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第一部 サークルポリス襲撃編

元転移転生魔術師、出発する 前編

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 ワシは教会を出ていくまで、昔の事を思い出していた。





※※※※※※※※※※※※





 これは千年前の話じゃ。
 当時開拓都市だったサークルポリスの人々は、壊滅の危機に怯えておった。
 レッドドラゴンが現れたためじゃ。山のふもとに居座り、モンスターを囲わせている。万が一こちらに向かって暴れでもしたら、全員が助からない。一触即発じゃった。

 そんな時に通りかかったのが、このワシ、デウディーンと田中たかしじゃ。
 サークルポリスの人々から、レッドドラゴンをどうにかしてほしいと依頼を受け、引き受けたのじゃ。

 そしてモンスターを蹴散らし、いよいよレッドドラゴンとの決戦。激しい炎に鋭い爪の連続攻撃。
 しかしワシの転移魔法と、たかしのチート能力で難なく切り抜けた。
 いよいよレッドドラゴンを追い詰めた所で、その身体が縮こまってしまう。
 そしてレッドドラゴンは、人間――娘の姿に変化してしまった。

 ドラゴンは種類によるが、モンスターだけとは限らない。
 それは、エルフやドワーフに近い種族も存在しており、例えばワシらが会ったように、人間からドラゴンに化けられる能力を持つ者たちがおるからじゃ。

 その名は、竜人族。

 もちろん、変身すればドラゴンとしての戦闘力を発揮する。が、それだけでなく、自分より弱いモンスターを従えさせられる力まで持っておる。自分の周りにモンスターを囲わせたようにな。

 数は少なく、希少な存在。少数民族。
 が、非常に強力な力を持つという、敵に回すと厄介な種族なのじゃ。

 それで彼女、なぜ人間になったかと言うと、妊娠をワシらに教えるためだそうじゃ。
 妊娠のつわりが苦しく、山のふもとで休んでおったという。それで怯えた人間や冒険者たちの襲撃に備えるため、モンスターを使役しておったという訳じゃ。

 しかし、たかしはそんな話を信じようとしなかった。
 しかもマウントを取れると思ったのか、聞く耳ももたず……。

「身体検査だ。裸になれ」

 怯える彼女の服を剥ぎとろうとしていた。

「おい、たかし……」

「当然だろぉ? コイツは娘だがドラゴン! 油断しちゃ何しでかすか分からねぇ、ウソついてるかもしれねぇ! だから隅々まで調べねぇと! この娘の裸をじっくり直視しねぇと、赤ちゃんできてるか分かんねぇだろぉ!」

「いや、そんなん、服の上から……」

「分かるかぁぁぁぁ……! 見せるもん見せろやァァァァァ……!」

 怒鳴り散らすたかし。
 何をそんなに必死になっているのか、理解できなかった。

「おい、たかし……」

「オレたちはなぁ、戦利品を得たんだ! 聞いた事ねぇか、金銀財宝女! オレたち勝者の褒美といやぁ、相場が決まってるんだ! んで手に入れたからには、豪快に使わなきゃもったいねぇぇ!」

「いや、戦利品じゃ……」

「女がそこにいる、んでオレたちは勝った! 買ったし飼った! じゃあどうするかって……脱がすしかねぇじゃん?」

「おい……」

「まず服を脱がすだろぉ、破いてもいいよな? んで胸とか尻をむき出しにして、好き放題触りまくる! 暴れるだろうから、デウディーンが押さえつけてオレはペロペロペロペロ……! んで最後はメインディッシュ……あああああァァァ……! 興奮してきたぁ!」

「………………」

「ハイ・ハイ・ハイ・ハイッ! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸! 女は裸……!」

 ハッスルしまくるたかし。
 もはや人なのか、獣なのか分からない。

 ワシはため息を吐いた。
 そして、転移魔法を発動した。

「転移魔法発動……。吊るし五円☆振り子玉」

 ワシが手にしたそれは、五円玉と、穴に通されたヒモ。
 そんな異世界【日本】から転移した吊るし五円☆振り子玉を、たかしに見せるようにして差し出す。
 そして五円玉をぶら下げ、振り子のように振り始めた。

「おっ、それ五円玉のアレじゃねぇか。アレだろ、振り子にして相手を眠らせる……て……」

 言い終えるや否や、たかしはその場に倒れた。
 吊るし五円☆振り子玉を直視してすぐに。

 そう、ワシの転移魔法、吊るし五円☆振り子玉をたかしに見せる事で効果を発動させてやったからじゃ。

 この道具には、吊るされた五円玉を眺めた相手に状態異常を与え、その場で倒れさせる効果をもっておる。

 何やら期待しておった様子のたかし。レッドドラゴンに使うなどと、思い込んでおったようじゃ。
 が、実際は違う。鼻息を荒くしとるたかしを見かねて、眠らせておいたという訳じゃ。
 何せ、話がややこしくなりそうじゃったからの。
 そう、今は娘の姿をしたレッドドラゴンとの、戦争終結について。

 ワシは開拓都市の事情を話し、、体が休まり次第違う場所へ行ってほしいと説得した。レッドドラゴンもそれを受け入れ、少し身体を休めたのち、遠くへ飛び立った。これにて戦いが終結したのだ。

 しかし、事の成り行きを説明するのが面倒だと思った。なのでたかしの手柄という事にしておいた。

 そうして事情を知らないたかしを、皆が称賛する。
 たかしは首を傾げながらも、大勢に感謝されるという空気に酔いしれていた。

 一方のワシはというと……。
 平和が訪れたサークルポリスを、見届けておったのじゃった――
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