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第二部 出会いと再会編
元転移転生魔術師、合流する 前編
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ワシは激怒した。
新興派の書くタイトルが、ことごとくワシをバカにしているからだ。
『デウディーンど変態』
『デウディーンはオークだった。エルフ孕ませ日和』
『デウディーンを監禁して観察しよう』
『デウディーンはエルフだった。解体新書』
『デウディーンを並べて食べよう』
『デウディーンはロリコン』
『デウディーンはショタコン』
『デウディーンはホモ』
『デウディーンは何でもいけます』
『デウディーンが俺の彼女を寝取ってくる件』
『デウディーン? 俺の横で寝てるよ?』
『そもそもデウディーンは存在しない』
『デウディーンは俺の事だから』
『いや、デウディーンは俺の方だから』
『だから俺だって言ってるじゃんデウディーン』
『そもそもデウディーンって何だっけ?』
『っていうかデウディーンがゲシュタルト崩壊してきた』
「……………………」
もう、見るのもイヤになった。
最初は本を投げ捨てていたが、途中から疲れて、それと何度かラスティアに当ててしまった事を後悔して、徐々にそっと片付けるようになった。
「すまん。取り乱した」
「いえ。こうしてデウディーン様から、恵みの投擲を頂きましたので」
恵みの投擲ぃ?
何か訳の分からん事を言い出しおったぞこヤツ……。
「全知全能なるデウディーン様ならご存知でしょうが、アナタ様が触れられた物全てに神聖が宿るのです。千年前の当時でも、デウディーン様が我ら矮小な庶民に物を投げる事で、貧困や病から救ってきたではありませんか。それに伴い出血する程に頂ける恵みも大きくなり、さらに命を落とした際には、その家族に永遠の幸せを保障していたと記録にございます」
?????
ワシに投げられた人が、幸せになる……?
何を見てきたかのように語っとるんじゃこヤツは……。
記録って何じゃ? ワシ知らんぞそんなん。人に物投げた事なんてないし。
しかも命を落としたって、何でワシ人殺した事になっとるの……?
デウディーン教団って、何でありもしない事を捏造して広めてくるの……?
「それではデウディーン様。私がエルフの里に同行をお願いしました理由は、新興派の調査を依頼されたからです」
お、おお……。
んな急に真面目になられても……。
「デウディーン様もご覧いただきましたように、新興派の動きは目に余るばかり。このようにデウディーン様を侮辱したような本を売り続けては、万が一にもデウディーン様の評判を落とす危険性をはらんでいるのです」
「確かに……。この新興派の本が嫌いって子供の声、よく聞くわね……」
「ルルの言う通り、デウディーン様に対するあらぬ誤解を生みかねません。この暴挙を許していれば、いずれ反デウディーン思想を持つ民衆が現れかねません」
反デウディーン思想って。んな大げさな……。
世の中色々な考えの人々がおる訳じゃし、そりゃワシと合わない人がおれば、嫌う人もおるじゃろうし……。
「私もその懸念を伝えたくて、マリーの元に駆けつけようとしたの。そしたら、道中何者かに襲われて、刻印を付けられてしまったわ」
「ぬ……」
「タイミングが合うな……。デウディーン様、確証はありませんが、新興派が絡んでいる可能性があります。警戒するに越した事はありません」
珍しく、ラスティアが正論言うておる。
ルルの指人形、最後に残った小指にはフードを被った顔が見えない人形。ルルを襲った輩じゃろう。
確かに、新興派を叩いておけば、何かホコリが出てくるかもしれん。
※※※※※※※※※※※※
「着きました。ここでお待ち下さい」
ワシらを乗せた馬車は、サークルポリスに留まっておる。
相変わらず、大きな町じゃ。
所々、モンスター供の襲撃によって壊された箇所が残っているものの、以前訪れた時と比べて修繕が進んでいるように見える。
馬車の窓から見た限り、あのレッドドラゴンのミミティは見かけんかった。まあ、そもそもこの町を降りるつもりなど無かったから、それでも良いのじゃが。
ラスティア曰く、何やら合流する予定だという事。その待ち人達と会うために一旦、馬車を降りるそうじゃ。
「ラスティア……分かっておるじゃろうが、ワシを『デウディーン』などと呼ぶんじゃないぞ?」
「ハッ! お任せ下さい! 以前のようにマリー様とお呼び頂き、崇拝する所存であります!」
いや、その崇拝がいらんのじゃて。
満面の笑みで敬礼をすると、ラスティアは馬車を降り、駆けていった。
新興派の書くタイトルが、ことごとくワシをバカにしているからだ。
『デウディーンど変態』
『デウディーンはオークだった。エルフ孕ませ日和』
『デウディーンを監禁して観察しよう』
『デウディーンはエルフだった。解体新書』
『デウディーンを並べて食べよう』
『デウディーンはロリコン』
『デウディーンはショタコン』
『デウディーンはホモ』
『デウディーンは何でもいけます』
『デウディーンが俺の彼女を寝取ってくる件』
『デウディーン? 俺の横で寝てるよ?』
『そもそもデウディーンは存在しない』
『デウディーンは俺の事だから』
『いや、デウディーンは俺の方だから』
『だから俺だって言ってるじゃんデウディーン』
『そもそもデウディーンって何だっけ?』
『っていうかデウディーンがゲシュタルト崩壊してきた』
「……………………」
もう、見るのもイヤになった。
最初は本を投げ捨てていたが、途中から疲れて、それと何度かラスティアに当ててしまった事を後悔して、徐々にそっと片付けるようになった。
「すまん。取り乱した」
「いえ。こうしてデウディーン様から、恵みの投擲を頂きましたので」
恵みの投擲ぃ?
何か訳の分からん事を言い出しおったぞこヤツ……。
「全知全能なるデウディーン様ならご存知でしょうが、アナタ様が触れられた物全てに神聖が宿るのです。千年前の当時でも、デウディーン様が我ら矮小な庶民に物を投げる事で、貧困や病から救ってきたではありませんか。それに伴い出血する程に頂ける恵みも大きくなり、さらに命を落とした際には、その家族に永遠の幸せを保障していたと記録にございます」
?????
ワシに投げられた人が、幸せになる……?
何を見てきたかのように語っとるんじゃこヤツは……。
記録って何じゃ? ワシ知らんぞそんなん。人に物投げた事なんてないし。
しかも命を落としたって、何でワシ人殺した事になっとるの……?
デウディーン教団って、何でありもしない事を捏造して広めてくるの……?
「それではデウディーン様。私がエルフの里に同行をお願いしました理由は、新興派の調査を依頼されたからです」
お、おお……。
んな急に真面目になられても……。
「デウディーン様もご覧いただきましたように、新興派の動きは目に余るばかり。このようにデウディーン様を侮辱したような本を売り続けては、万が一にもデウディーン様の評判を落とす危険性をはらんでいるのです」
「確かに……。この新興派の本が嫌いって子供の声、よく聞くわね……」
「ルルの言う通り、デウディーン様に対するあらぬ誤解を生みかねません。この暴挙を許していれば、いずれ反デウディーン思想を持つ民衆が現れかねません」
反デウディーン思想って。んな大げさな……。
世の中色々な考えの人々がおる訳じゃし、そりゃワシと合わない人がおれば、嫌う人もおるじゃろうし……。
「私もその懸念を伝えたくて、マリーの元に駆けつけようとしたの。そしたら、道中何者かに襲われて、刻印を付けられてしまったわ」
「ぬ……」
「タイミングが合うな……。デウディーン様、確証はありませんが、新興派が絡んでいる可能性があります。警戒するに越した事はありません」
珍しく、ラスティアが正論言うておる。
ルルの指人形、最後に残った小指にはフードを被った顔が見えない人形。ルルを襲った輩じゃろう。
確かに、新興派を叩いておけば、何かホコリが出てくるかもしれん。
※※※※※※※※※※※※
「着きました。ここでお待ち下さい」
ワシらを乗せた馬車は、サークルポリスに留まっておる。
相変わらず、大きな町じゃ。
所々、モンスター供の襲撃によって壊された箇所が残っているものの、以前訪れた時と比べて修繕が進んでいるように見える。
馬車の窓から見た限り、あのレッドドラゴンのミミティは見かけんかった。まあ、そもそもこの町を降りるつもりなど無かったから、それでも良いのじゃが。
ラスティア曰く、何やら合流する予定だという事。その待ち人達と会うために一旦、馬車を降りるそうじゃ。
「ラスティア……分かっておるじゃろうが、ワシを『デウディーン』などと呼ぶんじゃないぞ?」
「ハッ! お任せ下さい! 以前のようにマリー様とお呼び頂き、崇拝する所存であります!」
いや、その崇拝がいらんのじゃて。
満面の笑みで敬礼をすると、ラスティアは馬車を降り、駆けていった。
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