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休日に兄と買い物に行ったつもりがーー
しおりを挟む「おかしい、絶対なんかあるな」
日曜日、家でりんごが腕を組みながらカイルからもらった通信機と睨めっこをしていた。
何度連絡しようと試みてもうんともすんとも言わない通信機に痺れを切らしていた。
カイルに脅されて泣く泣くパーティに参加することになったのに
伝えることすらできんとはっっっ
あいつらもここ数日姿を見せねえし
本当に何かあったのか?
ベッドに寝転がり、チラッとたかしからもらった招待券を見た瞬間リアムの狂気に満ちた顔が思い浮かび悪寒が走った。
無理無理無理っっ!!!
またあいつと会うことになるとか絶対に無理っっ!!!
俺があのメイドだったらその場でやめとるわっっ
100万くれるって言われても断固拒否っっっっ
どうやったらあんな恐ろしいガキに育つんだよ
もんもんと考えていると、兄の拓哉が部屋に入ってきた。りんごが姿を見て尋ねる。
「兄貴今日休みなのか?」
「そうだよ。今から母さんに頼まれた買い物行くんだが行くか?」
「行く!」
「もうでるから支度しろ」
そう言うなりドカッと床に座り込んであくびをした。眠そうなのが目に見えている。
「寝てねえのかよ、兄貴。お肌に毒だぞ」
「昨日も飲み会だったんだよ、ったく、事件がないからって呑気なもんだよ」
拓哉が壁にもたれかかりながら文句を言う。社会人は大変だなと思うりんごだったが、ふとこの前拓哉と一緒にいたノアを思い出した。それとなく拓哉にきく。
「そういえば、この前一緒にいた人、あのあと兄貴を送ってくれてたんだぜ?母さんが喜んでたよ」
「黒町か。あいつは実質後輩だがな俺は嫌いなタイプなんだよ。女にモテるからってへらへらしやがって、絶対に戦闘が始まったら戦わないで逃げるやつだ。この前も俺のことをからかいやがってーーー」
「ふぅん。大変なんだな」
りんごが服を着替えながら返事をした。ふと、拓哉の言葉を反復する。
「ーーからかう?優しいじゃねえの?」
りんごの思い浮かぶノアは出勤時は優しくてそれ以外は爆弾のような人だった。
からかうなんてことは思い当たらない。
レグルスはあんま性格は変わってなかったけど、ノアは想像がつかねえな。
からかうってどんな人だったんだろ。
この前会った時は無表情だったことしか覚えてねえからな
いやまて、リアムであんだけ違ってたらノアの性格が違うことくらい普通なのか?
どれが本当のノアなんだよっっ
ぐるぐると考えていると、痺れを切らした兄が行くぞと立ち上がった。りんごもあわてて後に続く。
「今日人多いな、日曜だからか」
スーパーは人で混み合っていた。さまざまな人で入り乱れている。とりあえず、母に頼まれたものを買いに向かおうと総菜コーナーへ向かうと、不意に名前を呼ばれた。振り返るとえみりが立っていた。
「りんごじゃーん!」
「えみりーーお前ここの近くだっけ?」
「そうだよ、今日は美知たちがうちに遊びに来てるの。でもお菓子なくなっちゃったからさ。お菓子買おうと思ってさ」
「へえ、ならさゆと美知とかも来てるのか?」
「ううん。美知はめんどいからって、えみりの家で休んでる。さゆならいるよ、今レジに並んでる!アイス買ってるから一緒に食べる?」
りんごが兄を振り返ると、行ってこい、とうなずかれる。そして、鍵を渡され終わったら車の中で待ってろと言う。
鍵を持ってえみりと外に出て人が少ない近くの公園に移動した。その後すぐにさゆが出てきた。出てくるなりりんごをみて驚いていた。えみりが説明する。
「さっきたまたまあったからさ!一緒にアイス食べようと思って」
「そういうこと。別にいいけど、アイスの食べ方くらいは知ってるのよね?」
「バカにすんな、知ってるわそんなの。つか美知えみりんちにいるんだろ?朝苦手だっつってたのによく集合できたな?」
「叩き起こしたのよ」
さゆが済ました顔で暴力的な発言をした。それを聞き呆れた顔でりんごが抗議する。
「お前、暴力にたよるのはおかしいぞ。この前もリアムを呼び捨てにしただけでーーーーぐっ」
「様、つけなさいよ」
「お前だからモテないんだっつーの」
「りんごに言われたくないわよ。てか第一、私そこらへんの男どもはタイプじゃないのよね。もっと知的な大人びた系が好きなの。」
「だからリアム様のこと好きなんだ!たしかに知的で大人だよね」
「そう!だからパーティで会いたいのよ!」
「大人なら担任とかいいんじゃねえの?完璧なおっさんだぜ」
りんごがからかった瞬間、特大パンチが飛んできた。あまりの衝撃にりんごが吹っ飛んだ。
「ゴリラか!お前はっっ」
「護身術よ、このための」
ほらすぐ殴る
ーーん?まてよ、誰かにーーー
カイルだっっ
こいつカイルの嫁とかになったら年中プロレスが始まるんじゃねえのかーーー
そんなことを考えていると、さゆが何かに気づいたのか怪訝な顔をしながらいった。
「ねえ、あそこの茂み、さっき動いたわ」
「え?」
「どーせ風か、野良猫だろ。気にすんなって」
「あんた、震えてるじゃない。」
「ば、、ばば馬鹿野郎!!震えてるわけねーだろ!!」
「見に行ってみようよっ!!」
えみりがそういったかと思うと震えてるりんごをぐいぐい茂みに押しやる。
「てめっっ、見に行きてえなら1人で行けよっ!!俺を巻き込むんじゃねえ!」
「りんごは男なんだから先頭に立つべきだよ」
「不平等だぞっっ世の中男女平等に行くべきだっっ」
そうこうしているうちに、茂みの近くまでやってきた。恐る恐る覗いてみると何もないことに気づく。
「ほらみろっっ、なにもなかったろ?!どーせ風だったんだよ」
「震えてたくせによく言うわ、何もないとわかった瞬間にいばるなんて小さい男ね」
「うるせーーー」
「まって!!!」
さゆとりんごが騒いでいると、突然のえみりが大声をあげる。その声に一瞬飛び上がるりんご。
「ななななんだよっっびっくりしたろーがっっ」
「手がでてる!!ここ!」
手と聞いた瞬間に顔が青ざめていくりんごとは反対に淡々としながらさゆが手が出ている茂みを覗く。りんごが丸まっているとさゆが静かに言った。
「りんご、あんた包帯か湿布買ってきて」
「ななななんでだよっ!もしかしてさだこか?!?!」
ばっと満を辞してさゆのいる方向を振り向く。途端に驚きのあまり声をあげそうになる。
ミ…シェル…?
茂みからさゆが引っ張り出しているのは紛れもなくミシェルだった。何があったのか、怪我をしており血が流れぐったりしている。
そこまでの出血ではないが至るところあざだらけだった。えみりが興味津々にいう。
「真っ白ーー!初めてみたっっ」
「もともと免疫が弱いのよ。このまま太陽に照らされ続けたらーーー救急車を呼ぶよりもえみりの家の方が近いわ」
「俺が担いで行くよ。場所を教えてくれ」
さゆたちが道を指差しながら走る。その後に続いてりんごも駆け出しながら考える。
レグルスの次はミシェルーー
本当に俺が気づかなかっただけでこの街にいたんだーー!
それにしても一体この怪我はどうしたんだ?!あざまで、、
茂みで間違って寝るとかありえるのか?
それとも家族からの虐待か?
その前に、レグルスとはもう会ってんのか?
あーーっっもう!!!
なんか、ややこしくなってきたな
走りながらりんごはため息を漏らしたのであった。
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