毛のせいで全てが残念であった。


たしかこいつーー
未来でーーロストなんちゃらのなんちゃらだとか…っ!

「ふふふ。覚えてないですかね?ま、無理はないです。居残りとか言う貴方の頭ではーー」


「ああ!まゆげだ!!」


「は?」

まゆげという言葉に、オスカーの眉間が痙攣した。しかし、りんごが思い出したことに感激しているようでまったくオスカーの顔を見ていない。

「久しぶりだから忘れたかと思ったわぁ!よかった!覚えてて!」


「いえーーあの」


「や、忘れるわけねえか!眉毛なんて今どきそんな珍しい名前ねえしな!!」


「ですからーー」


「それで、何のようだ?まゆーーー

ーーーふぐぅっ?!?!」

突然、りんごの頭に鋭いチョップが飛んできた。痛さに頭を抱え、涙目になる。

「ふん。当然の報いです。どうやら貴方は年上に対する礼儀がなっていないようですね」


チョップを飛ばした相手が満足げにりんごを見下ろして言った。

「ーーぐっ!大人げなっっっ!!番人よりも大人げねえんだけど!!」


「はぁ?番人?困りますねぇ。あんな年寄りのじじ様なんかと比べられてしまっては」


「ーーっあんたこそ年上に対する礼儀がなってねえじゃねえか。あいつらお前よりも何百倍も年上だろ?」


「ふん。ここにいないのなら礼儀なんぞ入りません」


理不尽な理論に納得していないりんごから背を向け、オスカーが喋り出す。

「一度しか言わないのでよく聞いてくださいね。
私の名前はオスカー。イアン・オスカー。未来政府、ロストチャイルド管理長です。ああ。こんなこと言っても貴方の小さな脳みそでは到底理解しえませんよね。」


「今バカにーーー」


「ああ!まだ私のターンですーー

私は、過去を調査しに来たと同時に、貴方の見張りでもあります。

ーー単刀直入に言いますと、過去の番人にあったそうですね」

りんごが反論するのを止めるようにオスカーが言った。それと同時にりんごの方へ向き直る。

「誰に会ったんですか?そして、どうでした?思春期真っ只中のじじ様たちは?」


「やけに嬉しそうだな」


「ええ。普段余裕ぶっこいてる方々の弱みを握れそうですから」 


「あ…そう」


性格悪っっっ
だからそんな眉してんだよ


心の中でそう呟くと、諦めたように、言った。

「俺が会ったのは、ひーふーみー…

3人だ。ノアとミシェルとレグルス。でも、レグルスもミシェルもここ最近見てねえな。レグルスの方は学校にも来ないし。
それで?

なんであんたがきたんだ?
あいつらの過去が変わったんなら、あいつらが来た方がよくねえか?」


「ふふん。そういえば、貴方は知らないんでしたね。彼らは現在、未来政府に過去を変えた容疑で捕らえられているんですよ」


「なっっ?!あいつらが?!」

りんごの反応に、オスカーはかなり満足しているようだった。愉快そうに、また続ける。

「彼らのみが唯一、タイムスリップ出来ますしね。変わった時代も、過去の彼らですし。どこからどうみても、怪しいとしか言えないでしょう」


「いや、俺と一緒にリアムは過去に来て、変わってたのに気づいたんだぞ?あいつらなわけーーー」


「ふん。なんとでもほざいてなさい。たしかに、まだ証拠がありません。ですから、私自ら、彼らの容疑を暴きに来たんです。必ず、あの傲慢な方々の鼻をおり、豚箱に入れてやります」


「いい性格してんな。
でも絶対違うと思うけどな」


「貴方の意見なんて、聞いていません。

それで、学校?
レグルス・エドワードがですか?ふぅん。
ま、学校に在籍しているのなら今後も会う機会はいつでもありそうですね」


意地悪そうににたぁと笑うオスカー。

「それでは、ノア・アルフォンスの方は?」


「ああ。あいつは、兄貴の職場で働いてるらしい。」


「では、決まりですね」


「え?何が?」


「決まってるじゃないですか」


オスカーがどこからともなく、キャッシュカードくらいの、青く光るカードを取り出した。

カードには、真ん中に、円柱のような縁取りに、内部が光っている模様があった。
オスカーがりんごを見て言う。

「今からカードを床に置くので、そのお兄様の建物を想像してください。」


「は?え?」


「じゃ、行きますよ」

オスカーがりんごの返事を聞く前に、カードを床に向かって落とした。

「待っーーー」


ピカッと床がりんごたちを囲い、円形に光る。それと同時に、オスカーが叫んだ。

「さあ、今です!

お兄様の顔でもいいので思い浮かべてください!」


「へ?あにき?ーーちょっまって?!?!俺、突然に弱いタイプなんだってえええ!」



ーーーーギュンッ!!



りんごの抗議もあえなく、体に突然ものすごい重力がかかり、そのものすごい重力とともに、とある場所へ投げすてられたのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~

岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。 順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。 そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。 仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。 その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。 勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。 ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。 魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。 そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。 事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。 その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。 追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。 これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~

黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。 ※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...