追放されたので千年後に転生しました~その幼女、元転移転生魔術師の再来~

がっきー

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第一部 サークルポリス襲撃編

元転移転生魔術師、作戦会議に参加する 前編

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 ワシとラスティアが案内されたのは、大部屋の会議室。
 中に入ると、多くの冒険者と兵士で賑わっていた。
 各々が何かを喋っている。共通しているのは、皆が険しい表情だという事。ケガをしている者もチラホラ見かける。

「マリー様、教皇様は教壇に立っておられるようです!」

 ラスティアが教えてくれた。しかし、教壇は会議室のはるか前。ワシらがいるのは最後尾。これではルイスロールの姿も話も聞こえてこない。

 仕方ない。転移魔法といこう。
 ん? 人前で使うのは目立つんじゃないかって? そんな心配は無用じゃ。

「……転移魔法、発動……」

 ワシは周りに聞こえぬよう、小声で唱えた。

「いでよ……おん密☆潜望鏡……」

 人差し指を小さく掲げ、転移魔法を発動する。
 微かに光る稲妻。現れたのは、一本の筒、両側にレンズがついている。

 ここまでで誰にも気づかれておらん。この通り、ワシはこっそりと転移魔法を使う事も可能なんじゃ。
 まあ、さっきみたいに無詠唱の召喚もできる。じゃがアレは魔力消費が激しいからのう。
 緊急時以外は、なるべく詠唱した方がいいという訳じゃ。

「よし……見えるか」

 ワシはおん密☆潜望鏡を持ち、先端のレンズが冒険者たちの頭上にくるよう立ち上げる。そして末端側のレンズから、ワシは目を覗かせた。

 見えたのは、教壇に立つルイスロールと王冠を被った老人。

「皆さま、お集まりいただき、ありがとうございました。このように本日は、サークルポリス国王も出席して下さいました」

 ルイスロールが、王様と呼ばれる老人を紹介しておった。

「なるほど……あの隣の、王様じゃったか……しかし並んで立っているとは……」

 思わずひとり言を漏らしてしまうワシ。

 会議室の端、それも冒険者たちの背丈で見る事ができなかった教壇を、鮮明に見られるようになった。しかも声まで届いて。これこそ、おん密☆潜望鏡の効果なのである。

 この道具、本来は水中から覗くために使う物らしい。それを転移魔法の効果によって、地上でも便利に使う事ができる。

 しかも隠密というように、人混みや物陰に隠れてさえいれば、堂々とおん密☆潜望鏡を持ち上げても誰にも気づかれず、気配も感じとられない。そしてただ様子を覗くだけでなく、相手の表情や口の動きから会話まで分析し、あたかも聞こえているかのように耳に届いてしまう。目だけでなく耳からも一方的に情報を得られる、まさに便利な道具なのじゃ。

「ああもしかして、並んで立つ事で教祖と王様は対等だと皆に知らしめようというのか……?」

 ワシはまたも、ひとり言を漏らしてしまう。
 何せ、ルイスロールの隣にいるのは国の代表、王様のはず。本来、平民などと触れ合わないだろう高貴な身分の方を、彼女はまるで馴れ馴れしく扱っているように見えたからじゃ。

「何と王様、サークルポリスの城からわざわざ足を運んでくれたんです! そんな王様に皆さん、拍手を~ぱちぱち~」

「い、いやあまあ、国の危機であるからして……」

「さらに、大ニュース! 王様は冒険者と一部の兵士に任せきりだったモンスター襲撃に、手を取り合ってくれるんです! それも対等な立場で! 私たちの指示に従って!」

「え、対等……? しかも指示に従うって、儂、国王としてそんな事一言も……」

「皆さん、これでデウディーン教団と王様は友達です! 友愛の儀式を始めましょう! ウェーイ……!」

 妙に軽いノリ。
 戸惑う王様を無視し、ルイスロールがノリ始めた結果……。

「「「「ウェーーーーーーーイ!」」」」

 何と、冒険者たちまでノリ始めたのじゃ。

「ウェーイ! ウェーイ!」

 気をよくしたのか、ルイスロールがウェイウェイ、言って騒ぎ始める。

「ウェイウェイウェーイ! ウェイウェーイ!」

「え、えと……」

 何と王様の肩を掴み、ウザ絡みをし始めてきたのだ。
 王様は縮こまってしまっている。どこか威圧感を感じるルイスロールの絡みに、肩を震わせておるのじゃ。

「ウェーーイ! ウェーーーイ!」

「え、ええ……」

「ウェーイウェーイ! ウェーイウェーイ!」

「うぇ、……ウェーイ」

 とうとう根負けしたのか、イヤイヤながら王様までノッてしまう。
 そして一緒にノッていた冒険者たちが、なぜか唐突に拍手し始めたのじゃった。

 ――パチパチパチ……。

「……………………」

 王様も驚いておったが、ワシも驚いておった。
 一体何じゃったんじゃろうか、さっきのノリは……。
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