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最終章
56.虹
しおりを挟むしばらく沈黙が続き、私は下向いたままで動けずにいた。
「……」
司さんからも特別何か返事が帰ってくる訳でもなくて、恐る恐る顔を上げようとすると「待って」と言われる。
「えっ?」
「今、僕の顔やばいから…
絶対に見られたくない…」
声が少し震える司さん。私は司さんの思いとは裏腹に見たいと思ってしまった。
その為、勢いよく顔を上げる。
「ちょっ!?僕今ダメだって言ったよね?」
「見たかったんです!司さんの顔を」
司さんは、口元に手を当てて顔を真っ赤にしながら反らす。
「自分の好きな人に、好きだって言ってもらえることがこんなに嬉しいって知らなかったから…」
そうだ。この人は、大切なお母さんを亡くされて、お母さんとの夢をお父さんとの縁を切ってまで叶えてきた。
私は司さんの左頬に手を当てる。
「これからは、私が傍で…
司さんの夢を一緒に見ても良いですか?」
「明里…」
頬に置かれた私の手を上から重ねる。
「傍に…いてほしい」
「うん!ずっと、傍にいるよ」
私たちがお互いに笑いあってると、曇っていた空が青くなって、うっすらと虹が写った。
「司さん!上、空!」
私が1人ではしゃぐと、司さんも上を見あげて虹を見る。
「壁の絵も良いけど、これもまた良いな」
「そうだね…」
しばらく2人で空に浮かぶ虹を見ていた。
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