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第一部 元親友との決着編

一方のたかし、悶々とする 後編

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 謎の浮遊感。力が抜けていく感じがする。
 そして全身が優しい光に包まれたかと思うと、小さな泡となってオレから散っていくのが分かった。

「何だよこれ……何なんだよ……」

 動揺するオレ。
 よく見ると、体が少しずつ薄くなっているのだ。

 ようやく理解した。オレ、消えていっているんだと。

「何や、何なんや! 何が起きて……何で!?」

 もう訳分からんかった。だって、永遠の命やと思ってたオレの体が、消えていくんやから……。

 何でや……アイツが何かしたんか? 信者が出ていっただけでこんな事……。

「あ……」

 オレはふと、ある言葉を思い出す。
 ソレは、女神に言われた警告。

 ――人々からの信仰が大事で、誰からも崇拝されなくなると、消滅してしまう。

「え、ちょ待って! 嘘! ウソやん!?」

 オレが消えていってるのって、そういう意味!?
 マジで!?
 オレ、消える!? っていうか、死ぬ!?

「いや、嫌や! こんなんおかしい! オレまだおりたい! 消えたないっ!」

 意味分からん! 何でオレがこんな目に合うんや!?
 オレが何をした? 何も悪い事してへんやろ!
 幸せになる所やろ!
 それやのに消えてまうっておかしいやん!

 ……あかん、手が見えへんようになってきた。
 嫌や! こんな終わり方嫌や! 一人寂しくなんてありえへん! せめて、せめて誰かオレのために……。

「いややああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……! 誰か助けてくれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ……!」


「相変わらず、みっともないヤツじゃのう。たかし」


 女の声がする……。
 瞬間、オレの消滅が止まった。
 手の薄さが無くなっている。浮遊感を感じない。
 そして、目の前にいるのは……。

「幼女……?」

 見覚えのない、黒髪の幼女。
 オレの側に銅貨が置かれている。
 賽銭してくれたらしい。そのおかげか、消滅は免れたようだった。

「君は……」

 尋ねようとした瞬間、オレにははっきり分かった。
 この魔力、覚えがある。いや間違えようがない。
 他のヤツらにはなかった独特な魔力のうねり。
 千年たってからもついに現れなかった唯一無二の魔法の持ち主。

「お前……まさか……」

 あり得へん。いやでも、確かにそうや。
 姿は違っても、全く同じや。
 千年前に死んだはずの、アイツと……!

「デウディーン……なのか……?」

 デウディーン。
 その名を呼んだ瞬間、幼女はニカッと笑顔を見せていた。



   ************************ 

【サージャ】≪『第二十七話をお読みいただき、ありがとうございます』

【サージャ】≪『田中たかし、間一髪でしたね』

【サージャ】≪『以前から傍若無人に振る舞い、最後の信者である老人――グランシャの名前を覚える気すらありません彼が、誰からも振り向いてもらえず消滅する……似合いの最期だったのかもしれません』

【サージャ】≪『しかし、マスターは食い止めました。追放した相手に対して』

【サージャ】≪『過去のわだかまりを水に流したのでしょうか。それとも、何か考えがあるのか』

【サージャ】≪『この物語も、いよいよクライマックスです。それでは、次回をお楽しみに』
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