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第十四話 別れ。
しおりを挟む「もう、好きなだけ泣いていいぞ」
幸也が、あたしの肩に手を置いて言った。
「う…うええん!!!」
あたしは、その瞬間崩れ落ちて、大声をだして泣いた。
本当に、哀しくて、悲しくて、ピアスを握りしめて、泣き続けた。幸也も水無瀬も、泣いてるようで、嗚咽が聞こえて来る。
夜空に、あたしたちの泣き声だけが虚しく響き渡った。
しばらくして、水無瀬が、瓶を開けるよう言った。
あたしは、ピアスを握りしめて、瓶に手をかける。
その瞬間、あたしたちは意識を失った。
おれは、未来に戻ってきた。
かおりちゃんがくれたイヤリングをつけて。
ユリウスと、リアムが涙でぐしゃぐしゃのおれをみるなり、優しく、背中をさすってくれた。
「クーデター軍に、丸腰で立ち向かったそうだな。」
ユリウスが言った。
「普段のお前なら、考えられん勇気だ。
よく頑張った。もう休め」
リアムも、笑って、言った。
「ヘタレにしては、よく頑張ったじゃん?
傷を見てあげるから、来なよ」
「リアム…っ」
普段そんなことを、言わないリアムが、おれを心配して言ってくれたことが嬉しくて、おれはリアムに抱きつく。すぐに、かわされたけど、蹴ってこないだけまし。
「まぁ、秘密を外部にベラベラ喋ったことは、あとで罰を下すけど」
「う」
おれは、唸った。
でもすぐに、笑って言う。
「話したいことが、いっぱいある」
ーーそう言っておれとリアムは、その部屋を後にした。
ユリウスが、1人、部屋に残って、過去の様子をモニターで見る。
未来政府の人たちが、復旧作業を、行っていた。同時に、周りの人間の記憶消去も。
その真ん中に、かおりと、幸也が意識を失った状態で、倒れている。
ユリウスは、ポソっと零した。
「ありがとう。
ーーミシェルが成長できたのは、君たちのおかげだ。感謝している」
そう言うと、向こうでユリウスを呼ぶリアムの声がした。
ユリウスは、静かにモニターの電源を消す。
と、同時に、その横の机にあった砂時計も、砂が落ち切った。
「無事に終わった。」
砂時計を見て、満足げにユリウスが笑うと、急いで部屋を出て行く。
ーー時の流れは、止められない。
そう。これは、未来を生きる時の番人の物語である。
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