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第二部 出会いと再会編
元転移転生魔術師、渋々従う 前編
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『マスター、報告です。道中索敵をしましたが、レミン達を確認出来ませんでした。恐らく家に帰ったものと思われます』
サージャから、報告が入った。
「声が聞こえる……この子が、混半妖精なんですね」
「そうじゃ。名をサージャと言う。千年前に転生させてからのパートナーじゃ」
簡易基地から家までの道中、サージャを紹介する。
そんなサージャに、索敵をお願いしたのじゃ。
思えば、レミン達を放ったらかしにしたようなもの。もしあの子達に会えたなら、謝ろうって思ったのじゃが……。
「やはり、夕暮れではもう帰っておったか」
惜しい気がしたが、会えなかったのなら仕方ないの。
もしまた遊んでもらえるなら、今度はちゃんとデウディーンごっこに付き合ってやらんとな。
「レミンって、お友達、ですか?」
ここで、ルルが尋ねてきた。
「おお、そうじゃ。ワシ、転生してからは【マリー】と名乗ってての。今は九歳の幼女として、レミン達と遊んでおったんじゃ」
「デウディーン様が? 子供達と? もう冒険する意思は無いって事ですか?」
「まあの。もちろん、お主の里には行くつもりじゃ。それと、これからワシの家に入る訳じゃが……」
ワシは真剣な態度でルルと向かい合う。
ワシが見上げる形にはなるが、まあ威厳は出すつもりじゃ。
「ワシを【デウディーン】などと呼ばないでほしいんじゃ。ワシは転生してからは、新しい人生を歩むつもりでおる。なのでこれから会う両親の前では、幼女として扱ってほしいんじゃ」
「え、……は、はい。デ……じゃなくて、マリー様」
「その畏まった態度がいらんのじゃ。様もいらんし、見た目はお主の方が年上のお姉さんなんじゃから、タメ口で話してほしい。良いな? デウディーンとしての人生は、千年前に終わったのじゃからな」
「あ……うん。分かったわ、マリー」
少し戸惑っている様子じゃったが、快く受け入れてくれたようじゃった。
助かるわい。やはり、母となったルーランの娘じゃ。真面目な所が似ておるわい。
顔つきも良く見ると、ルーランの面影がある。
後ろでくくった金色の髪に、尖った耳。整った顔つきで、瞳がエメラルドグリーンの宝石のように輝いて見える。
十代半ばを思わせ、美人ながらもどこか幼さを残している。
一言で言えば、素晴らしい逸材じゃ。
まぁ、サラサラの黒髪で、右側に分けた前髪が、将来の美少女を約束されているワシの二番目に美しい……と言った所かの。
「あ、あの、マリー? 私の顔、何かついてる?」
おっといかん。ジロジロ見過ぎたわい。
ワシには妻しかおらんかったが、孫を持つ老人の気持ちが、今なら分かる気がするのう。
「何でもない。そろそろ入るぞ」
キョトン、と首を傾げるルルに構わない。
ワシらは、家の前まで到着した。
ワシは扉に手を掛ける。
母のリーリエは、いつだって優しい。きっと、ルルの事も歓迎してくれるじゃろう。
ワシはそんな期待を胸に、扉を開けた。
「お母さーん。ただいまー」
「お帰りなさいマリー様。このラスティア、お待ちしておりました」
…………………………。
ワシの眼前に、明らかに母ではない、鎧を着た女が椅子に座っている。
爽やかな表情で、ワシを迎えていたのじゃ。
「……………………」
ワシは無言で、扉を閉めた。
「ごっめーん。家、間違えちゃったみたーい!」
「え、え? どういう事? ここ、マリーの家なんじゃ……?」
ルルは戸惑っておるが、ワシは構わない。
女騎士の狂信者など、無かった事にしたい。
しかし……。
「ちょ、マリー様~! 何で閉めるんですかぁ~!」
ラスティアの方から開けてきおったわい。
「ここは、マリー様の家で間違いありませんよ! 私はホラ、ここの地区担当の騎士ですので、仕事の合間に寄った次第なのです!」
満面の笑みで話し掛けてきおる。
「え、えっと、マリー……この人、知り合い?」
ルルが遠慮がちに聞いてきおる。
仕方ない。ワシは溜め息を吐いた。
サージャから、報告が入った。
「声が聞こえる……この子が、混半妖精なんですね」
「そうじゃ。名をサージャと言う。千年前に転生させてからのパートナーじゃ」
簡易基地から家までの道中、サージャを紹介する。
そんなサージャに、索敵をお願いしたのじゃ。
思えば、レミン達を放ったらかしにしたようなもの。もしあの子達に会えたなら、謝ろうって思ったのじゃが……。
「やはり、夕暮れではもう帰っておったか」
惜しい気がしたが、会えなかったのなら仕方ないの。
もしまた遊んでもらえるなら、今度はちゃんとデウディーンごっこに付き合ってやらんとな。
「レミンって、お友達、ですか?」
ここで、ルルが尋ねてきた。
「おお、そうじゃ。ワシ、転生してからは【マリー】と名乗ってての。今は九歳の幼女として、レミン達と遊んでおったんじゃ」
「デウディーン様が? 子供達と? もう冒険する意思は無いって事ですか?」
「まあの。もちろん、お主の里には行くつもりじゃ。それと、これからワシの家に入る訳じゃが……」
ワシは真剣な態度でルルと向かい合う。
ワシが見上げる形にはなるが、まあ威厳は出すつもりじゃ。
「ワシを【デウディーン】などと呼ばないでほしいんじゃ。ワシは転生してからは、新しい人生を歩むつもりでおる。なのでこれから会う両親の前では、幼女として扱ってほしいんじゃ」
「え、……は、はい。デ……じゃなくて、マリー様」
「その畏まった態度がいらんのじゃ。様もいらんし、見た目はお主の方が年上のお姉さんなんじゃから、タメ口で話してほしい。良いな? デウディーンとしての人生は、千年前に終わったのじゃからな」
「あ……うん。分かったわ、マリー」
少し戸惑っている様子じゃったが、快く受け入れてくれたようじゃった。
助かるわい。やはり、母となったルーランの娘じゃ。真面目な所が似ておるわい。
顔つきも良く見ると、ルーランの面影がある。
後ろでくくった金色の髪に、尖った耳。整った顔つきで、瞳がエメラルドグリーンの宝石のように輝いて見える。
十代半ばを思わせ、美人ながらもどこか幼さを残している。
一言で言えば、素晴らしい逸材じゃ。
まぁ、サラサラの黒髪で、右側に分けた前髪が、将来の美少女を約束されているワシの二番目に美しい……と言った所かの。
「あ、あの、マリー? 私の顔、何かついてる?」
おっといかん。ジロジロ見過ぎたわい。
ワシには妻しかおらんかったが、孫を持つ老人の気持ちが、今なら分かる気がするのう。
「何でもない。そろそろ入るぞ」
キョトン、と首を傾げるルルに構わない。
ワシらは、家の前まで到着した。
ワシは扉に手を掛ける。
母のリーリエは、いつだって優しい。きっと、ルルの事も歓迎してくれるじゃろう。
ワシはそんな期待を胸に、扉を開けた。
「お母さーん。ただいまー」
「お帰りなさいマリー様。このラスティア、お待ちしておりました」
…………………………。
ワシの眼前に、明らかに母ではない、鎧を着た女が椅子に座っている。
爽やかな表情で、ワシを迎えていたのじゃ。
「……………………」
ワシは無言で、扉を閉めた。
「ごっめーん。家、間違えちゃったみたーい!」
「え、え? どういう事? ここ、マリーの家なんじゃ……?」
ルルは戸惑っておるが、ワシは構わない。
女騎士の狂信者など、無かった事にしたい。
しかし……。
「ちょ、マリー様~! 何で閉めるんですかぁ~!」
ラスティアの方から開けてきおったわい。
「ここは、マリー様の家で間違いありませんよ! 私はホラ、ここの地区担当の騎士ですので、仕事の合間に寄った次第なのです!」
満面の笑みで話し掛けてきおる。
「え、えっと、マリー……この人、知り合い?」
ルルが遠慮がちに聞いてきおる。
仕方ない。ワシは溜め息を吐いた。
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