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第一部 転生編
一方のたかし、ズッコける 前編
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意識がはっきりしていく。
ああそうだ。オレはさっきまで寝ていて、過去を振り返っていたんだ。夢として。
そして、目が覚めて分かる。今の現状を。
「た、たかし様……? 大丈夫……ですか?」
寝起きのオレを見下ろしているのは、老人三人。
コイツらは、信者だ。
それでここは、ある洞窟の中。土でできた壁に覆われた閉鎖空間で、オレは祀られていた。
土着の女神として。
「はぁ~~……」
オレは、ため息を吐いてしまう。
自分の現状を思い出せば思い出すほど、悲しくなってくるからだ。
今のオレには、かつてデウディーンと旅をし、無双していたような力はない。それ所か、祭壇から身動きすらとれない体たらく。
さらにオレの体だが、下半身が幽霊みたいにぼやけて原型を留めていない。信者から見えてはいるから実体を無くした訳じゃないが、何ていうか、浮遊感がすごい。
それもこれも、全部あの女神のせいだ。
オレは、あの女神がビッグになれるっていうから女神化してやった。まさか信仰が減って力が衰えるなんて、夢にも思わねぇよ。
文句を言ってやりたい。なのにあの契約以来、全く連絡がとれねぇんだ。ああ、思い出しただけでイライラしやがる。
「あの……たかし様……」
「あぁ! うっさいねん今忙しいんじゃ話しかけてくんな!」
空気が読めねぇじじいに、オレは説教してやった。
と言っても、コイツらは信者。信者のじじい。
たった三人しかいなくて、しかも男。要するに、残りカスだ。
今のオレには、献上品もなし、女の子もなし、信者はほぼゼロ。
あの幼女との騒動があってから九百年近く、閑古鳥が鳴いているって訳だ。
当然、じじいだから空気が読めねぇし、気が利かねぇ。
いや、あの時、幼女の周りにいた信者たちもそうだったな。見ているだけで、なにもしやがらなかった。少しはオレのために動いてみやがれ!
「ふぅ……」
そんな時、オレはふと思うのだ。
あの場にデウディーンがいたら、違っていたかもしれないと。
アイツはいつだって、何かあるたび転移魔法で日本の道具を転移して、ファンタジーの雰囲気ぶち壊してしまう。
しかしその時に合った便利な道具を出してくるから、事件を解決しちまうし、人々に感謝されて結果オーライになってしまうんだ。
さらに、混半妖精からツッコミを入れられてしどろもどろ。そんな感じで便利に動いて笑いをとる。あの幼女の時だって、転移道具を出すとかして、空気を和ませてなぁなぁで済ませたに違いない。
そうなっていたら、今でもオレはみんなに崇拝される女神様を続けられていただろう。癇癪を起こして、素の感情を晒す事なく、な。
「はぁ~……」
オレはもう、ため息が止まらないね。
デウディーンですら機転を利かせられるっていうのに、かつての信者も、今のじじい共も何の役にも立ちゃしない。がっかりだわ、正直。
「あのぉ……たかし様…….」
「んやねん! さっきからうっさいな!」
ほらまた、空気を読めないじじいが……。
っと、いけない。前向きにならないと。
こんなじじいでもオレの信者だ。オレが教育して形にしてやんねぇとな。
そうと決まれば、まずはオレの威厳を……。
「何かな? オレでよければ話は聞くよ?」
「はぁ……実は彼が、脱退したいと言っているんです」
ファーーーーーーーーーーーーーーーァァァ???
ああそうだ。オレはさっきまで寝ていて、過去を振り返っていたんだ。夢として。
そして、目が覚めて分かる。今の現状を。
「た、たかし様……? 大丈夫……ですか?」
寝起きのオレを見下ろしているのは、老人三人。
コイツらは、信者だ。
それでここは、ある洞窟の中。土でできた壁に覆われた閉鎖空間で、オレは祀られていた。
土着の女神として。
「はぁ~~……」
オレは、ため息を吐いてしまう。
自分の現状を思い出せば思い出すほど、悲しくなってくるからだ。
今のオレには、かつてデウディーンと旅をし、無双していたような力はない。それ所か、祭壇から身動きすらとれない体たらく。
さらにオレの体だが、下半身が幽霊みたいにぼやけて原型を留めていない。信者から見えてはいるから実体を無くした訳じゃないが、何ていうか、浮遊感がすごい。
それもこれも、全部あの女神のせいだ。
オレは、あの女神がビッグになれるっていうから女神化してやった。まさか信仰が減って力が衰えるなんて、夢にも思わねぇよ。
文句を言ってやりたい。なのにあの契約以来、全く連絡がとれねぇんだ。ああ、思い出しただけでイライラしやがる。
「あの……たかし様……」
「あぁ! うっさいねん今忙しいんじゃ話しかけてくんな!」
空気が読めねぇじじいに、オレは説教してやった。
と言っても、コイツらは信者。信者のじじい。
たった三人しかいなくて、しかも男。要するに、残りカスだ。
今のオレには、献上品もなし、女の子もなし、信者はほぼゼロ。
あの幼女との騒動があってから九百年近く、閑古鳥が鳴いているって訳だ。
当然、じじいだから空気が読めねぇし、気が利かねぇ。
いや、あの時、幼女の周りにいた信者たちもそうだったな。見ているだけで、なにもしやがらなかった。少しはオレのために動いてみやがれ!
「ふぅ……」
そんな時、オレはふと思うのだ。
あの場にデウディーンがいたら、違っていたかもしれないと。
アイツはいつだって、何かあるたび転移魔法で日本の道具を転移して、ファンタジーの雰囲気ぶち壊してしまう。
しかしその時に合った便利な道具を出してくるから、事件を解決しちまうし、人々に感謝されて結果オーライになってしまうんだ。
さらに、混半妖精からツッコミを入れられてしどろもどろ。そんな感じで便利に動いて笑いをとる。あの幼女の時だって、転移道具を出すとかして、空気を和ませてなぁなぁで済ませたに違いない。
そうなっていたら、今でもオレはみんなに崇拝される女神様を続けられていただろう。癇癪を起こして、素の感情を晒す事なく、な。
「はぁ~……」
オレはもう、ため息が止まらないね。
デウディーンですら機転を利かせられるっていうのに、かつての信者も、今のじじい共も何の役にも立ちゃしない。がっかりだわ、正直。
「あのぉ……たかし様…….」
「んやねん! さっきからうっさいな!」
ほらまた、空気を読めないじじいが……。
っと、いけない。前向きにならないと。
こんなじじいでもオレの信者だ。オレが教育して形にしてやんねぇとな。
そうと決まれば、まずはオレの威厳を……。
「何かな? オレでよければ話は聞くよ?」
「はぁ……実は彼が、脱退したいと言っているんです」
ファーーーーーーーーーーーーーーーァァァ???
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