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第六話 助けに。
しおりを挟むーーあたしは、昨日、体育の後からマクと話さなかった。
他の女とヘラヘラしてるマクにムカついたのもあるけど、一番は怖かったからだ。体育の後、ゆりあやほかの女と、喋ってるとき、本当に楽しそうで、あたしが去ったのにすら、気付いてなかった。最初は、ムカついてたけど、もしかしたら、もうマクはあたしを必要としてないのかもしれないって言う不安の闇が、あたしを包み込んだの。
結局、あたしは、マクにお払い箱だって、言われるのが怖くて、嫌われたくなくて、その後、昨日マクが話しかけようとしてても、それを避け続けた。
水無瀬や幸也とも、マクが何言ってるか怖くて話せなかった。
でも、幸也の言う通り、あたしがウカウカしてるうちに、本当にマクが取られてしまうかもしれない。
今日こそは、仲直りをしなきゃと思って学校に早めに来て見たけど、マクはまだ来てなかった。
「なによ…あたしはこんなに悩んでるって言うのに」
しばらくして、みんなが登校してきた。
それでも、マクは来なかった。いつもはこの時間に来るのに。
マクは学校が大好きだ。
初めてきた日も、制服や授業に目を輝かせてたし。
休むはずはないよね。
と思ってたけど……
あと1分しかないわよ?!
もしかして、本当に来ないつもり?!
「ねぇ、湊崎さん」
イライラしていると、ゆりあがあたしに聞いてきた。
「マクくんから何か聞いてる?休むとか」
「聞いてない……けど」
あたしが言うと、ゆりあは安堵したような顔でわざわざ言ってきた。
「そうなの……。貴方に言っていないなら来るのよね。
だって、今日はチケットを渡す日だし」
そう言うと、ゆりあはうっとりした顔になった。
なに?自慢?知らないわよ!
てか、マウントでも取ってるつもり?
ムカつくわね
ーーチャイムが鳴り始めた。
みんなが席につく。諦めかけていたその時だった。
ーーガラッ
マクがきた!遅いわよ!ホントに
でもマクの顔を見た瞬間、あたしは言葉を飲み込んだ。
マクの顔はアザだらけだったのだ。
口元には、血が滲んでるのが見える。
顔は、いつになく沈んでた。
何があったの?
そう聞きたかったけど、喧嘩してるあたしが聞けるはずもなく、そのままマクは何も言わずに、席についた。
あたしの隣を素通りして。
ーーズキン
いつもだったら、マクは微笑んでくれるのに……
あたしは、あたしの中の心が、少しだけ砕けたように思った。
あたしは、本当にお払い箱になってしまったのかも知れない……
ホームルームが終わると、すぐにゆりあがマクの方へ近づいていった。
「どうしたの?マクくん、そのあざ」
ゆりあが密のように甘ったるい声で聞くと、あたしのすぐ隣で、マクの声がする。
「こけちゃったんだ。ーー気にしないで」
気にするわよ!どうやってこけたら、そんなあざができるのよ!バカじゃないの?!
どう考えても殴られてるじゃない!!
と今すぐにでも言いたかったが、全部心の中で叫ぶあたし。謝れば済む話なのに、ゆりあたちに見られてると思うと、へんなプライドが邪魔して、言えなかった。
はぁ。
あたしはため息をつく。
席は隣で、距離はこんなに近いはずなのに、なんで遠くかんじるのよ!
ていうか、ゆりあのやつ!!もう少しはなれなさいよね!!ベタベタ触ってんじゃないわよ!!
あたしのマクよ?!
そんなこと言えるはずもなく、あたしは普段しない読書をかましてた。必死に本に集中しようとするけど、マクが気になって、何も頭に入らない。
どこでそんなアザを、こさえてきたのよ!
「心配してくれてありがとう」
マクが、言った。
「湿布もらって来るから、気にしないで」
そう言うと、隣でガタッと立ち上がった音がした。
ゆりあは、マクの腕を掴んでいう。
「私も行くわ。心配だもの」
きっと、上目遣いで言っちゃってるんでしょうね
つくづく、ムカつく!
やっぱり、あたしがーーー
そう思って、またあたしは言葉を飲み込んだ。
行けるはずないか。
だって、喧嘩してるんだもん
ーーいや、マクに嫌われてしまったのかな……
「大丈夫。1人で行けるから」
いつになく、マクの声が沈んでる気がした。
てか、教室に入ってきた時から、暗かった。
絶対に、来る前に何かあったんだわ……
マクはゆりあが、何か言ってるのも聞かないで、そのまま教室を出ていったみたいだ。
ーーどうしちゃったの?本当に。
ゆりあが、悔しそうに唇を噛んでる。
でも、まぁ言い様よ
マクが出ていった後、しばらくして男子が数人教室から出て行く。
あたしが首を傾げていると、頭の上で幸也の声がした。
「めんどくせぇことになったな」
あたしは、何が何だか分からず幸也に尋ねる。
「どういうこと?」
「男子にまで目をつけられたんだよ」
水無瀬が頭をかきながら言った。
「ゆりあちゃんが大々的に絡んできたから」
あたしは、その一言で全てを理解する。
ゆりあに好意を持ってるやつが、マクに腹いせをしてるのね。情けない!自分の力でおとしなさいよ!
てか、マクも抵抗しなさい!あのバカ!!
そう考えながら、またマクが殴られる、と思った瞬間、無我夢中であたしは教室を出て、マクの後を全力で追ったのだった。
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