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第一部 サークルポリス襲撃編
元転移転生魔術師、対峙する 前編
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「ふーっ……」
ワシはひと息ついた。
静まりかえった、巨大な岩のそばで。
辺りには、モンスターの死体が散乱しておる。
絶対延々☆コマ回しによって砕かれてしまったからの。
ま、そのコマも止まってしまったのじゃが。
「ラスティア、もういいぞ。出てこい」
ワシは、岩場に隠れていたラスティアを呼びかける。
のそのそと出てきたが、どこか元気がなさそうじゃった。
「お役にたてず……申し訳ありません」
何と、謝罪をしてきたのじゃ。
「ど、どうしたんじゃ、いきなり?」
「私も騎士のはしくれ。本来ならマリー様のような幼女をお守りするのが騎士の務め! しかし……モンスターはマリー様一人で倒してしまわれ、私の出る幕はありませんでした……」
「何じゃ? 要するに、取り分を残してほしかったと……?」
「い、いえ! そうではありません! いえ経験値的には間違ってませんが……。仮に私が前に出た所で……足を引っ張っていたのは確実でしょうから……」
ラスティアが、見るからに落ち込んでおる。
だが、おおよそじゃが、悩みが見えてきたぞ。
「つまり……お主も共に戦いたかった。が、お主の弱さのせいで叶わなかった。そんな自分が許せない……と」
「はい……その通りですマリー様……」
ますます縮こまっていくラスティア。どうも、何の力にもなれなかった事が、プライドを傷つけているのかもしれんな。
仕方ない。ここはワシが人肌脱いでやろう。
「転移魔法、発動――」
ワシは手を掲げ、転移魔法を発動する。
「いでよ! ――なりきり☆テニスラケット!」
稲妻が発生したのち、物が姿を見せる。
そしてワシは、一本のラケットを掴み取った。
「ラスティア、コイツを使うがよい」
そしてラケットを掴んだまま、ラスティアに差し出した。
「こ、これは……?」
「なりきり☆テニスラケット。コイツを降れば、どんな玉も返せるようになる。これからの激しい戦い、このラケットで自分の身を守るのじゃ」
「あ、ありがとうございます……」
ラスティア、どうも浮かない様子。
なぜじゃろう。せっかく異世界【日本】から転移した物を貸してやったのに。
もっと高価そうな物がよかったって事か?
『騎士用の剣を持っているのに、球技用の道具でモンスターから身を守らせる。……シュールな光景ですね、マスター』
と、ここでサージャから野次、いやツッコミが入った。
「何なんじゃ……。ワシはラスティアに元気になってもらおうと……」
『そんな事より報告です。巨大な岩の狭い道を抜けた先に、モンスターの大群が待ち構えています』
そんな事……。なぜそんな塩対応を……。
いや、それより報告内容じゃ。
モンスターが、ワシらの存在を認知したと……そういう事か?
「マリー様、恐らく先の戦闘で警戒されたのでしょう。戦いは避けられないかと」
なるほど……。モンスターはとことんワシらと戦う気でおると。簡単にレッドドラゴンに合わせてくれんらしいな。
「ラスティア、行くぞ。今度は大規模な戦闘になる。今のうちに構えとけ」
「ハッ! 今度こそマリー様のお役に立てるよう、斬り込む所存です!」
そう返事したラスティアは、足を広げ、腰を低く、ラケットを前面に出す構えをとった。正に球を打ち返す気満々の構えじゃった。
もう一度、絶対延々☆コマ回しで蹴散らしてやろう。そう思い手を掲げた、その時だった。
――ゴオオオォォォ……!!
「ぬっ……!」
突然じゃった。
空から轟音が鳴り響いたのじゃ。
そして……。
――ドオオオオオォォォォォォォォォォン……!!
爆発音とともに。
巨大な何かが落ちてきたのじゃ。
その衝撃で舞う、視界全体を覆う土埃。
『マスター! マスター! 警報! 警告!』
サージャが叫ぶ。危険を知らせる合図。
『A級クラス出現! マスター、厳戒態勢をとって下さい!』
ああ、言われんでも分かっておるよ……。
まさかあヤツの方からやってくるとは思わんかったからの。
土埃が晴れてきた。より鮮明に見えてきたわい。
赤いウロコに鋭い目。大きな牙に鋭い爪。背中から生え、大きく広げられた翼。
ああ、間違いない。千年前に見た姿と同じじゃ。
レッドドラゴン。自ら姿を見せてくれたのじゃから。
ワシはひと息ついた。
静まりかえった、巨大な岩のそばで。
辺りには、モンスターの死体が散乱しておる。
絶対延々☆コマ回しによって砕かれてしまったからの。
ま、そのコマも止まってしまったのじゃが。
「ラスティア、もういいぞ。出てこい」
ワシは、岩場に隠れていたラスティアを呼びかける。
のそのそと出てきたが、どこか元気がなさそうじゃった。
「お役にたてず……申し訳ありません」
何と、謝罪をしてきたのじゃ。
「ど、どうしたんじゃ、いきなり?」
「私も騎士のはしくれ。本来ならマリー様のような幼女をお守りするのが騎士の務め! しかし……モンスターはマリー様一人で倒してしまわれ、私の出る幕はありませんでした……」
「何じゃ? 要するに、取り分を残してほしかったと……?」
「い、いえ! そうではありません! いえ経験値的には間違ってませんが……。仮に私が前に出た所で……足を引っ張っていたのは確実でしょうから……」
ラスティアが、見るからに落ち込んでおる。
だが、おおよそじゃが、悩みが見えてきたぞ。
「つまり……お主も共に戦いたかった。が、お主の弱さのせいで叶わなかった。そんな自分が許せない……と」
「はい……その通りですマリー様……」
ますます縮こまっていくラスティア。どうも、何の力にもなれなかった事が、プライドを傷つけているのかもしれんな。
仕方ない。ここはワシが人肌脱いでやろう。
「転移魔法、発動――」
ワシは手を掲げ、転移魔法を発動する。
「いでよ! ――なりきり☆テニスラケット!」
稲妻が発生したのち、物が姿を見せる。
そしてワシは、一本のラケットを掴み取った。
「ラスティア、コイツを使うがよい」
そしてラケットを掴んだまま、ラスティアに差し出した。
「こ、これは……?」
「なりきり☆テニスラケット。コイツを降れば、どんな玉も返せるようになる。これからの激しい戦い、このラケットで自分の身を守るのじゃ」
「あ、ありがとうございます……」
ラスティア、どうも浮かない様子。
なぜじゃろう。せっかく異世界【日本】から転移した物を貸してやったのに。
もっと高価そうな物がよかったって事か?
『騎士用の剣を持っているのに、球技用の道具でモンスターから身を守らせる。……シュールな光景ですね、マスター』
と、ここでサージャから野次、いやツッコミが入った。
「何なんじゃ……。ワシはラスティアに元気になってもらおうと……」
『そんな事より報告です。巨大な岩の狭い道を抜けた先に、モンスターの大群が待ち構えています』
そんな事……。なぜそんな塩対応を……。
いや、それより報告内容じゃ。
モンスターが、ワシらの存在を認知したと……そういう事か?
「マリー様、恐らく先の戦闘で警戒されたのでしょう。戦いは避けられないかと」
なるほど……。モンスターはとことんワシらと戦う気でおると。簡単にレッドドラゴンに合わせてくれんらしいな。
「ラスティア、行くぞ。今度は大規模な戦闘になる。今のうちに構えとけ」
「ハッ! 今度こそマリー様のお役に立てるよう、斬り込む所存です!」
そう返事したラスティアは、足を広げ、腰を低く、ラケットを前面に出す構えをとった。正に球を打ち返す気満々の構えじゃった。
もう一度、絶対延々☆コマ回しで蹴散らしてやろう。そう思い手を掲げた、その時だった。
――ゴオオオォォォ……!!
「ぬっ……!」
突然じゃった。
空から轟音が鳴り響いたのじゃ。
そして……。
――ドオオオオオォォォォォォォォォォン……!!
爆発音とともに。
巨大な何かが落ちてきたのじゃ。
その衝撃で舞う、視界全体を覆う土埃。
『マスター! マスター! 警報! 警告!』
サージャが叫ぶ。危険を知らせる合図。
『A級クラス出現! マスター、厳戒態勢をとって下さい!』
ああ、言われんでも分かっておるよ……。
まさかあヤツの方からやってくるとは思わんかったからの。
土埃が晴れてきた。より鮮明に見えてきたわい。
赤いウロコに鋭い目。大きな牙に鋭い爪。背中から生え、大きく広げられた翼。
ああ、間違いない。千年前に見た姿と同じじゃ。
レッドドラゴン。自ら姿を見せてくれたのじゃから。
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