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第一部 転生編
一方のたかし、廃れてしまう 後編
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「……は?」
今、……何て言った? コイツ? オレの前で……?
幼女が母の布切れを掴んで、文句を言った? しかも、不満そうに……?
オレが、懸命に説教してやったにも関わらず……?
……何やねん、コイツ。何でこんな平然としてんねん。
オレが怒ってんねんぞ。神にも等しいオレが怒ったら、怯えるか土下座するのが筋ちゃうん?
それを分からず、オレの事キライ……?
しかも、またデウディーンの名前を出しやがって?
「お嬢ちゃ~ん、今、何て言ったのかなぁ~?」
母から離れ、オレは幼女に接近する。
優しい声は出していたが、内心は爆発寸前だ。
「聞こえなかった? ……もう一回言うね?」
しかし幼女は、オレの気持ちに構わず、面と向かって。
「女神様の事、キライ。大キライ。ママの事いじめるからキライ。私たちの体ジロジロ見てくるからキライ。すぐ怒ってくるからキライ。ちっとも優しくないからキライ。デウディーン様でムキになってる所が大っキライ」
堂々と言ってのけたのだ。
オレへの罵倒を。
「……………………」
さすがにオレ、固まっちゃったね。
余りの展開に。意味不明さに。
けど状況を飲み込めるようになって、イライラが増してきた。
……何やねんコイツ。ホンマもう、意味分からん……。
「……け」
オレはボソッと呟いた。
耳を傾ける母と幼女。その仕草を見て、堪忍袋の緒が切れた。
「出てけ……言うとんじゃ」
「え……?」
「はよ出てけ言うとんじゃ! 何やねんデウディーンデウディーンキライキライって! そんなにアイツがいいんやったら行ったらええやんけ! もう来んな! 向こう行ってこいや! そこで可愛がってもらえや! オレの前に二度と現れんなやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
目一杯、オレは叫んだ。怒りに任せ、怒鳴り尽くした。
ややあって、母と幼女はその場から去っていった。
「ハァ……ハァ……」
怒鳴ったせいか、息が荒い。
オレの息づかい以外、何も聞こえない。信者がたくさんいるのに、母と幼女が出ていってから静寂に包まれている。
「ダサッ。幼女相手に、あんなムキになるかね」
誰かがオレを、蔑んだ。
「……おい、今誰や言うたん?」
確かに聞こえた。オレをバカにする声が。
しかし、誰も名乗り出ない。皆、戸惑うばかりだ。
「おい、出てこいや! オレに文句あるんやったらハッキリ言えや! コソコソせんと言うたらええやろ!」
それでも誰も出てこない。
オレのイライラはもう限界やった。
「もういい! もう分かった! お前らクソ、全員クソ! 本当はオレをバカにしてるやな、よう分かったわ! お前ら全員クビじゃ! そんなにオレが嫌やったら出ていけや! デウディーンでもどこでも行ったらええやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!!!」
俺は再び、信者たちの前で盛大に怒鳴り散らした。
※※※※※※※※※※※
……今思えば、このやりとりが皮切りだったかもしれない。
この日を堺に、信者がみるみる減っていったからだ。
この事件からおよそ九百年。
数百人はいただろう信者が、ごっそりいなくなってしまった。
今となっては、たった数人。
一方で、デウディーンの信者は着実に増えているらしい。
その数は、二千人を超えたとか……。
「なんでやねん!」
思わず叫んでしまった。その瞬間。
オレは目が覚めた。イライラした気持ちで。
いつものほら穴の湿った土壁を、見上げていた。
************************
【サージャ】≪『第九話をお読みいただき、ありがとうございます』
【サージャ】≪『たかし教団崩壊の経緯。一言で言えば自業自得ですね』
【サージャ】≪『日頃の行いが悪ければ、不満を言う人が現れるのは言うまでもありません』
【サージャ】≪『その事実に気がつかないからこそ、皆から忘れられてしまったのでしょう。そういう所ですね』
【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
今、……何て言った? コイツ? オレの前で……?
幼女が母の布切れを掴んで、文句を言った? しかも、不満そうに……?
オレが、懸命に説教してやったにも関わらず……?
……何やねん、コイツ。何でこんな平然としてんねん。
オレが怒ってんねんぞ。神にも等しいオレが怒ったら、怯えるか土下座するのが筋ちゃうん?
それを分からず、オレの事キライ……?
しかも、またデウディーンの名前を出しやがって?
「お嬢ちゃ~ん、今、何て言ったのかなぁ~?」
母から離れ、オレは幼女に接近する。
優しい声は出していたが、内心は爆発寸前だ。
「聞こえなかった? ……もう一回言うね?」
しかし幼女は、オレの気持ちに構わず、面と向かって。
「女神様の事、キライ。大キライ。ママの事いじめるからキライ。私たちの体ジロジロ見てくるからキライ。すぐ怒ってくるからキライ。ちっとも優しくないからキライ。デウディーン様でムキになってる所が大っキライ」
堂々と言ってのけたのだ。
オレへの罵倒を。
「……………………」
さすがにオレ、固まっちゃったね。
余りの展開に。意味不明さに。
けど状況を飲み込めるようになって、イライラが増してきた。
……何やねんコイツ。ホンマもう、意味分からん……。
「……け」
オレはボソッと呟いた。
耳を傾ける母と幼女。その仕草を見て、堪忍袋の緒が切れた。
「出てけ……言うとんじゃ」
「え……?」
「はよ出てけ言うとんじゃ! 何やねんデウディーンデウディーンキライキライって! そんなにアイツがいいんやったら行ったらええやんけ! もう来んな! 向こう行ってこいや! そこで可愛がってもらえや! オレの前に二度と現れんなやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
目一杯、オレは叫んだ。怒りに任せ、怒鳴り尽くした。
ややあって、母と幼女はその場から去っていった。
「ハァ……ハァ……」
怒鳴ったせいか、息が荒い。
オレの息づかい以外、何も聞こえない。信者がたくさんいるのに、母と幼女が出ていってから静寂に包まれている。
「ダサッ。幼女相手に、あんなムキになるかね」
誰かがオレを、蔑んだ。
「……おい、今誰や言うたん?」
確かに聞こえた。オレをバカにする声が。
しかし、誰も名乗り出ない。皆、戸惑うばかりだ。
「おい、出てこいや! オレに文句あるんやったらハッキリ言えや! コソコソせんと言うたらええやろ!」
それでも誰も出てこない。
オレのイライラはもう限界やった。
「もういい! もう分かった! お前らクソ、全員クソ! 本当はオレをバカにしてるやな、よう分かったわ! お前ら全員クビじゃ! そんなにオレが嫌やったら出ていけや! デウディーンでもどこでも行ったらええやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!!!!」
俺は再び、信者たちの前で盛大に怒鳴り散らした。
※※※※※※※※※※※
……今思えば、このやりとりが皮切りだったかもしれない。
この日を堺に、信者がみるみる減っていったからだ。
この事件からおよそ九百年。
数百人はいただろう信者が、ごっそりいなくなってしまった。
今となっては、たった数人。
一方で、デウディーンの信者は着実に増えているらしい。
その数は、二千人を超えたとか……。
「なんでやねん!」
思わず叫んでしまった。その瞬間。
オレは目が覚めた。イライラした気持ちで。
いつものほら穴の湿った土壁を、見上げていた。
************************
【サージャ】≪『第九話をお読みいただき、ありがとうございます』
【サージャ】≪『たかし教団崩壊の経緯。一言で言えば自業自得ですね』
【サージャ】≪『日頃の行いが悪ければ、不満を言う人が現れるのは言うまでもありません』
【サージャ】≪『その事実に気がつかないからこそ、皆から忘れられてしまったのでしょう。そういう所ですね』
【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
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