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Ririsu◡̈*♡.°⑅

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第3章

22.電話の向こう

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忍くんから解放されて、やっと旅館に帰ってこれた。

私は部屋に着くなり布団を引いて横になる。

「明里、大丈夫?」

「振り回されたんだね…」

同室の舞と聖良がそばに来て、舞は頭を撫でる。

「お疲れ様」

「ほら、これ」

聖良から渡されたのは、生八つ橋。

「お土産とか買う暇なかっただろうから」

「一緒に食べよう」

「舞、聖良…」

2人に抱きつく。

「ありがとう!2人とも大好き!!」

「明里」

ヨシヨシと撫でてくれる舞。

「本当にしょうがないなー」

ポンッと撫でてくれる聖良。

良い友達を持ったと本当に思う。

「ん?」

「明里、携帯鳴ってない?」

「本当だ。長いから電話だ」

立ち上がって机に置いた携帯を取ると画面には、司さんの文字。

「ごめん、ちょっとだけ」

そう言ってベランダに出て通話ボタンを押す。

「もしもし」

『遅い。2コール以内に出て』

「はい!?そんなの無理に決まってるでしょ」

『何で?男といるから?』

「え?なんでそうなるの」

『忍とだろ?』

何だろう。いつもより早口だし、怒っているというか…不機嫌そう。

「今、旅館の部屋で友達といるんだけど」

『でもさっきまでは忍といたんだろ?』

「まぁ。そうだけど…
というか何で一緒だったこと知ってるの?」

『2人で撮影してる場所から消えたら気づくわ。明里が来ていたの知ってたし』

そっか。声もかけずに立ち去ったことを怒っているのか。
大勢のファンとかいたから声かけるの気まずかったし。

「ごめん。声かけなかったこと怒ってるんだよね?」

『は?』

「嫌な気持ちにさせたよね。ごめん。
ファンの人とかもいたし撮影中だったから声掛けられなかった」

私が謝ると電話の向こうでは、大きなため息が聞こえた。

『僕、ここまで鈍い奴と出会った初めてだ』

「え?なに」

『いいか!?明日の自由時間は必ず連絡すること!わかった!?』

「う、うん」

何となくの約束をして電話を切る。

「本当に何に怒ってるんだろ。怖っ」
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