周変軌道のプラネトロイド

さとう たなか

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スーパーを後にし、自宅に帰ろうと車を走らせるスイ。
後部座席で買い物袋を大事そうに膝に載せていたハルが何か思い出したのか、「あ!」と声を出す。

「なんだハル」

運転していたスイがバックミラー越しにハルを見る。

「シャーペンとノート、新しいの、」

と、申し訳なさそうに言うハル。

「もうないの?」とお隣さん。

「うん」

「コンビニで買ってこうよ」

運転するスイにお隣さんが言う。

「高いんだよなあ、コンビニ」

顔を歪ませたスイが頬を掻く。

「ハルちゃんさ、この前買った教科書の問題全部やったの?」

「うん」

「スイ、真面目にハルちゃん勉強してるよ?君の言いつけ守ってさ」

スイはやれやれと言った表情で「わかったよ、」と言いハンドルをきる。
りんご畑が広がる道路をしばらく走り、抜けた先に田んぼ畑を埋め立てて作られた比較的きれいなコンビニが姿を表した。
店内の文房具の置かれた棚の前にしゃがみ込み3種類のノートを見比べるハル。買い物かごを持ったお隣さんがそれを不思議そうに様子を見る。

「迷ってるの?」

「青色のこっち、かっこいいけど、いつも使ってるのはこっちなの」

片手には青色の凝ったデザインのされたノート。もう片方にはシンプルなデザインのノート。ハルはぞれぞれをお隣さんに向けて掲げ説明する。

「ふーん、」

さほど興味なさそうにうなずくお隣さんにハルは口を尖らせ、「ノート、かっこいいのがいい」とこだわりを言った。
スイは雑誌コーナーの横に幅狭く置かれた本棚から、高校生向けの問題集を手に取って見ていた。周辺に本屋さんが無いためか、コンビニには珍しく本が充実していた。

「スイ、決まった」

後ろからお隣さんが声をかける。

「ああ、」

と返事を返すスイ。
お隣さんがレジにかごを置くと、スイも持っていた問題集とレジ前に置かれていたお菓子をひと袋かごに入れる。
レジの店員がバーコードを読み取っていくと、合計の表示が3660円になった。

「え、高くね?」

思わず声を出したスイがカゴから出された商品に目をやると、眉間にしわを寄せた。
レジ袋を片手に持ったスイが車に戻り運転席に座る。
先に戻って後部座席に座っていたハルにノートとシャープペン、問題集とお菓子が入った袋を渡す。
予想していたより小さい袋を見たお隣さんが首をかしげる。

「あれ?俺の買ったエロ本たちは?」

「戻した」

切り捨てるようにスイは言う。

「うっそ」

お隣さんの驚愕した声を無視してスイは車のエンジンをつけた。
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