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疑り深い奴

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 さすがに私が全ての元凶などとは夢にも思っていないようでマーカスは私を情報源としてはもう価値がないと判断したようだ。

「とは言え何かお前は怪しいな…王女の時も王子の時もそばにお前がいて生存した。ほんとはお前が…」

 ぬぐぐぐぐ…まだ疑うか…こいつは…病的な疑り深さね。だったら…

「そうね…案外私が元凶かもしれませんわね。なんならそのあなたが疑う私が奇跡の力で今すぐあなたに神罰を与えてもらえるよう神様にお祈りしてあげますわ。」

 正直こんな態度するのは死ぬほど怖いが挑発的に言ってみる。冷静な思考を怒りで揺さぶってやるわ。

「ふん…奇跡の力か…そんなものがあれば私もこんな…いやなんでもない…少し疑り深くなりすぎてたな…」

 やったぁ…思考の方向を変えれた!

「だが…」

 でも…喜んでばかりもいられない。わかっていた事とは言え正直もう逃げ出したい。気を失ってしまいたい。だけど気合を入れていかなきゃいけない。背後のマーカスから私にでも分かるほど…敵意が膨れ上がっていく。そして、私を逃がさないようにしていた手が離されマーカスは…

「こんな状況も…!」

 ドカッ!

 背後から腕ごと横に力いっぱい蹴り込み…

「理解できないようなガキが!」

 ガン!

 倒れている私のわき腹を蹴り上げ…

「何か出来るわけもないか…!」

 ドシッドシッ!

 さらに動けない私の体を持ち上げみぞおちに膝蹴りを二回入れた。
 
「あぐぅ…はぁ…はぁ…ひゅー…はぁ…」

 叫び声を上げる隙もなく連続で打ち込まれた攻撃は私から呼吸をする自由さえも奪った。まともに呼吸も出来ない。覚悟はしていたとは言え洒落にならない痛さね…勝手に涙が出てくる。

「あんな何も救わない神などに祈るなどふざけたこと言いやがって…まったく胸糞悪い…」

 どうやら私の態度というより神に祈ると言った事のがマーカスの逆鱗に触れたようだ。邪心の杯にとって既存の神は親の敵のように憎い存在のようだ。これはまずいかもしれない。怒らせすぎた…

「くっ…今すぐ貴様を殺してしまいたいところだが…(今回用意した逃亡ルートは大人数で追ってこられると少しまずいルート…このままこいつを殺せば通常の数倍の追っ手を差し向けられるだろう。だが生かしておけばそこまでの追っ手は来ないはず。せいぜい10数人程度…それならかわせるだろう。そもそも今回の目的はこいつではないのだからわざわざこいつを殺してリスクを増やすのはまずい…たまたま尋問しやすい単独の状況になったからさらったがこんな娘一人本来はどうでもいいのだ。)」

 何を考えているかは分からないがどうやらマーカスは悩んでいるようだ。どうやら運は私に味方しているかもしれない。
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