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第十二話 リング。
しおりを挟む「何が起こってるの?!これは」
かおりが、泣きそうな顔で言う。
「ホントに、どうしたってのよ?!」
かおりの目の前で、数人のいかつい男たちが、女性店員を人質にとって、他の客を威嚇していた。
みんなローブのような、奇抜な格好で、へんな棒状の武器を持ってる。鎌を振り回して、店のマネキンを倒している人もいた。
店は、電気が途切れたのか、点滅して、床にはガラスが飛び散っており、悲惨な状態だった。この世の終末みたいだった。
「おれのせいだ…」
マクが、スマホを見ながら、震える声で言った。
「何度も連絡が来てたのに…っ!
おれがーー」
どうすればいい?!
おれは、今ーーーリングがーーー
マクが、腕のリングを見て、唇を噛みしめた。マクが連絡を取ろうとするも、通信機はびくともしない。結界のせいなのは、明白だった。
「おい!!!そこ、うるせえぞっっ!!両手をあげて、膝をつけ!!!」
一番ガタイのいい赤髪の男が、マクに近づいてきた。
と、そこへ幸也が合流する。
「なんだよ…っこれっ」
幸也は、あまりの光景に目を見張った。
「お前も、座れ!
下手な真似をすれば、命はねえぞ!!」
男との体格の差を目の当たりにすると、幸也は黙って両手を上げ、その場に座る。
「懸命な判断だ」
赤髪の男がニヤリと笑う。
幸也は、周りの状況を冷静に確認する。
全部で、6人……
それぞれ、見たことないような武器を持ってる
特に、店員を抑えてる男がヤバそうだ。
あいつは、銃を持ってる!あいつから、何とかしないと!
すると、マクが立ち上がって、叫んだ。
「その人を離して!!」
「おい!バカか!変に興奮さすなーーー」
幸也が、叫ぶのと同時に、赤髪の男が、マクのブカブカのパーカーを掴み上げる。
「聞こえなかったか?クソガキ
座れと言ったんだ。」
「ーーっ!!離してよ!!」
マクがいい終わらぬうちに、赤髪の男がマクを、ありったけの力で、床に叩きつけた。
「うっっ?!?!」
マクの目に、閃光が飛び散る。
そして、そのまま激しくリバウンドすると、壁に転がっていった。
「マク!!!」
かおりが、叫んだ。
すると、赤髪の男が、かおりをみて、薄ら笑いを浮かべる。
「上玉がいるじゃねえか」
そう言うと、かおりの首を腕で、ロックし、持ち上げた。
「はなーーー」
「まって!!」
かおりと幸也が、叫ぶよりも先に、マクが叫んだ。フラフラしながら、立ち上がる。
「その子を離せ…っ!!レオナルド・ローラン…っ!!」
かおりは、何とかして腕を振り払おうともがくが、びくともしない。
幸也は、マクが名前を言ったことに驚いていた。
なぜ、こいつの名前を知ってるんだ?
「ほぅ?俺の名前を知ってるのか?ガキ」
レオナルドと呼ばれた赤髪の男が、顎をさすりながら、足元もおぼつかないマクを嘲笑う。
「立ってるのも、キツそうだな?
ーーそれで、どうして、俺の名前を知ってんのか、聞かせてもらおう」
マクに興味が湧いたようで、レオナルドが、かおりを雑に投げ捨てる。
それを見て、マクは一瞬安堵し、レオナルドをキッと睨みつけて、言った。
「知ってるよ!おれは、未来政府、最高特殊部隊ーー時の番人だから、知ってるんだ」
かおりと幸也は、その言葉に、目を丸くする。
時の番人なんて、マクの口から出まかせだと思ってたから。
時の番人、と聞くと、男たちは、一斉に大笑いした。
「お前が、時の番人だと?」
リーダー格の長髪の男が、マクを見下ろしながら笑う。
当たり前だ。マクとその男は身長差が、20センチほどあった。まさに、ライオンとウサギだ。
「口から出まかせも大概にしろ。
奴らは、異次元の能力を使う。お前は、ただの人間だろうが」
その言葉に、マクはわざと挑発するように言った。
「使う必要がないんだよ!
ーーお前らが、弱いから」
長髪の男の眉間が痙攣した途端に、マクの腹に鋭い痛みが走る。殴られたのだと気づく暇もなく、そのまま、マクは壁に打ち付けられた。
ズルリと音を立てて、床に倒れ込む。
「止めろ!!!」
幸也が、あまりの光景に見てられなくなって、リーダー格の男に飛びかかった。
しかし、ひらりとかわされ、あっけなく、壁に蹴り飛ばされる。
「や…やめてよ…っっ!!もうやめて!!」
かおりが、とうとう泣き出した。
「言うこと聞くから、もう危害を加えないで!!」
なんで?なんで、こんなことになったの?
あたしが、この店に入ろうなんて言っちゃったから?
それとも、あたしが告白を躊躇ったから?
もういや!!もうやめて…っ!!
マクが……
「おい、ガキ。
俺たちが弱いから、とかほざきやがったな?」
レオナルドが、倒れてるマクの髪を引っ張って顔を持ち上げる。
「その割には、苦労してるみたいだが?
ーーもいっぺん言ってみやがれ」
その言葉に、マクはゲホッと血を吐くと、レオナルドを見据えて、言った。
「この、卑怯者!!結界を張ったのだって、外にいるリアムに気づかれないようにしたんだろ!
何度だって言ってやるよ!この臆病ーーーぐっっ?!?!」
レオナルドが、体ごとサッカーボールのように蹴り上げたのだ。マクが、無惨に反対側のかおりの前に転がる。
おれの、意識が遠のきそうになる中、かおりちゃんが泣きながらおれの手を握った。
声にならない声で、かおりちゃんが叫ぶ。
「誰か、助けて…っ!!」
ピカァッッ!!
かおりが、そう叫んだ瞬間だった。
マクのピンクのリングが、溶け出した。
「え」
あたしも、マクも驚いて目を見張った。
あたしたち以外に気付いてる人はいなくて、そのまま全て溶け落ちていった。
マクの顔は本当に、酷いくらいけがだらけだった。
口元から血が垂れてる。
マクは、腕のリングがなくなったのを確認すると、力を少し入れた。
すると、顔に、ヒビのようなものが入って目の中に、変な紋章が浮かび上がった。あたしは、驚いたけど、綺麗だったから、そのまま黙って見つめてた。
マクは、あたしに笑って言った。
「かおりちゃん、ありがとう。
もう少し、待っててーー」
そう言うと、マクは上体を起こす。
なんか、別人みたいだーー
「おい、さっさとここにいる人間を縛り上げて未来にズラかるぞ!」
長髪の男が、他の男たちに言った。
ふと、マクが立ってこっちに歩いてくるのに気づく。
「小僧、まだ立ち上がるかーー」
男の言葉が、そこで止まる。
マクの体の周りに、イナズマみたいなものが、バチバチと派手に音を立てて、散っていたのだ。それを見て、男が血相を変えて、叫ぶ。
「お前ーーーまさか本当に?!?!」
「おれは、未来政府、最高特殊部隊ーーー時の番人。
ミシェル・ローズブレイド。さっきから、何度も言ってる」
マクーーいや、ミシェルが長髪の男を睨みつけながら、叫ぶ。
「数々の犯罪ーー今からお前たちを、拘束し、強制的に未来に送り届ける!」
その瞬間、バチバチバチィッッ!!とイナズマが威力を増した。
男たちが、逃げようとする。
『跪け!!』
ミシェルがそう叫ぶと、男たちの体が勝手に床に引き寄せられるように、倒れだした。ミシェルの目が、ギラっと光っているのが、見える。男たちは、それに逆らえず、身動きができないようだった。
俺、松本 幸也は、その様子に、ただただ突っ立ってた。
現実とは、思えない光景に、昼に食った飯が出てきそうだった。
時の番人ーーー
こいつは、正しかった。
本当にーー未来からきたんだ
雷という光に包まれたマクが、今度は結界とか言うやつを内側から壊し始めた。
「ーーギギっっ!!!」
マクの顔のひび割れがさらに広がっていく。それに比例して、周りのイナズマも大きくなった。
メキメキメキィッッ!!と派手な音を立てて、結界が壊れ出した。いや、壊れ出したんだと思う。
途端に、外の声が聞こえてきた。
こちらの異変に気づいて、おのおの騒ぎ出してた。
ようやく、終わったんだーーー
俺は、その場にへたり込んだ。
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