村人A

miya

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第一章 芽生え

第一話 1人のマクベス

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「はぁ」
私は思わず感嘆の息を漏らした
今、私の目線は、体育館のステージの上に釘付けになっている

「綺麗だ」

自然とでた言葉だった

ふと気づいたように、周りを見渡す
どうやら周りには聞こえてなかったみたいだ

『良かった』

聞かれてたら恥ずかしい、、、

「「「失せろ!!!」」」

その声は体育館中に響き渡った

ガタッ
体が思わず、ビクッとなってしまった

私はその声が聞こえた方向へ目線を向けた

言い忘れていたが、ステージ上では、地元の高校生による演劇が行われている

演劇の題材は「マクベス」
よく知らないがシェイクスピアの四大悲劇の1つらしい

毎年行われる「文化を知ろう」と言うイベントで、今年は演劇になったらしい

体育館の窓には暗幕がかけられ、ステージ上だけ明るくライトが当てられている

さっきの声は、主人公マクベスが、幻影に纏われその幻影を追い払おうとする声だった

ゾワっとした
こんなに感情の篭った声聞いたことない

見ているだけなのに、自分までその状況に立たされてるような気がしてくる 

それに、私をここまで夢中にさせる理由が1つあるのだ
それは、主人公マクベスを演じてるのは女性であること

マクベスは役柄を見るに男であろう
そうでないとおかしいくらいに、その人の演技は迫力があり、凛々しいのだ
その人は男役を演じてるのだが、とても綺麗だった
その人自身だけじゃなく、声が、表情が、全てが綺麗だった

私はその人の事を心底すごいと思った
輝かしいと思った
綺麗だと思った
そして、羨ましいと思った、、、

あの人には演劇の才能がある
演劇について何も知らない私にここまで感動させているのだから


私の今までの人生は普通という言葉が1番当てはまる日々だった
やりたい事もなくて、一生懸命取り組んだ事もなかったし、習い事をやっても長くは続かない
好きな人もできた事ないし、彼氏なんて到底できるとは思わない
勉強だけは少し自信がある
やる事なくて勉強だけはやってきたから
ただ、勉強ができるだ必ずそんな人いっぱいいる

そんな何もない自分がずっと嫌いだった
死にたいと思った時もあった

ずっと何か生きる目的となる何かを探していたんだ、、、

「演劇か、、、」

ありがとうございました!と演劇が終わった高校生達が挨拶をしている中、何か私の心に光が差す予感がした





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