16 / 64
第2章
16.歌うために
しおりを挟む私はある人に電話をし、翌日学校終わりの放課後に司さんを連れて尋ねる。
「は?なに、ここ」
司さんを連れてきた場所は、
「何って保育園ですけど」
「見りゃわかる!」
表でワーワー言い合ってると、友人の舞がひょこっと顔を出す。
「わ、本当だ。本当に天海司さんがいる」
「彼女、この保育園の園長の娘さんでこの裏で住んでて、今回のお願いを聞いてくれたんです」
「大丈夫ですよ。私口かたいですし先生方も、子供たちは多分司さんを知らないと思いますけど」
「待って。僕に何をさせる気?」
私の左肩に手を置いて止める司さん。
「何って、子供たちを観客に人前で歌う練習です」
「はっ!?」
「大丈夫ですよ。子供たちは優しいですよ」
「そういう問題じゃ」
私はグイグイと司さんの腕を引いて保育園の中に行くと、先生方が「本当にいるー」「かっこいいー」とコソコソと言っているのが聞こえるがすぐにお口チャックを各々する。
ひまわり組とかかれた、3歳の部屋に案内されると既に座って待機していた。
舞が先導して「みんな、お待たせー」と入っていく。
子供たちは私と司さんを見て「誰?」と口を揃えてキョロキョロする。
「お兄さんは、お歌をやっててみんなの前で披露したいんだけど聞いてくれるかな?」
舞がそう言うと嬉しそうに「聞くー!」と手を挙げる子供たち。それに対しての司さんの青ざめた顔。
「いきなり無理だって…」
前に立たされた司さんは、歌い出そうとしても声が出ない。
駆けつけて止めようとしたが、その前に1人の女の子が司さんの前に立って「一緒に歌う」と言う。
「えっ?」
「一緒に歌を歌う!」
「うん。じゃあ一緒に歌ってくれる?」
「うん!」
じゃあ俺も、私もと次々前に出て司さんを囲んで一緒に童謡を楽しそうに歌い始める。
その姿を見て私も舞も笑い合う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
19
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる