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第一部 サークルポリス襲撃編
元転移転生魔術師、説教する 前編
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「「「……………………」」」
ワシの大声に、三人が静まった。
皆がそれぞれ、目を見開いておる。
驚いた様子じゃった。リアクションに困っているとも言える。
何せもう、腹の底から叫んでしまったからね。
それよりもワシは困っていたのじゃ。昔の友人の口調を再現してしまうほどにの。
そもそも、何でこんな事になってしまったのか……。
何でワシが選ぶ話になっているんじゃ……?
何で三人が言い争っているんじゃ……?
そうでなく、ただ聖地を教団が占領した理由を聞いて文句を言えればよかったんじゃなかったのか……?
「えと、デウディーン様……?」
埒が明かない。
そう思ったワシは、王様に指をさした。
「王様よ、お主に言っておく事がある」
「は、はい。何でしょう?」
「お主はもっとシャキッとしろ!」
汗を流しながら見上げる王様に対して、ワシは説教をかましてやった。
「教会から見ておったが、何じゃあのへっぴり腰は! ルイスロールたちにいいようにされておるではないか! お主王様じゃろ! 一国の主じゃろう! 国の偉い人で竜人族との繋がりを持っておるんじゃから、もっと対等に接してみろ!」
「へ……へへぇ~! で、デウディーン様……ごもっともにございます……!」
王様が深々と頭を下げる。地面にぶつける寸前まで。
「それからコソコソするのもナシじゃ。竜人族を攻撃してしまった落ち度は受け入れねばならん。しっかりミミティに謝っておくんじゃぞ」
「は……はい! 謝ります、謝ります!」
「いいよデウディーン様! もっと言ってやって!」
「ミミティ、お主もあるから」
「え! 私も!?」
まさか自分に来るとは思っていなかったのじゃろう。ミミティが面食らっておる。
ワシはその勢いを維持したまま、指をさして説教した。
「そうじゃ。いくら襲われたとはいえ、モンスターをけしかけたのはやり過ぎじゃ。死者はいなくとも村や町が壊されたのは事実なのじゃ。建物の修理を手伝え! 分かったな?」
「う~……。デウディーン様がそう言うなら……分かりました。」
渋々ながらも、ミミティがうなずいてくれた。
「そしてルイスロール」
「は、はい」
「お主には言いたい事が三つある」
え、三つも!?
とでも言いたげな、驚いた表情を見せる。
ワシは深呼吸した。ここからがワシにとって本番だったからの。
少しだけ間を置いてから、言いたい事をぶつけてやった。
「……………………」
「あ、あの……?」
「ルイスロール、神聖潤滑の儀禁止! 見に覚えのない後継ぎ名乗るの禁止! ワシのためとか言って争い起こすの禁止!!」
「え、えええええええええええっ……!」
驚愕の声をあげるルイスロール。
ここまで驚くとはの……。まあワシも勢い余って怒鳴りまくってしまったが。
「そ、そんな……どうしてですか?」
案の定、ルイスロールが動揺しておる。
「な、何がいけなかったのですか? 何が足りなかったのですか? 私は、いえ私たち教徒はただ、皇陛下・デウディーン世界教皇様のためを思って信仰していたのです。それを拒絶されるなんて、意味が、分からないというか……」
予想通り、困惑した様子をあらわにしておる。
やはり、言わなければ分からんようじゃな……。
はぁ……。ワシはため息を吐いた。
「あのなぁ……そもそもなぁ……見知らぬ女にあえがれる事の、どこがワシのためになるんじゃ?」
「よ、欲情しませんか……? こう、ムラムラしてもらえれば、遠慮なく子種を注ぎやすくなるでしょう? 私たち教徒はデウディーン様から恩恵をいただけ、本人は気持ちよくなれる……。いい事ずくめでは……?」
「ねーよ! 怪しい痴女だと思って近づきたくもねーよ! そもそも幼女だから子種注ぐもねーよ!」
「だ、大丈夫です! その程度の障壁、デウディーン様なら何とでもなります!」
「なるかぁ! 何を根拠に言っとんじゃぁ!! それと二十七代目を名乗っとったがの、んなもんワシ認めとらんからな! 千年前の家族は愛する妻ただ一人じゃぞ!」
「そ、そんな! あり得ません! 我らが教団の記録によれば、世界中の女性に子種を注ぎ、各方面に子孫を残してきたと伝えられているのです!」
「それたかしじゃから! ワシしてねーから! 何か異世界転移者とワシのエピソードごっちゃになってるから! この際言っとくけど、デウディーン教団とかいう組織ができたのって、ワシの死後じゃからな。生前そんな連中と喋った事とか一回も無かったからな!」
「え、ええええええええええええええ……っ!」
なんか突然、声をあげて驚きおったぞ……。
こんな作り上げたようなウソデタラメ、教皇クラスなら把握していると思っておったが……そうでもなかったのか?
いや、そうじゃ、【ウソデタラメ】と言えば……。
「お主ら教団は【ワシのため】とか言って人を動かすそうじゃのう。まさに聖地での話だが、その根拠は何じゃ? どこから来るんじゃ? 今この場で言えるのか……?」
ワシの問い詰めに、ルイスロールがギクッ、と肩を強張らせた。
「そ、それはデウディーン様にとってよかれと言いますか……」
「あっそう。別にワシ、よく思ってないんじゃけど」
「そ、その……提案する時に……デウディーン様の名前を使った方が……通りやすいので……」
「それじゃな。それがいかんのじゃ。ルイスロールは言い訳が多い。ワシのためだとか言って都合よく見せようとする所がお主の悪い所じゃ」
「う、ううぅ……」
「泣いてみせて同情を誘ったり、あれこれ弁解し続けたりウンザリなんじゃ……。理由はどうあれ聖地を勝手に占領したのは事実だし、竜人族に失礼をかました。悪い事をしたんじゃから悪いと素直に受け入れろ、自分をよく見せようとするんじゃない。あえぎ声の練習をする前に、ただ埋葬に来ただけのミミティに謝れ!」
「は、……ハハァァァァ~……! わ、分かりました! デウディーン様に従います~……」
ルイスロールが涙声で応える。
さらに深々と頭を下げていく様子に、ワシはとりあえず受け入れたのだと思う事にした。
その上で、もう一押しする事にした。
ワシの大声に、三人が静まった。
皆がそれぞれ、目を見開いておる。
驚いた様子じゃった。リアクションに困っているとも言える。
何せもう、腹の底から叫んでしまったからね。
それよりもワシは困っていたのじゃ。昔の友人の口調を再現してしまうほどにの。
そもそも、何でこんな事になってしまったのか……。
何でワシが選ぶ話になっているんじゃ……?
何で三人が言い争っているんじゃ……?
そうでなく、ただ聖地を教団が占領した理由を聞いて文句を言えればよかったんじゃなかったのか……?
「えと、デウディーン様……?」
埒が明かない。
そう思ったワシは、王様に指をさした。
「王様よ、お主に言っておく事がある」
「は、はい。何でしょう?」
「お主はもっとシャキッとしろ!」
汗を流しながら見上げる王様に対して、ワシは説教をかましてやった。
「教会から見ておったが、何じゃあのへっぴり腰は! ルイスロールたちにいいようにされておるではないか! お主王様じゃろ! 一国の主じゃろう! 国の偉い人で竜人族との繋がりを持っておるんじゃから、もっと対等に接してみろ!」
「へ……へへぇ~! で、デウディーン様……ごもっともにございます……!」
王様が深々と頭を下げる。地面にぶつける寸前まで。
「それからコソコソするのもナシじゃ。竜人族を攻撃してしまった落ち度は受け入れねばならん。しっかりミミティに謝っておくんじゃぞ」
「は……はい! 謝ります、謝ります!」
「いいよデウディーン様! もっと言ってやって!」
「ミミティ、お主もあるから」
「え! 私も!?」
まさか自分に来るとは思っていなかったのじゃろう。ミミティが面食らっておる。
ワシはその勢いを維持したまま、指をさして説教した。
「そうじゃ。いくら襲われたとはいえ、モンスターをけしかけたのはやり過ぎじゃ。死者はいなくとも村や町が壊されたのは事実なのじゃ。建物の修理を手伝え! 分かったな?」
「う~……。デウディーン様がそう言うなら……分かりました。」
渋々ながらも、ミミティがうなずいてくれた。
「そしてルイスロール」
「は、はい」
「お主には言いたい事が三つある」
え、三つも!?
とでも言いたげな、驚いた表情を見せる。
ワシは深呼吸した。ここからがワシにとって本番だったからの。
少しだけ間を置いてから、言いたい事をぶつけてやった。
「……………………」
「あ、あの……?」
「ルイスロール、神聖潤滑の儀禁止! 見に覚えのない後継ぎ名乗るの禁止! ワシのためとか言って争い起こすの禁止!!」
「え、えええええええええええっ……!」
驚愕の声をあげるルイスロール。
ここまで驚くとはの……。まあワシも勢い余って怒鳴りまくってしまったが。
「そ、そんな……どうしてですか?」
案の定、ルイスロールが動揺しておる。
「な、何がいけなかったのですか? 何が足りなかったのですか? 私は、いえ私たち教徒はただ、皇陛下・デウディーン世界教皇様のためを思って信仰していたのです。それを拒絶されるなんて、意味が、分からないというか……」
予想通り、困惑した様子をあらわにしておる。
やはり、言わなければ分からんようじゃな……。
はぁ……。ワシはため息を吐いた。
「あのなぁ……そもそもなぁ……見知らぬ女にあえがれる事の、どこがワシのためになるんじゃ?」
「よ、欲情しませんか……? こう、ムラムラしてもらえれば、遠慮なく子種を注ぎやすくなるでしょう? 私たち教徒はデウディーン様から恩恵をいただけ、本人は気持ちよくなれる……。いい事ずくめでは……?」
「ねーよ! 怪しい痴女だと思って近づきたくもねーよ! そもそも幼女だから子種注ぐもねーよ!」
「だ、大丈夫です! その程度の障壁、デウディーン様なら何とでもなります!」
「なるかぁ! 何を根拠に言っとんじゃぁ!! それと二十七代目を名乗っとったがの、んなもんワシ認めとらんからな! 千年前の家族は愛する妻ただ一人じゃぞ!」
「そ、そんな! あり得ません! 我らが教団の記録によれば、世界中の女性に子種を注ぎ、各方面に子孫を残してきたと伝えられているのです!」
「それたかしじゃから! ワシしてねーから! 何か異世界転移者とワシのエピソードごっちゃになってるから! この際言っとくけど、デウディーン教団とかいう組織ができたのって、ワシの死後じゃからな。生前そんな連中と喋った事とか一回も無かったからな!」
「え、ええええええええええええええ……っ!」
なんか突然、声をあげて驚きおったぞ……。
こんな作り上げたようなウソデタラメ、教皇クラスなら把握していると思っておったが……そうでもなかったのか?
いや、そうじゃ、【ウソデタラメ】と言えば……。
「お主ら教団は【ワシのため】とか言って人を動かすそうじゃのう。まさに聖地での話だが、その根拠は何じゃ? どこから来るんじゃ? 今この場で言えるのか……?」
ワシの問い詰めに、ルイスロールがギクッ、と肩を強張らせた。
「そ、それはデウディーン様にとってよかれと言いますか……」
「あっそう。別にワシ、よく思ってないんじゃけど」
「そ、その……提案する時に……デウディーン様の名前を使った方が……通りやすいので……」
「それじゃな。それがいかんのじゃ。ルイスロールは言い訳が多い。ワシのためだとか言って都合よく見せようとする所がお主の悪い所じゃ」
「う、ううぅ……」
「泣いてみせて同情を誘ったり、あれこれ弁解し続けたりウンザリなんじゃ……。理由はどうあれ聖地を勝手に占領したのは事実だし、竜人族に失礼をかました。悪い事をしたんじゃから悪いと素直に受け入れろ、自分をよく見せようとするんじゃない。あえぎ声の練習をする前に、ただ埋葬に来ただけのミミティに謝れ!」
「は、……ハハァァァァ~……! わ、分かりました! デウディーン様に従います~……」
ルイスロールが涙声で応える。
さらに深々と頭を下げていく様子に、ワシはとりあえず受け入れたのだと思う事にした。
その上で、もう一押しする事にした。
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