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不穏な空気
しおりを挟む「日本人なんて珍しいな。ここがどこだか、知ってるかな?」
流暢な日本語でりんごに話しかけるが目はりんごを捉えたまま離さない。
あまりの威圧感に体がうごかない。
未来のリアムも主人公オーラバチバチだったがーーー、こいつは恐怖で支配するタイプだ
「も…申し訳ありません!!私のミスで人がいることにも気づかずーー」
メイドが震えながら謝った瞬間、リアムから笑いが消えた。明らかにメイドをみてイライラしているのが伝わってきた。
「そうだよね。お前は本当に役立たなすぎて笑いが出るよ」
リアムが静かにメイドに近づく。恐怖でメイドはその場から動けずガタガタと震えていた。
「人がいることに気づかないなんて、お前の目は見えてないのかな?それともただの飾り?
ーーまあどちらにせよ、ミスするくらいだ。2つも目はいらないみたいだね。罰として今ここで削ぎ落とそうか」
「お許しください…っ」
りんごには何を言っているかはわからなかったが明らかにまずい状況だということはわかった。リアムがメイドの目を開かせる。反対の手にはどこから取り出したのかナイフを持っていた。
「やめろ!!!!」
とっさにメイドをかばう。リアムの顔は先ほどのにこやかな笑みとは違い、今は残虐的な笑みを浮かべていた。
「女の子に手をあげるなんざ男の風上にもおけねえな!!お前に人の心はねえのかよ!!」
「あはは、そんなに声をあらげてどうしたの?僕は罰を与えようとしただけだけど」
「目をえぐろうとすることが、か?!金があるからってなんでもしていいわけじゃねんだぞ!!
このーー親の七光が!!」
とたんに時がとまった。リアムの顔からは余裕そうな表情は消え去り、あっという間に凄い剣幕にかわる。りんごは見た瞬間、全身が思わず震えるほどだった。
「はあ?!?!お前にーー!!!何がわかるわけ?!」
バシッとりんごを勢いよく殴り倒す。その表情からは余裕のない焦りや憤りが感じられた。見たこともないような激しい怒りがりんごに襲いかかる。
「七光じゃない!!父上よりも僕の方が数千倍優秀だよ!あの人なんて眼中にもない!僕は将来、この国のトップに立つべき人間なんだ!あの人たちなんかーーーーーっ」
りんごを締め上げる手が震えていることに気付く。
こいつはーー。
ーーーザッ
「ーー?!」
リアムが後ろを振り返る。
仮面をつけた金髪の男が立っていた。りんごが心の底から安堵し、心の中で叫ぶ。
おせーんだよおおおっっ!!!でも助けに来てくれたのにはもう感激!!!
「だれ?次から次へとーーっ!仮面なんかつけて、仮装パーティーでも開かれるのかな?」
自分のテリトリーをまた侵害されたことに苛立ちを隠せない。
「あはは。面白い冗談ですね。ーーすみません、目を離したすきに小猿がここにたどり着いてしまったみたいで」
小猿ーー?!?!子猫ってゆえよ!!可愛くしろよ!!
つか、帰ったら覚えてろよ!!
リアムがふぅー、とため息をつき仮面の男を見据える。
「悪いけど、こいつはこの僕を侮辱したんだ。返す気はないよ」
瞳孔の開いたリアムをみてりんごが絶望の色に染まる。
ガチだ!!この残虐的な目は、、こいつ、俺を殺す気だ!!
その言葉をきくと、未来のリアムは楽しそうに少しおどけた口調でいう。
「また、同じことを繰り返すおつもりですか?」
「ーーは?」
ーーービュウーーーーっ
途端に体が流されるほどの強風がふき、思わずリアムもりんごを離し手で自身をかばう。
「ーーー!!!」
「ーーきゃあ!!ーーー?!?!
え?!いないーーっ?!」
メイドがりんごと仮面の男がいた場所になにもなくなっていることに気づいた。
オロオロしながら、風で乱れたリアムの髪を整えようとする。その手をバシッと振り払われた。
「触らないでくれる?無能のくせに」
「す…すみませんっ」
「…」
リアムが黙り込み、自分で髪を整え始めた。その様子をみてメイドは顔色を伺いながら立ち尽くしている。
「ふぅん。」
ようやく、口を開いた。そして、にたぁと笑い出す。
「あれが時の番人、か。聞いた通りのようだね。
平和ボケしてるのが伝わってくる。
今のうちにのうのうとしてるがいいさ。
僕の手であいつらを絶望の色に染まらせてあげるその時までーーー
ーー僕は絶対にあいつらと同じ道は辿らない」
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