3 / 13
1−3
しおりを挟む首を失ったお隣さんの胴体が、落ちたコンタクトを探すように両手で地面に触れている。
「こっち、もうちょい左、」と玄関前に外向きに首を下にして置かれたお隣さんの頭部が声を出して誘導する。
上記のとおり、お隣さんは人間ではない。
冷凍庫が寝床の、暑さが苦手な宇宙人である。
地球上で生活しやすいようにとスイと全く同じ姿をしている彼は、体の9割が氷で出来ているため、長時間熱い所にいなければ基本何されても死ぬことはない。
手探りでやっと頭部を見つけた胴体は頭部を抱え、ヘルメットをかぶるようにしてもとの首の位置に戻す。
玄関で靴ひもを結ぶハル。気持ち大きめのダッフルコートと首にマフラーを下げている。
「ハル」
後部座席を片付けていたスイがハルの前に駆け寄る。
ハルは顔を上げる。
「首が開いてるぞ」
スイはしゃがみ「それじゃあ風邪ひくだろ」とハルの首の周りにくたくたにまかれたマフラーをほどき、襟元を整えてやる。
「寒くないか?」
と、ダッフルコートの留め木を閉じ、前を締めてやるスイ。
「うん」と頷くハル。
「よし」
ハルの頭をくしゃくしゃ撫でながら立つスイ、に続いてハルも立ち上がる。玄関に出で、鍵を締めるスイの手元を見つめるハル。その二人の様子をいつの間にか助手席に乗っていたお隣さんが微笑ましそうに眺める。
「にやにやすんな」
それに気づいたスイはお隣さんを小突き、運転席に乗る。すると車内のエアコンから冷たい風がやってくる。思い当たる節があるのか助手席のお隣さんをキッと睨みつけた。
「お前、また、冷房にしやがって、今日マイナスいくんだぞ」
怒るスイに注意されたお隣さん。「えー」どうしてと眉をしかめる。
「俺氷と小惑星でできてるんだから、冬に暖房は勘弁してって」
「地球に住んでんだから我慢しろよ」
スイは暖房に切り替える。
ハルは後部座席の運転席側に座り、シートベルトを締める。スイはバックミラー越しにそれを確認すると車のエンジンをかける。
「安全運転でおねがいしまーす」
そんなお隣さんの言葉を無視しスイはアクセルを踏み、数メートルの砂利道を抜け、
道路へと車をゆっくり走らせた。
対抗車線との間にきっちりオレンジ色の線が書かれている整備された道路とは違ってスイの車が走る山村の旧道路には白線も何もない。車もほとんど通らないので、堂々と真ん中の道を走らせることができ時短にもなる。が、整備された道路とは違って、老人たちの予期せぬの斜め横断が多いため、その点では注意しなければならない。
さっそく横断してきた山村の老人に三人とも車内から会釈をし、横断させたあと、スイは再びゆっくりアクセルを踏む。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
嘔吐依存
()
BL
⚠️
・嘔吐表現あり
・リョナあり
・汚い
ー何でもOKな方、ご覧ください。
小説初作成なのでクオリティが低いです。
おかしな点があるかもしれませんが温かい目で見逃してください。ー
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
嫌われ者の僕が学園を去る話
おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。
一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。
最終的にはハピエンの予定です。
Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。
↓↓↓
微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。
設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。
不定期更新です。(目標週1)
勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる