未来を繋ぐキンモクセイ

桜ふぶき

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第五話 すれ違い。

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「おい、野亜池ぃ」

おれが振り返ると、蹴った本人ーー翠川 真が上からにやにやしながら、おれを見下ろしていた。
その周りにも数人いて、その数人もおれを笑って見下ろしている。

なんか、嫌な感じだ

すると、翠川が、床に座ったままの、おれの胸ぐらを掴み上げた。

「てめえ、調子に乗ってんじゃねえぞ?黙って見てたら!ゆりあちゃんにまで、手を出しやがって」

その一言で、なぜおれが倒かされたのか理解する。

「ご……ごめんなさい」

おれは慌てて謝る。
みなせの言った通りだ。
クラスメートまで敵に回しちゃった…

「今までは、多めに見てやってたが、ゆりあちゃんにまで、手を出したとなると話は別だ。女にヘラヘラしてんじゃねえぞ
たかが少し顔が良いだけで」

「う…ごめーー」

「謝れば済むと思ってんのか?
なめやがって!!!今すぐ手を引けよ!!」

「ゔぐっ!?!」

翠川の声と共に、鈍い痛みがおれの頬に走る。懐かしい血の味が、口の中に広がった。
殴られるなんて、いつぶりだろ…

「そういえば」

翠川が、せせら笑ったように言う。

「湊崎も愛想を尽かしたみたいだな?昨日、お前と目を合わそうとしてなかったの、見たぜ?俺」

「!」

おれは言葉に詰まる。それは、殴られるよりも辛かった。
ドーンと胸が重くなった感じ。

他の数名も、翠川の言葉に乗じて、口々に言い合う。

「ホント大変だよなぁ?こいつの嘘っぱちに付き合わされて、その度に尻拭いとは。」

「う……うそじゃーーー」

「寒いウソ言ってるって、まだ自分で気づいてねえのか?周りは可哀想なお前に、合わせてやってんだよ!」

「気付いてねえとか、ウケる」

周りの男子が笑った。

その言葉に、おれはさっきのユリウスの発言が浮かんだ。

噴火する前から、ずっと理由を言ってるって
もしかしたらーー

このこと?
おれが、ウソをついてるって思われてたのかな?
たしかに、未来なんて信じられる訳ないし、ゆきやもそれでおれをからかってーーーかおりちゃんが止めてくれてたーー

おれに合わせてくれてたの?

そう思うと、おれはかおりちゃんに対して、すごい重さで罪悪感が俺を襲う。
でも、同時に、おれの中の1番の不安の種が、頭をもたげた。

ーーもしかして、おれ……かおりちゃんから、愛想尽かされちゃった?

翠川に数回殴られたあと、やっと解放されたおれは、教室へ向かう。

今どんな顔か分からなかったけど、血が滲んでるから、腫れてたんだと思う。でも、おれは何もする気になれなくて、気が重くて、罪悪感でいっぱいで、そのまま教室に入っていったんだ。
みんなギョッとした顔で、おれを見てたけど、おれは何も言わないで自分の席についた。

入った途端に、チャイムがなったことは、せめてもの救いだったかもしれない。

ゆきやもみなせも、心配そうにこっちを見てくれた。
かおりちゃんの顔は、怖くて見てない。

愛想尽かされるって、知るのが怖くて、おれの心が完全に、現実を見るのを拒否してたからだ。

隣の席のかおりちゃん……
あれ?隣ってこんなに、遠かったかな?

いつもなら、かおりちゃんは絶対におれが来たら何か言ってくれるのに、昨日も今日も、何も言ってこなかった。

おれは、改めて思い知った。

おれは……本当に嫌われちゃったんだーーー

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