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第一部 転生編

一方のたかしの過去、ふんぞり返る 前編

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 ああ、この感じ、よく分かる。
 夢を見てるんだ。
 そして、夢の中で思い出してやがる。
 オレの、嫌な過去を――





※※※※※※※※※※※





 そう、デウディーンのバカを追い出したその日の夜。
 オレは女神と会って契約した。
 自身が女神になる事を。
 女神化はアッサリとしたもんだった。力がみなぎる感じはあったがな。

 女神が言うには、これで自分と同様、永遠の命を手に入れたという。
 ただし、人々からの信仰が大事で、誰からも崇拝されなくなると、消滅してしまうんだそうだ。

 ま、平気だろ。だってオレだぜ?


 この異世界に転移されてから、順風満帆のオレなんだぜ?


 確かに、デウディーンに転移される前のオレはイケてなかった。

 日本にいた頃のオレは、勉強も運動もできなかった。学校では女に避けられ、話しかけてくれた男友達が気がつけば離れていく。偏差値低い高校しか行けなかったからか、親から半ば見捨てられている空気さえ感じる始末だった。

 それがどうだ。この異世界に転移されて、チート能力まで得たオレは大活躍だ。どんな敵の魔力も吸い取ってやったし、巨大な敵には倍返ししてやった。

 そうして人々は、オレの活躍を聞いて湧き立った。
 【たかし万歳!】ってな! ロクに評価されなかったデウディーンなんかとは違う!

 そうさ、みんなオレの強さを知っている。
 そんなオレが忘れられるなんて、あり得ねぇから!

 と、まあそんなこんなで。
 デウディーンを追放してからの日々は、あっという間だった。

 まずオレが女神になった事。
 オレがいかに高位の存在になったか、知らしめる必要があった。

 そのために、魔法を披露してやった。強大な火の魔法をな。
 見物していた冒険者たちに魔法を放ってもらって、オレが受け止める。その魔法を自分のエネルギーに変換して倍返し。さらに女神化によって威力は倍増だ。

 空一面を覆う火の魔法。
 人々の驚嘆が止まらない。
 オレのチートで、自分や他人の魔力を好きなように変換し、自在に操れる能力があったからな。
 そんな風にアピールして、信者を増やしていったんだ。

 たかし教の名のもとに。

 そしてオレは、信仰にルールを決めるようにした。
 そのルールは三つ。

 ①オレを崇拝する事。
 ②オレにたくさん献上品をよこす事。
 ③若い女はオレに奉仕する事。

 これらを守らせたおかげで、毎日が天国、毎日がウハウハ!

 それからの生活は言うまでもねぇ。
 もう、最高にパラダイスだったね!
 高笑いが止まらないほどに。
 人々がオレを拝んで、崇拝してくれるからな!
 最高級の設備! 最上級の教会の中で!

 献上品の食べ物や、金銀財宝を毎日持ってきてくれる。
 さらに若い女が至近距離で、オレを拝みに来てくれる。

「ああ、偉大なる女神、たかし様! たかし様!」

「そうだ、オレは女神だ! 偉いんだ! もっとオレを敬え!」

「ははーーーっ! たかし様、バンザイ!」

 こんな風に、みんなが喜んで崇拝してくれるんだ。
 これだよコレ、この歓声。
 この気持ちいいのが、オレが求めていた物!

 ああ、最高! これこそが理想郷!
 いいや違う! ふるさとだ!
 日本じゃない。ここが、オレのふるさと!
 オレはようやく、故郷に帰ってきたんだあああぁ!

 そんな幸せな日々が続いてたある日。
 ある信者が、土下座していやがった。
 他の信者たちの前で。肩を震わせながら。

「たかし様、お許し下さい!」

 どうもこの信者、オレへの献上品が用意できなかったらしい。
 申し訳ないと謝ってはいる。なのに、それ以上の事をしやがらねぇ。

「どういう事だ? 信者はオレに献上品を持ってくる。……そういうルールだったろう?」

「そ、それが……やはりというか……連日宝石を用意するなど無茶というか……高価な財宝も限りがありまして……毎日はちょっと……」

「はぁ? 何で? お前信者だよね? オレの事崇拝してるんだよね? 手元にないんだったら貰えばいいじゃん? 他の家からとかさぁ?」

「ヒィ! そんな、私に手を汚せと? 勘弁してください! 昨日の献上品だって、村から総出で集めた物なんです! ただでさえ貴重な宝石を毎日毎日よこせって……」

「いや、さっきから口ばっかで何もしてないじゃん? 代わりの物用意するとかさ、色々できるじゃん?」

「か、……代わりの物……でしょうか……?」

 恐る恐る尋ねて来る信者。
 ハァ、分かんねぇかなぁ? コイツ何日信者やってんの?
 仕方ない。言ってやるからよく聞いておけよ?

「お前の家って、娘いるよね? 十代前半くらいの」

「は、はぁ……」

「その子連れてきてよ。んで信者にしてよ。目一杯奉仕させてさっ。それでチャラにするからさっ」

「そ、そんな……嫁入り前なのに……? まだ幼い娘を……こんな所へ……? ひ、ヒドイ……」

 はぁ、何言ってんのコイツ?
 こんな所って何? ヒドイって何で?
 お前信者だよね? オレの事崇拝してるから、献上してくれるんだよね?
 娘が入信するって、喜ぶ所じゃないの? ソレを何?
 まるで死刑宣告されたかのような口ぶり?

 しかしだ。オレの疑問に構わず、信者が口答えしてきやがった。

「あんまりだ……外道じゃないか! 自分で言って恥ずかしくないのか! 年端もいかぬ子供を、辱めようとしているんだぞ! それなのに平然と……鬼畜だ! クズだ! ゴミだ! 何が女神だ、お前みたいな下衆野郎に娘を……」

「ハァァァァァァァ~~~~~…………」

 信者がグチグチと、文句を言ってきやがる。もう聞いていられないから盛大にため息を吐いてやった。すると別の信者数人が、コイツを拘束してくれる。

「な、なんだ! これは……!」

「はいアウト。オレ侮辱したから。……おい信者ども、コイツ始末したってくれ。徹底的に痛めつけてやってくれ。万が一事故で死なせても……それはそれで、しゃあないから」

 オレの命令により、信者たちに連れていかれる元信者。
 数刻の後、遠くからヤツの断末魔が聞こえてきた。

 やれやれ……信者の管理も大変だぜ。
 まあ何にせよ、一段落終了だな。
 そう思いリラックスしようとした、その時だった。

「ママ、この神様つまんない。早く行こ」

 幼女の声だった。
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