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最終章
61.居場所
しおりを挟む翌日、私たちは父の元へと行く。
「何なんだ?みんな揃って」
「あの、お父さん…家政婦の事なんだけど」
いつもとは、違う社長の雰囲気を出してる父に対して少しだけ声が震える。
「その事についてはもう終わった話だろ?来週から新しい人を雇ったって」
「僕達は、明里に辞めてもらいたくないんです」
私の前に出て司さんが声を出す。
「明里ちゃんには俺たちの傍にいてほしいんです」
続けて忍くんが話し、瀬戸さんも由くんも尚くんも頷く。
「明里は、私の娘だ。父親の私の意見が最優先だと思うが」
「明里の気持ちが1番だと!僕は思います」
「司さん…」
「明里の気持ちね…
聞いてあげよう。明里、お前はどうしたい?」
皆が私に言わせてくれる場所を作ってくれた。言わなきゃ…
震える唇がゆっくり動く。
「辞めたくない。正直お小遣いアップとかもういいから…皆といたい」
「お前になんのメリットがある?」
「メリットとかそういうのじゃなくて。
ただ、ただいまとおかえりが言えて、私の作るご飯を美味しいって食べてくれたり、何気ない事だけど、嬉しくて。
そんな日常をくれる皆といるのがとても楽しくて大事なの」
しばらく沈黙が続き、父の顔を見るとだばーっと涙を流していた。
「えっ!?お父さん!?」
「明里が自分の想いをぶつけてくれたのが嬉しくて。
わたしは、ずっと仕事命でやって来たから家庭のことなんか見てなくて…明里と面と向かって話して、思いを聞いた事なかったから…つい」
「え?もしかして…来週から雇ったっていうのは」
「うん、嘘だよ」
みんなその場で崩れ落ちる。
「いやー、ごめん、ごめん」
あははーと軽く笑う父親。
「あ、司。
あまり早くに手を出すと黙ってないからね」
「えっ?あ、はい」
私も司さんもその場で凍る。
笑顔が笑ってなかったよ…怖いよ。
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