異世界転生だと思ってたのにただのタイムスリップでさらに歴史が変わってしまいました

桜ふぶき

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たかしのお家事情

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「たかし、聞いているのか?」

ここは、高松財閥の所有するマンションの一つでたかしが普段使っているところだ。今日初めて父親が顔を見せた。

父親はたかしが小学生の時に母親と離婚しており、幼いたかしは父方に引き取られた。

しかし、父親はたかしのことを跡継ぎとしか見ておらず意思など微塵も汲んでくれない。さらには離婚した母親のことを悪くいう始末であった。
そんな父に嫌気が差したたかしはいくつかあるマンションのうち一つに転がり込んだ。お手伝いさんも雇わず内緒で一人暮らしを始めたのだ。
それがとうとう海外を飛び回っている父親にばれ、今こうしてテーブルに向かい合って座ることになったのである。


最初は当たり障りのない会話から始まったが、ようやく本題に入り一人暮らしを始めたたかしを徹底的に問い詰めた。

「お前は高松財閥の息子なんだぞ?俺の顔に泥を塗るようなことをするんじゃない。
育ちに問題があったんだ、お前は。だいたいあの女が甘やかせるからーー」

「ーーっ。
母さんは悪くない。これは俺の意思だ。」

「お前の意志なんか必要ない。お前は跡継ぎなんだ。たのむから恥をかかせないでくれ。」

父親が大きくため息をついた。たかしは諦めたように下をむく。すると一枚の紙をたかしの前においた。有名企業のパーティの招待状だった。その中でも一際目立った名前が目につく。

「リアム…ドフラス?ーーパリス王国の現大統領の息子のーー?」

「そうだ。頭脳明晰でカリスマ性まである。イギリスの次期大統領とまで言われているほどだ。

ーー私もこんな息子が欲しかったよ、まったく」

最後にトゲのある言い方でたかしを一瞥する。たかしは手が出てしまいそうになるのを必死で抑える。

「このパーティに出席しろ。そしてリアムにどんな手を使ってでも気に入られるんだ。お前は父さんに似て頭は悪くない。下調べをして好きなものからなにから調べ上げろ。
リアムのコネがあれば高松財閥はさらに大きくなれる!!そしたら今回のこともすべてちゃらだ」

「ーーはあ?なんでそんなこと!だいたい、別に許して欲しいとか思ってない」

「行きたくないのなら別にいい。
そのかわりお前は留学に出すからな。」

「なっ?!」

「そもそもせっかくいい高校に入れたのに、それを蹴ってまでなぜ今の中途半端な学校に入った?お前はバカで低俗なやつらに染まってしまっているんだ。お前まであの女のようになることはない。」

「ーーっ!!それはあんたが決めることじゃないだろ!!」

「とりあえずだ!パーティで失敗しなければいいだけの話だ。無事コネができたなら留学の話はなしにする。」

父親が席を立つ。バッグから大量の資料を取り出し、たかしの前に置く。

「これは事前に調べたリアムの資料だ。
よく考えるんだな。失敗すれば今の学校はやめさせて付属の学校に編入させるか留学させる。どっちにしろ、今の生活は続けさせん。これは最後の通告だ。」

たかしに話す隙も与えず、一通り話終わるとドアに手をかける。

「よい結果を期待しているぞ、たかし。お前もバカじゃないだろう?」

ーーバタン

父親がマンションから出て行くとたかしはテーブルを叩きつける。苛立ちで唇を噛み締めた。


いつもそうだ
あの人は俺の話を聞かない。自分に従うように人の弱みを握って脅すんだ。

だから母さんも出て行くように仕向けられたーーー!!!

あの人なんか父親じゃない!!!
いつだって高松財閥のことしか頭にないんだ。俺のことを息子として見てくれたことなんて一度もない!


ーーピラッ

父親が持ってきた招待状が床に落ちる。

留学は行きたくない
ーーなにより、みんなとーー離れたくない

脳裏にりんごやさゆたちの顔が浮かぶ。


席をたって招待状を拾い握り締めた。

やるしかない

まずは徹底的に調べることから始めなくては。




「おは、たかし。」

「くますごくね?どうしたんだよりんご」

学校でりんごが登校してきた。ひどいクマだった。

りんごには絶対バレないようにしないと
こいつ、人一倍お節介だから父親に抗議しに行きそうだ

あれからリアムについて調べたが、どれもネットに載っている情報だった。父がくれた資料も知られていないことが少ない。

隙が全くない。弱みでもあればこっちのものだったのに…

ーーいや、だめだ!それじゃあの人とおんなじだ。
慎重に行かなきゃ。リアムは頭の回転も早い。


一体どうすればーーーー


「たかし、これなに?」

「え?」

気づくとえみりと美知が興味津々に招待状を見ていた。
出ていることにすら気がつかなかった。
慌てて隠すが、手遅れだった。えみりが興奮しながら騒ぐ。

「え?!これイギリスの現大統領の息子のリアム様じゃない?!なんでたかしがこんなの持ってるの?!」

「え?いや、これは」

まずいな、無意識のうちに出してしまうなんて…

りんごが紙に気づき少し驚いたような顔をした。

高松財閥の名前を見つけたかーー?
いや、りんごに限ってそんな天才的なことできるわけない。こいつのバカさは俺がよく知っているからな。

それよりも、えみりと美知、その他もろもろはごまかせても…さゆはーーー

さゆの様子を伺う。

えみりたちと一緒にリアムの名前をみてはしゃいでいる。ホッと胸を撫で下ろした瞬間、一瞬さゆが怪訝な顔をした。たかしに冷や汗が流れる。

バレたかーーー?

しかし、すぐにまた興奮しながら美知たちとはしゃぎ始めた。

美知が笑いながらたかしの肩を叩く。


「つかよく見たらこれ、私ももらってたぜ!お前も行くんだな!」

美知が言った瞬間場が静まり返った。たかしは驚きすぎて声が出ない。
さゆが恐る恐るきく。

「これ、有名企業しか行けないのよ?本当にこれだった?テストでは誤答してもいいけどこれは洒落にならないわよ?」

「バカにすんな!!わかるってば!これだったっつの!なんなら今鞄の中に入れてあんぜ?ーー見せてやるからまってろ」




「ーー本当だわ」

「な?いっただろ?あたしの父さんが警視総監なんだ」
 
「警視総監?!?!」

まっさきに大声を出したのがりんごだった。あまりの声の大きさにたかしたちも驚く。

「お前が五條ーーーたしかに!!五条だな、警視も」

「なんでお前が知ってんだよ。俺ですら知らなかったのに」

「言ってなかったか?俺の親父は刑事だったんだ。ま、美知にも言ってなかったから驚くのも無理はねえな」

「刑事?!」

「だったってどういうこと?今は刑事やめたの?」

驚く美知たちとは反対にさゆが冷静にりんごの言った言葉を聞き返す。
するとりんごが笑いながら明るく言った。

「亡くなったんだ、10年前に。事件に巻き込まれて」

りんごが言った瞬間、場がシンと静まり返った。きいたさゆも気まずそうにしている。

知らなかった。
こいつ、ずっと明るいから順風満帆なんだとばかり思ってた。

俺と会った時もずっと笑ってたしーー


重苦しく黙り込んでいると美知が口を開いた。

「10年前ってことは、王室の即位の時か?」

王室?ーーそういえば10年前にパリスで建国記念日の国を挙げたパーティーがあった。
たしか、ブラッドデビルっていう大量殺人鬼が世に出てきた一番初めの事件だったよな?
日本人の警官も数人派遣されていて、その大半が亡くなったとか。被害は甚大で、わざと手薄の時が狙われたと警察は睨んでる事件。ーーまだ犯人は捕まっておらず全貌は明らかになっていないみたいだが。その事件の関係者だったのかーー


「ああ!そうなるな、俺は小さかったから覚えてねーけど。
つか、それよりも!!!
たかし、これに行くってことは結構金持ちなんじゃね??正直に言えよな」

「や、別にーー」

りんごの過去の話を消化できないでいるとりんごが話を変えた。するとえみりたちも重苦しい雰囲気は一変し、また騒ぎ始めた。

いつもそうだ。重苦しい雰囲気になったとしてもその流れを変える力がある。

幼い頃、俺がいじめられていた時も他クラスだったりんごが俺のために後腐れがないようにと、事を運んでくれた。

ーーそして今も

そんなことを考えていると、えみりがたかしを揺さぶる。

「私たちも連れて行ってよぉ~!同伴おっけいって書いてあるし。それにニ名までって書いてあるから美知と分担すれば行ける!!」

「リアム様にそんなに会いたいのかよ?」

「だって今人気上昇中なんだよ??!行かない手はないでしょ!超絶イケメンだし」

「そうよ!!このレベルは絶対いないわよ?財産も権力もあるし、おまけに次期大統領候補らしいじゃない!」

「玉の輿だよな!!」

女子3人が口々にたかしを納得させようと必死になっている。りんごに助けを求めようと振り返った。

「俺も行く!!!」

「は?!」

予想外の答えに一瞬頭が真っ白になった。りんごなら3人を止めてくれるはずだと思っていたからだ。しかし、それはあっけなく打ちひしがれさらには自分も行くといいだした。これにはたかしも目を疑った。

りんごがあわてて目を泳がせながら続ける。

「社会勉強になるし!!!なりより行かねえと俺の命が危ない!!!カイルーーじゃなくて!!!とりあえず危ない!!!」

「何言ってんだ?お前」

「や!だからそのーー行きたいんだよ!お偉いさんがたがあつまるんだろ?今のうちに人脈とか広げたいだろ」

「あんたじゃ役にただなさそうだけどね」

「うっせーな、せっかくお前らの味方してやってんだから感謝しろよ。レグーーじゃねえや、朝陽も連れて行こうぜ!今いないけどあいつも絶対いくと思うし!」

さゆの一言にりんごが反論する。
その様子を見ながらたかしは焦りを覚えた。父との朝の会話が蘇る。

まずいな、リアムと仲良くならなきゃ行けないのに、これじゃーーー仲良くなるどころか目をつけられそうだ
ここをさりたくはない!

なんとかして打開するための策を考えないとーーー



ーーー招待状の開催日は6月7日、あと二週間後であった。

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