異世界転生だと思ってたのにただのタイムスリップでさらに歴史が変わってしまいました

桜ふぶき

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過去を守るということ

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「どいて、さもないとお前ごと殺すよ?」

りんごの首に手をかける。リアムの瞳孔が開き、笑っているが殺気がピリピリと伝わってくる。

ーー本気だ、俺ごと殺すつもり…

たらーっと冷や汗が頬をつたう。

ーーーーでも!!!

キッとリアムを睨み返す。

「どかねえ!!人を殺すなんて間違ってる!!」

「ーーーはあ、いい加減にして。

歴史が間違った方向に進んでいたら正すのが僕らの役目なんだよ

ーーたとえ人殺しを犯したとしてもね」



「別の方法を見つければいいだろ?!?人を殺すのがいい方法だとは思わない!!

そんなこと、お前らの親は教えてくれたのかよっっっ?!?!」

「ーーーーっ」

親、と聞くとリアムが一瞬硬直し、急に脱力する。

そしてか細い声で苦しそうに

「あの人が…望んだことなんだよ…っ」

「ーーーーえ?」

リアムが辛そうな苦しそうな泣きそうな、なんとも言えない顔をしたのをみて一瞬頭が真っ白になった。

その隙をとられ、真横に蹴り飛ばされる。

「ーーうぐっ」

シャッーーーーー

リアムの足元に信長であったものが転がる。

「ーーーーあぁ…っ」

助けられなかったーー!!

蹴られた痛みで床に伏せながら唇を噛み締める。


ーーリアムが顔を背けたまま冷たくいう。

「次余計なことしたらその時は容赦しないから。」

「ーーーー」



ーーザッ、とノアとレグルス木の上から降りてくる。

「りんごくん…」 

「ノア、レグルス、骸を埋めるから手伝って。ーー夜が明けてきた。本能寺もそろそろおちる。」

リアムが少し明るくなっている夜空を見上げながらいった。



ーーー信長と従者の亡骸を埋め終わると
回復したりんごがキッと睨みつける。 

その様子をみながらリアムがフッとわらう。

「ようやく痛みが治まった?

ーーほら。いつまでも仏頂面してないでこっちにきなよ」

「………」

しぶしぶリアムたちのところに歩いて行き、盛り上がった二つの山をみる。

ーーっ。守れなかった

後悔と悔しさに襲われ、文句言おうと顔を上げると、3人が手を合わせてお祈りしていた。

「本当はちゃんとしたところに埋葬したいけど、ルールだからね。文句があるならあの世で聞かせてよ」

さっきとはうって違い、切なそうな表情をしていたことにりんごは驚いた。

埋めた山を見ながらリアムがポツリと話す。

「僕らはある人の死の代わりに、時を止めらているんだ」


「ーーえ?」


「僕らにとって本当の両親のように大切な人だった。

ーーーだけど、

自分の命と引き換えに僕たちが時の番人となることを望んだんだ。」

なんの話ーーーと言おうと思ったがリアムの切なそうな顔を見て口を閉じる。


「ーーその人の名前はケニー・ブラウン。

身寄りのなかった僕らに希望を与えてくれた人だった。」

リアムも、ノアもレグルスも、懐かしい思い出を思い出すかのように柔らかい表情になっていた。

「僕らは時をとめられたあの日から。ーーーーケニーが死んでしまったあの日から、過去を守るために、国のために、生きている。人を殺してたのしいわけがないじゃん。

つらかった。人を殺すなんて

ーーーだけど

ケニーが最後に泣きながら言った言葉が、何度も何度も胸の中で響くんだよね。」

静かに目を閉じ、続ける。

「『お前たち、よくきけ。
いいか、俺はいまから死ぬことになる。ーが、追いかけようとは思うな。お前たちは寿命で死んで、あの世でじじいになってから、また会おう。若い命を無駄にするな』ってさ。

ーー過去を守って、未来につなげるのが僕たちの役目だ。

せめて、苦しまないように一瞬で殺すことしかできない。」

リアムの目の中で何かがきらっと、朝日に照らされて光る。

「ーーさっきは悪かったね。

ーーやっぱり連れてくるべきじゃなかった。胸糞悪い悪いものをみせちゃったし。」

「…ーーーいいや」

りんごがさっきのリアムの苦しそうな顔を思い出す。

「話が聞けてよかったよ

人殺しは許せねえけど、あんたたちも誰かのために過去を守ることが使命なんだよな」


ーー遠くで歓喜の声が聞こえてきた。

「本能寺がおちたみたいだね。

ーーそのあと光秀は秀吉に殺されるんだけど」

寂しそうな顔でいう。

「ーー戻ろう。他のやつらが心配しているはずだ。ーー特にミシェルがな」

「ははっ、そうだね」



レグルスとリアムがエレベーターへ向かって歩き出したのをみて、りんごがノアの手を引っ張る。

「俺たちも行こう」

ーーーーバシッ!!!

「え?」

「気安く触らないで。うざい。」

「え?ノアさん?」

恐る恐るノアの顔を覗き込むと見たことないくらい不機嫌な顔をしていた。

「ああ、任務時間が終わったんだな」

レグルスが時計を見ながらいう。

「ど…どゆこと??」

「ノアは勤務中は愛想がいいが勤務時間が終わると、素にもどる。」

「はぇ…?」

「素は愛想もなければ笑顔もない。邪魔をされることがなにより嫌いなんだ。寝ている時起こしたりなんかしてみろ、あっという間にあの世だぞ。」

うそだろ、あんなに優しかったノアさんがっっ?!?!

すると、ノアが鬱陶しそうにいう。

「だいたい、俺は最初から反対だった。こんなガキ邪魔でしかないし。
さっきも俺がリアムだったら即、信長ごと斬り殺してた。」

ギロっと睨まれる。

こっわ、こっわっっ!!!
ミシェルが行きたがらなかったのってこれか?!冗談が通じねえタイプじゃねえか

「ちなみにミシェルはノアを起こしたことが一回だけあったな。
そのとき運悪く近くで布団かぶって寝ていたノアに誰かわからず上に飛び乗ったんだ」

「うわぁ…あいつ馬鹿そうだったもんな」

だから怯えてたのか

「半殺しにしてやった」

ノアが悪びれる様子もなく即答する。

絶対この人の近くで寝ない!!!!
ーーそう、強く心に誓った。

未来に戻ってくると、
カイルの指揮のもと、ミシェルの横でシリウスも書類を書いていた。

「お♪元気にしてたか?」

りんごをみると軽いノリで話しかけてきた。それをみた瞬間、シリウス目掛けて突進する。

「お前っっ俺のことほっぽってナンパしに行ったらしいな!!お前な!!」

シリウスの胸ぐらを掴み上げる。

「おっ落ち着けって♪悪かったよ」

「安心しろ、さっき一髪殴ったから」

カイルがリンゴに伝える。
「俺も殴らせろ」

ギリギリギリギリと拳を突きつけるりんごの横でミシェルがリアムに飛びつく。

「おかえり~!!どうだっーーーうげっ」

ノアをみつけると、リアムの影に隠れた。

「まだ怖がってんのかよ、だいぶ昔のことじゃねえか」
カイルが様子を見て呆れる。

「いや、おれの体に染み込んだ心の傷は消えないから。」

「のびてましたもんねー、殴られて」

「いうなよっっ!!思い出すだろ!」
ミシェルが頭を抱えて震える。

「くだらない。もう寝る。」

ノアが部屋を後にするとミシェルが額を拭って言った。

「ようやくいったか」


「俺も寝よっかな♪」

立ち上がって部屋に行こうとするシリウスにバァン!!と拳が頬をかする。

「どこいこうとしてんだ?ああ?
あんた、まだおわってねえけどなぁ?」

冷静に、拳が壁にめり込んでいるのを確認するシリウス。

「なわけ♪」

抵抗は命の危険があると悟ったのか、しぶしぶ机に向かった。

「本当に、退屈することがないな。このメンツは」

レグルスがハハッと楽しそうにわらう。
その様子をみてりんごは、本当に仲良いんだな、と羨ましく思った。

リアムがこっちおいで、とりんごを連れて客室に案内する。1人で寝るには十分な広さの部屋だった。風呂、トイレも部屋に完備されている。

「疲れたでしょ?今日はここでねて。明日帰れるからそれまでの間好きに使っていいし。」

「あざす」

リアムが、おやすみ、と部屋を出ようとする。

「なあ!」

「ん?なに?」

「俺が戻る時、お前らの記憶は残ってんのか?」

「残らないよ、ここへきたことも全部ね」

「そっか」

わかってたけど、こたえるな、それは

下を向いたりんごをみてリアムがニヤリと笑って

「帰りたくないならここにいていいけど?そのかわり、恋愛は禁止で一生独身のままになるけど、それでいいならーーーー」

「いや!!かえるわ!!わるいな!!」

「心変わり早すぎでしょ」

リアムが吹き出す。

じゃあね、なにかあったらよんで。と部屋を出て行った。

りんごはベッドに入ると疲れていたせいか何も考えることなく眠りにおちた。

ーーーリアムがリビングに戻ってくる。

シリウスがフッと笑いながらリアムに言った。

「あのガキ、一番最初にきたロストチャイルドだよな?あの時は赤ん坊だったのに大きくなったもんだな♪みちがえたぜ」

「僕たちのこと覚えてないみたいでしたねー、残念ですー」

「ははっ、記憶を消してるんだから覚えてるわけないでしょ」 

リアムが思い出しながら笑う。

「あの頃は、僕たち仲が最悪だったよね」

「周りからも目の敵にされてたからな。化け物だって」

懐かしそうに思いを馳せていたシリウスだったが、続けてポツリという。

「ーーーまた、消すんだよな」

「そうだね」

「次会う時はきっとじいさんにでもなっているだろう」

レグルスが明るく言った。

「ははったしかに♪」

「しんみりしちゃったね。そろそろ寝よう、消灯時間すぎてるし」

リアムが時計を見ながらいう。

「ねる!!やあっと終わったぁぁ!リアム一緒に寝よ!!」

「寝ない」

「ちぇっ」

明日も2人とも終わるまでやんだからな、とカイルに焼きを入れられているのを横目にリアムがある瓶を手に取る。

「ケニー…」
ぼそっとつぶやく。

「寝ないんですかー?」

振り向くとライトがにっこり笑いながら見ていた。

「寝るよ、てかその顔やめてくれる?気色悪いんだけど」

「失礼なー、生まれた時からこの顔ですよー?」

「うっざ」

「ーー寂しかったら昔みたいに慰めてあげますよー?僕の大切な弟ですから」

「悪いけどそんな日二度とこないよ。てかお兄さん、小さいから僕の頭まで手届かないでしょ?」

「うわぁ、ムカつきましたー。今の言葉仕返しするまで絶対忘れませんからね。

やっぱりリアムとは相入れないみたいですー」

こっちのセリフ、と笑いながらリビングを後にした。


残された部屋には、キラキラと、瓶の中で緑色の光の粒子だけが美しく、煌めいていたのだった。
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